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ロンドンのゲストハウス
Thu, 18 July 2019

ロンドン中心部から電車で1時間以内!気軽に訪れることができるナショナル・トラスト施設

かつて貴族が優雅な生活を送った歴史を有する邸宅に、鮮やかな色をした花々や果実が実る庭園。歴史的建築物の保護を目的に設立された英機関ナショナル・トラストが運営する施設には、英国でしか見られない名所がそろう。とりわけ夏休みの時期は人気の観光スポットとなる一方で、それら施設の多くは交通の便が悪い場所にあるので、なかなか足を延ばすことができないという向きもあるだろう。そこで公共の交通機関を使って、ロンドン市内からでも気軽に日帰りで訪れることのできるナショナル・トラスト施設を厳選して紹介する。
(水野彩女、本誌編集部)

ナショナル・トラスト

ナショナル・トラストとは?

正式名称は「歴史的名所や自然的景勝地のためのナショナル・トラスト」。存続や維持が難しくなった貴族の大邸宅や宗教施設などを保護するチャリティー団体として運営されている。ピーター・ラビットの物語で有名な英作家のビアトリクス・ポターが湖水地方に所有する広大な土地を同機関に寄付するなど、英国の様々な歴史的人物たち がその運動に共鳴。現在ではナショナル・トラストを通じていくつもの歴史的施設が一般公開されている。各施設への入場料は、下記に記載したほか、メンバーシップ制度もあり。年会費(一人60ポンド、家族料金もあり)を払えば、英国全土のナショナル・トラスト施設への入場が無料となる。

*開館時間は時期や施設内の場所によって異なります。お出掛けの際は記載のウェブサイトよりご確認ください。

英国史に刻まれる「宮殿中の宮殿」
Osterley Park and House
オスタリー・パーク & ハウス

オスタリー・パーク

ピカデリー線のゾーン4に位置するオスタリー駅から徒歩5分。一般的な在英邦人にとってはヒースロー空港へと向かう際の通過駅に過ぎないロンドン西部の街には、実はいくつもの湖を擁する緑地が広がる。この一帯はオスタリー・パークと呼ばれ、その中央には赤レンガのカントリー・ハウスが立つ。

この大邸宅を所有していたのは、16世紀にロンドン証券取引所を設立した貿易商のトーマス・グレシャム。グレシャムは、金融街シティから遠く離れ たこの屋敷を憩いの場として利用していたという。

オスタリー・ハウスはグレシャムの手を離れた後、チャイルズ銀行(現在は大手金融機関ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドの一部)の創始者一族であるチャイルド家など資産家たちの手を渡り歩いた。チャイルド家は、18世紀の英国を代表する有名建築家であったロバート・アダムに改築の設計を依頼。装飾にあふれた新古典主義建築へとつくり変え、「アダム様式」と呼ばれる現在の形となった。赤いレンガを使った外観からは想像もつかないが、内部は訪問者の気持ちを軽くするような明るい趣向に満ちあふれている。例えば、入り口近くにあるイーティング・ルーム。花模様をあしらった天井、壁、そして家具などがピンクとエメラルド・グリーンで彩られている様はとてもメルヘンチック。かつてエリザベス1世が訪問し、「オトラント城奇譚」を始めとするゴシック小説を著したホレス・ウォルポールが「宮殿中の宮殿」と呼んだ名所だ。

邸宅を見学し終わったら、庭園の散歩を楽しみたい。217万平方メートルにも及ぶ広大な敷地には、レモンの木を始めとする香り豊かな低木が生い茂る。かつては厩舎として使われていた建物を利用したカフェで寛ぐのもいい。敷地内をゆっくりと散歩しながら過ごせば、あっという間に丸一日が過ぎていくはずだ。

オスタリー・パーク
左)ピンクとエメラルド・グリーンの配色が印象的なイーティング・ルーム
右)かつて厩舎だった建物内に設けられたカフェ

£11.40(子供£5.70)、冬季:£9.05(子供£4.50)
*ファミリー割引あり
Jersey Road, Isleworth, Middlesex TW7 4RB
Tel: 020 8232 5050
ピカデリー線のOsterley駅から徒歩5分
www.nationaltrust.org.uk/osterley-park

王子の代わりに罰を受けた男の邸宅
Ham House and Garden
ハム・ハウス & ガーデン

ハム・ハウス & ガーデン

ロンドン地下鉄の運行区域であるというのが信じられないほど、緑にあふれた景色が続くリッチモンド地区。リッチモンド・パークを駆け巡る野生のシカ、静かにそして雄大に流れるテムズ河岸で草を食む放し飼いの牛など、視界に入ってくるのはいかにも英国的な田園風景だ。ハム・ハウスは、この大自然の中に佇んでいる。

かつて英国には「ウィッピング・ボーイ(むち打ち用の男の子)」なる役職が存在した。神によって王権を授かったと当時見なされていた王子を側近が叱ることは許されない。しかし、その両親となる王と王妃は自身の子供を甘やかしてしまいがち。そこで編み出されたのが「ウィッピング・ボーイ」。この役割を担う男の子は王子とともに育てられ、王子が何か悪さをした際には代わってむち打ちの罰を受けなければならない。王室社会に閉じ込められて友人が少ない王子にとっては、兄弟のようにして一緒に育てられた幼馴染が罰せられるのは耐え難い苦しみであり、しつけの方法としては効果的であったという。

後に清教徒革命で処刑されたチャールズ1世にも、ウィリアム・マリーという名のウィッピング・ボーイがいた。そしてこのマリーがハム・ハウスの所有者となる。死後に何代にもわたり彼の一族が相続し、最終的にはナショナル・トラストへと寄付された。

本施設に残された生活空間は家具の配置に至るまで当時のまま。館内には、16世紀から17世紀にかけて英国の富豪たちが当時の先進国であるオランダやベルギーで買い漁ったというオランダ人画家たちの作品に加えて、中国や日本の芸術品が多数そろう。

キッチン・ガーデンのすぐ側にあるカフェで一息をつきつつ、ピクニックを楽しむのもいいだろう。

Ham House and Garden
左)「ロング・ギャラリー」と名付けられた部屋にある日本の飾り戸棚
右)オランジェリー・カフェでくつろぐ訪問者たち

£11.05(子供£5.50)
Ham Street, Ham, Richmond, Surrey TW10 7RS
Tel: 020 8940 1950
ディストリクト線のRichmond駅から371番のバスでHam Streetへ。徒歩10分。
www.nationaltrust.org.uk/ham-house

古楽器の音色に耳を澄ませば
Fenton House and Garden
フェントン・ハウス & ガーデン

フェントン・ハウス & ガーデン

ロンドン北西部の丘陵地帯であるハムステッド地区の頂上部分に相当する場所に立つ邸宅。20世紀前半にこの家を住み家とした、著名な蒐集家の未亡人がナショナル・トラストへと遺贈した。蒐集家の邸宅だけあって、館内にはそのほかの施設ではなかなか見かけない希少な品々が並ぶ。とりわけ磁器のコレクションが豊富で、ポーセリン・ルームには、ロンドン東部ボー、同西部チェルシー、イングランド中部ダービーといった英国の名産地でつくられた磁器が、ロッキンガム・ルームと名付けられた 部屋には、イングランド北部マンチェスター近郊にあるロッキンガム侯爵の領地でつくられたロッキンガム様式の磁器が置かれている。またオリエンタル・ルームには明朝や清朝時代の中国の陶器や家具がそろっていて、さながら磁器博物館のような様相を呈しているほどだ。

さらに同館のコレクションで目を引くのが楽器。ベントン・フレッチャーという名の楽器蒐集家が所有していたチェンバロなどの古楽器を展示している。時間帯によっては、これらの古楽器を使っての生演奏が披露される機会まで用意されていて、同館の訪問者を楽しませている。

邸宅の装飾には「ウィリアム・アンド・メアリー様式」と呼ばれる形式を採用。17世紀後半に君臨 したウィリアム3世とメアリー2世の夫妻の名が冠されたこの様式は、当時の最先端技術であった。オランダで生まれ育ったウィリアム3世は、同国から優れた家具職人を英国へと招聘。彼ら職人たちは、軽快な装飾を施した家具の数々をつくり上げた。

庭園もまた見事だ。地方にある大邸宅などでよく見掛ける、植物でできた壁「ウォールド・ガーデン」が設けられているほか、果樹園は300年の歴史を誇る。リンゴの木の傍らで、邸宅内から流れる古楽器の演奏を耳にする幸福は何物にも代えがたい。

Fenton House and Garden
左)風景画があしらわれたハープシコード
右)磁器の名産地であるウスターでつくられた花瓶

£8(子供£4)
Hampstead Grove, Hampstead, London NW3 6SP
Tel: 020 7435 3471
ノーザン線のHampstead駅から徒歩10分
www.nationaltrust.org.uk/fenton-house

修道院解体の舞台となった
Sutton House
サットン・ハウス

サットン・ハウス

ナショナル・トラスト施設の大半は、歴史的建築物という性格上、郊外や地方の街に位置している。翻って、近年、再開発が急速に進められているロンドン東部にいまだ残る珍しいタイプの歴史的施設がサットン・ハウス。ヘンリー8世治世下の16世紀前半に建造されたチューダー様式の建築物で、同地区ではあまり見かけないレンガ造りの住宅としてもその歴史的価値が認められている。

この邸宅にはかつて、英国国教会の創設者として歴史に名を刻むヘンリー8世の側近の一人であるラルフ・サドラーが暮らしていた。自身の離婚問題を経てカトリック教会から離脱したヘンリー8世は、英国内にある修道院の解体を指示。このとき、サドラーは教会関係者を呼び寄せ、この家の中で修道院の明け渡しに向けての交渉を行ったと伝えられている。

その後、炭鉱への投資で蓄財したトーマス・サットンという人物の手に渡ってから、この家の持ち主はめまぐるしく変わることになる。一時は女子校そして男子校の校舎、教会関連施設、戦時中は民間防衛組織の、戦後は労働組合の事務所にもなった。さらに1980年代には不法占拠された揚げ句にライブ会場として利用されるという憂き目にまで遭っている。やがて施設の荒廃ぶりを案じた地元の人々が中心となって、保護運動を展開。こうした尽力が実り、1990年代前半より現在の形で一般公開されるに至っている。

同施設で注目すべきは、「リネンフォールド・パーラー」と呼ばれる部屋。「ひだ彫り」と呼ばれる、衣服に折り目をつけるかのように彫り上げたオーク材の壁は、16世紀中ごろに使われた装飾技術の傑作とされる。そのほか、チューダー朝のキッチンを再現した一画などもある。小さいながらも様々な逸話と特徴を持つ施設だ。

Sutton House
左)ティー・ルームへの入り口。積み重ねられた赤レンガの眺めが美しい
右)リネンフォールド・パーラーにある「ひだ彫り」

£6.30(子供£3)
2 and 4 Homerton High Street, Hackney, London E9 6JQ
Tel: 020 8986 2264
オーバーグラウンドのHackney Central駅から徒歩10分
www.nationaltrust.org.uk/sutton-house

ほろ酔い気分でタイム・スリップ
George Inn
ジョージ・イン

ジョージ・イン

ナショナル・トラストが管理する歴史的施設は、お城や貴族の邸宅といった上流階級の人々が暮らした建物ばかりではない。英国の庶民の歴史と文化を語るとなると、やはりパブは外せないだろう。英各地には古いパブが点在するが、ナショナル・トラストの管理下にあり、しかも気軽に訪れることができるのがこのジョージ・インだ。

ロンドンに現存する旧宿屋としては、唯一となる回廊を持つ施設。交通量が多いボロー・ハイ・ストリートから一歩東側に入ると、歴史劇の舞台セットとして出てきそうな回廊が出現。「イン」と呼ばれる宿屋が居酒屋を兼ねていた時代には、このように店の正面に回廊が設けられていることが一般的であったという。

決して広い空間ではないにもかかわらず、店内はいくつかの小部屋に分かれている。パーラメント・バーは、かつて馬車の到着を待つ客の待機所として使われていた場所。またミドル・バーは、以前はコーヒー・ルームと呼ばれており、英作家のチャールズ・ディケンズが頻繁に訪れていた。ディケンズは、近隣の刑務所に収監されていた父親と面会するため、幼少時からこの辺りをよく歩いていたという。債務を支払うことができない者たちが収監された監獄をテーマとした作品「リトル・ドリット」でもこの店についての記述が見られる。

壁のあらゆるところに掲げられた英国の偉人の肖像画、薄暗い照明、黒色の木材に囲まれた空間 には歴史的な雰囲気が充満。しかもパブとしての 営業を現在も行っており、ロンドンで流行中のクラフト・ビールやカクテル、フィッシュ・アンド・チップスやソーセージ・アンド・マッシュを始めとする定番のメニューを味わうことができる。店内を見渡しながらゆっくりとグラスを傾けるだけで、タイム・スリップした気分に浸れるかもしれない。

ジョージ・イン
左)店内のあらゆるところに肖像画や古地図などが掲げられている
右)すぐ近くには欧州最高層のビル、ザ・シャードがそびえ立つ

入場無料
The George Inn Yard, 77 Borough High Street, Southwark, London SE1 1NH
Tel: 020 7407 2056
London Bridge駅から徒歩5分
www.nationaltrust.org.uk/george-inn

 
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