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Tue, 19 March 2024

VAMPSインタビュー

過去1年間だけで3回もの英国公演を行った日本の音楽ユニット、VAMPS。彼らが海外展開に重点を置くと決めたのはなぜか。
6月にイングランド中部レスターシャーで開催された野外音楽フェスティバル出演に合わせて英国入りした彼らに、ロンドン市内の音楽スタジオでインタビューを行った。

VAMPS
ロック・バンド、L'Arc~en~Cielのヴォーカルを務めるhydeと、Oblivion Dustのギター及び作曲を担当するK.A.Zが2008年に結成した音楽ユニット。結成当初より、日本国外での公演活動を積極的に行っている。英国では2013年10月と今年3月にロンドン公演を行い、また6月にはイングランド中部レスターシャーで開催されたラウドロック系の野外音楽フェスティバルであるダウンロードに出演した。  www.vampsxxx.com

VAMPS結成当初から海外展開に積極的に取り組んできたのはなぜですか。

hyde(以下H):ロック音楽への需要を日本国内だけで求めるには限界があると思ったからです。聴いてくれる人が少なければ、その少ない人々の好みに合わせる努力をし続けなければならない。でも自分たちが目指している音楽を欲している人がほかの国にもいるのであれば、その場所を探した方がロックという音楽を広める上で重要な気がして。

電化製品などでは日本企業が海外でもどんどんプロモーションをしていますよね。それと同じことを音楽でもやれたらいい。しかもアジア諸国のミュージシャンは自国以外での活動を普通に行っている。だからツアーでアジアを回ると、余計に日本のロック業界は閉鎖的だなあと思いますね。ただ逆に言えば、ほかに同じことをしている人が少なければ、自分たちが一番になれるチャンスが高いということでもあるから。

K.A.Z(以下K):日本は、良いメロディーやフレーズがすごくたくさんある国だと思います。ただ一つ足りないのが、アート的な要素というのかな。例えば、日本では明るい曲が流行すれば、全部がそういう曲になってしまいます。流行を一気に吐き出して消化するような感じ。でも、自分たちが目指す音楽はそういうものではないので。このバンドにしかできないアート的な要素も取り入れた上で、日本での活動を充実させるためにも海外で挑戦したい。

VAMPSの曲の多くには英語歌詞が付けられていますが、一方で日本語歌詞の曲を覚えている海外のファンもたくさんいますね。

H:もちろん日本語の歌詞を覚えてくれる海外のファンがいるのは知っているし、とてもありがたい存在だとは思うけれども、僕たちが今後何十年と活動を続けようと、その数は増えないと思うんですよ。少なくとも自分には増やせるという自信がない。特に英語圏において、英語以外の歌詞で売れ続けている曲はほとんどないのではないかな。たまに一曲だけ爆発的に売れるということはあるかもしれないけれど、僕やK.A.Z君は、イギリスやアメリカの音楽を幼いころからずっと憧れて聴いてきたから、そのアーティストたちと同じ位置に立ちたい。外国人アーティストとして紹介されるのではなく、僕らの曲がイギリスのラジオで普通に流れているようになりたいから。

英語は日々練習しているのですか。

H:日常会話に関しては渡英する度に「ヤバいな」といつも焦っていて。英語の歌詞を歌うことに関しては、厳しい指導をガンガン受けています。レコーディング作業ではもう本当に泣きそうになりながら、新人のときみたいな気持ちで歌っているんですよ。

音楽活動において、日英ではどんな違いを感じますか。 特に英国の野外フェスなどでは機材の環境も十分に整っていないことが多いと思うのですが。

H:最初にロンドンでレコーディングしたときに使ったスタジオにろうそくが置いてあったのには驚いたなあ。夜になったら「雰囲気づくりのために」と言って、ろうそくに火をつけるんですよ。日本ではちょっとあり得ない。あとはスピーカーの上にコインを置くことで振動の仕方を確認するエンジニアがいて、いや発想が違うなと思いました。

K:ライブなどでは「きちんと機材をそろえた上で聴かせることができたら」と思うことはもちろんあるけれど、特に野外フェスではたくさんのバンドが出演するので、制約があるのは仕方ないとは思います。僕たちはそこで勝負しないとならないわけだから。コンパクトな機材で弾いてみたら、いつもと違う音で逆に新鮮に感じることもありますしね。

ロンドンにいらっしゃる際に、オフの日はどんなことをされているのですか。

H:僕は昔からロンドン・ダンジョンが好きでね。20年ぐらい前に初めて渡英して以来、もう何度も行っています。目立つからなのかどうか知らないけど、行く度に何か特別なことをさせられる。「そこの日本人!」みたいな感じで呼ばれて、首切られたりするんですよ(笑)。

K:僕はこっちの友達とカフェに行ったりとか、買い物に出掛けたりとか。遠出することもあるのですが、案内してくれる友達に任せきりだから、結局どこに行ったかさっぱり分かっていない(笑)。

好きなイギリス人ミュージシャンを教えてください。

H:イギリスのロック雑誌のインタビューで、同じ質問に対して「カジャグーグー」って答えたら大笑いされましたよ。なんでロックの雑誌でアイドルなんだよって。ただ僕は彼らをアイドルとして見たことがなくて。あとはデペッシュ・モードかな。彼らも最初はアイドルだったからね。ちょうど僕らが中学生のころにMTVが開局して、ニュー・ウェーブの音楽が日本にも入ってきたから、彼らには憧れましたね。

K:イギリスというかアイルランドになってしまうけれど、U2かな。斬新で、ほかのバンドでは絶対出さない音を出すから。

海外展開についての難しさは実感されていますか。また「海外でライブを行う日本人ミュージシャン」になることを夢見る若者たちにもぜひ一言ください。

H:海外展開については、それは難しい。日本では同じ業界に先輩が山ほどいて、その先輩たちが行ってきたことをアレンジしながら進んでいけるけれど、海外だと前例がほとんどないから。でも、難しいけれども夢がある。宝くじを買うような感じに似ているのかな。くじは買わないと当たらないからね。

K:若者の夢に関して言えば、僕自身は夢をあきらめきれないから今もやっているのだと思うし、往生際がただ単に悪いだけなのかも。ただやっぱりあきらめた時点で目標は終わってしまうから。だからといって、他人に対しては「あきらめるな」とは言いにくいですけれどね。まあ一緒に頑張りましょう(笑)。

VAMPSの海外公演には、日本からやって来るファンもたくさんいますね。

H:その気持ちはうれしいけれど、事故に巻き込まれなければいいなとはいつも思います。海外の公演では、結構ヘビーな場所にも行くから。あとは海外までは足を運ぶことのできない日本のファンにも僕らは支えてもらっている。僕たちはその事実を忘れたら駄目だと思います。自分たちのファンがいるから、僕らは世界に向けて思い切りジャンプできるのだから。

 

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