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Mon, 26 February 2024

第249回 ロンドン港の汽笛は諸行無常の響き

前号ではロンドン最初の係留ドック、現在のグリーンランド・ドックが捕鯨船団の基地となり、小説「ガリバー旅行記」と関連があることをお話ししました。今回はその後のドックのお話です。船荷の積み下ろしがシティの法定埠頭でしか許されなかった時代は、18世紀末に終わりを告げました。西インド諸島との貿易が拡大し、埠頭の渋滞に不満を抱く西インド貿易の商人たちがロビー活動を行い、新しい法律が作られたからです。

19世紀の西インド・ドックス19世紀の西インド・ドックス

それは現在のカナリー・ワーフに西インド貿易専用の大きな係留ドックを建設するというもので、西インド・ドックスは1802年に完成しました。ドックは輸入用と輸出用に分かれ、西インド諸島から砂糖やラム酒などを輸入し、アフリカ向けに雑貨や武器を輸出するという三角貿易の拠点になりました。帆船はカナリア海流で南下し、北赤道海流・貿易風でカリブ諸島に向かい、メキシコ湾海流・偏西風で欧州に戻ってきました。

現在の西インド・ドックス(左)かつての正門(右上)と今(右下)現在の西インド・ドックス(左)かつての正門(右上)と今(右下)

1805年、シティの東隣のワッピングにもロンドン・ドックスが作られました。さらに東インド・ドックスと聖キャサリンズ・ドックスも次々に作られ、シティに1番近いドックで貴金属や絹などの超高級品が、次にシティに近いドックで煙草やスパイス、高級酒が、そして1番離れたドックでアジアの貿易品が取り扱われました。それらのドックスはシティに直結する道路で結ばれ、道路の周辺一帯が倉庫街になりました。

埠頭はシティから始まり、下流に向かって発展して巨大になった 現在の西インド・ドックス(左)かつての正門(右上)と今(右下)埠頭はシティから始まり、下流に向かって発展して巨大になった

19世紀後半になると蒸気船の時代がやってきます。蒸気船は蒸気機関や石炭を積み込むため船舶が大型化しますが、帆船を想定して作られたそれまでのロンドンのドックでは出入口のロック(閘門)が小さく利用できませんでした。急遽、テムズ川下流のニューハム地区にロイヤル・ドックスが建設され、ロザハイズにも大型のサリー商業ドックが作られました。19世紀終わりごろのロンドン港は帆船と蒸気船であふれかえっていました。

巨船も入渠できるロイヤル・ドックス埠頭はシティから始まり、下流に向かって発展して巨大になった

ところが20世紀にコンテナが発明されて物流革命が起きました。ドックには巨大化したコンテナ船が接岸可能、かつ、陸・海・空路へ短時間で積み替える国際ターミナルの機動性とその情報システムが求められました。残念ながらロンドン・ドック群はこの流れについて行けず、第二次世界大戦で激しい空爆を受けたこともあり、シティ周辺のドックは閉鎖されました。でも今は新金融街になったり、複合商業施設や住宅、 公園に姿を変えています。ドックの歴史は貿易変遷の映し鏡です。波止場の汽笛は諸行無常の響きです。

コンテナ船のイメージコンテナ船のイメージ

寅七さんの動画チャンネル「ちょい深ロンドン」もお見逃しなく。

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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