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ロンドンのゲストハウス
Sat, 17 August 2019

第106回 奴隷貿易にサヨナラの木綿のハンカチーフ

今回は2007年発行の奴隷貿易禁止200年記念の硬貨の話。「1807」の文字の一部が鎖になっています。

奴隷貿易禁止200年記念の硬貨
奴隷貿易禁止200年記念の硬貨

この年、英国は世界に先駆け奴隷貿易を禁じました。数十年に及ぶ反対運動の先頭に立っていたのがシティの聖メアリー・ウールノス教会の牧師、ジョン・ニュートン。彼は海軍兵士から奴隷商人を経て牧師になり、人生を悔い改め、奴隷貿易反対運動に生涯を捧げました。賛美歌「アメージング・グレイス」を作詞したのもニュートンです。

反対運動の拠点、聖メアリー・ウールノス教会
反対運動の拠点、聖メアリー・ウールノス教会

同教会の東にあるフェン・コートには、奴隷貿易禁止200年記念として作られた「カインの金箔」というメモリアルがあります。奴隷の競売のお立ち台やサトウキビをモチーフにした大理石に詩人レム・シセイの詩が刻まれています。母親と生き別れになったシセイは教育・福祉や人種差別の問題に取り組みましたが、詩の中でカイン(旧約聖書に登場する人類最初の罪人)とシティの取引所に触れ、功利的な解決を否定しています。

フェン・コート
「カインの金箔」があるフェン・コート

近くの旧ジャマイカ・コーヒーハウスは1652年にできたロンドン最初のコーヒーハウスがルーツです。ジャマイカの砂糖や奴隷の商人がたくさん集まる場所として有名でした。もともと英国の奴隷貿易は大西洋を巡る三角貿易の中で発展してきました。アフリカの部族間の争いを利用し、武器と交換して手に入れた捕虜をジャマイカなどの西インド諸島でサトウキビ栽培の労働に従事させ、そこで生産された砂糖を英国に持ち帰ったのです。

ジャマイカ・コーヒーハウス
ジャマイカ・コーヒーハウスは現在、ワイン・ハウスに

英国が奴隷貿易を禁止したのは、もちろん反対運動を広めた人々の努力の賜物ですが、その背景には経済的、国際的な利害があったことも見逃せません。18世紀後半になるとブラジルで砂糖の大量生産が始まり、砂糖の市場価格が下落、奴隷貿易のうま味が薄れます。むしろ、西インド諸島や米南部で綿花を栽培させ、それを原料にイングランド北部マンチェスターで生産した綿織物をアフリカに輸出する方が儲かることに気付きます。綿織物は三角貿易の構造を変え、綿工業中心の「世界の工場」に英国が転じる機会を与えました。

大西洋を巡る三角貿易
大西洋を巡る三角貿易

また19世紀初頭、フランスの統領ナポレオンが英国の経済的孤立を狙って大陸封鎖令を出すと、英国も対抗して海上封鎖を始めます。当時のフランスは奴隷貿易を活発化させていたので、英国が奴隷貿易の取り締まり役を行い、奴隷貿易反対の国際世論を味方につけました。奴隷貿易にサヨナラの木綿のハンカチーフを送ったのは、道徳的な見地からだけではなかったようです。

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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