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ロンドンのゲストハウス
Sat, 23 March 2019

実験的な作品を世に送り出し、
鑑賞者の内なる感情を引き出す
会田誠現代美術家

10月、ロンドンで開催された国際交流基金主催のトーク・イベントに登壇した現代美術家の会田誠氏。美術の教科書に載る「あぜ道」のような絵画から、文部科学省に対する不平不満をぶちまけた立体作品「檄」まで、良くも悪くも話題になるアートを生み出し続ける人物だ。世間に衝撃を与え続けてきたイメージが強いが、インタビュー時のご本人は驚くほど気さくで、質問に対して丁寧に言葉を紡いでいく姿が印象的だった。(インタビュー・文: 英国ニュースダイジェスト編集部)

会田誠
MAKOTO AIDA 1965年10月4日生まれ。新潟県出身。1991年東京藝術大学大学院美術研究科修了。絵画だけでなく、写真、立体、映像、マンガ、小説など表現方法は多岐に渡る。国内外で展示を行い、近年の主な個展は「天才でごめんなさい」(森美術館、2012年-2013年)、「考えない人」(仏ブルターニュ公爵城、2014年)、「GROUND NO PLAN」(青山クリスタルビル、2018年)など。

奥座敷のような作品が面白い

ロンドンに来る前、パリで開催されたアートフェア「Asia Now Paris」でインスタレーションを発表した会田氏。これまでにも数多くの作品を海外で展示してきたが、制作過程では「海外からの目」は気にしていないという。

僕は日本で暮らし、国内で作ることを方針としています。多少の例外はありますが、最初から海外の人たちが理解しやすい作品にする、ということはしていません。それでも面白いと感じてくれるなら海外でも展示します、というスタンスです。僕の作品には、背景になるネタを知らないと分かりにくいものが多数ありますが、時間と労力をかけて相手がそれを理解してくれるということは、国際交流的にも意義があると思っているのです。例えば僕の作品の一つに画家の平山郁夫*を知らないと面白がれないものがあります。海外の人が僕の作品をきっかけに、それまで知らなかった平山や、ひいては現代日本文化のイビツな成り立ちを知ることができたら、僕は見せた甲斐があったなと思います。例えるなら奥座敷みたいに、表玄関からぐいぐい奥まで入ってもらわないと分からない、という方が作品として面白いと思うのです。

*日本画家。作品制作活動のかたわら、東京藝術大学学長を務め、海外での文化財保護活動にも大きく貢献した。2009年没。

しかし、ときに作品は作者の意図したものから離れ、批判に晒されることもある。かつて女性をグロテスクに描いた作品群は賛否両論を巻き起こしたが、会田氏はそれも含め意図したことであり、世間に対する挑戦でもあったという。

海外での成功を第一の目標にしていたら、「ジューサーミキサー」(2001年)のように女の人があんな残酷な目に遭っている絵は描きません。この作品は米ニューヨークに半年滞在しているときに描いたものですが、時代はフェミニズムやPC(ポリティカル・コレクトネス)などの思想が渦巻いてる最中。嫌われるためにやったようなものでした。偉そうに言えば、すんなり受け入れられて成功してもうれしくないのです。分かりにくいネタや、欧米社会でアウトとされているネタを使ってもっとハードルの高いことをやった方が、達成感をより感じられます。

ジレンマと矛盾を埋め込む、
それが創作動機の中心

結果として会田氏はセンセーショナルな作品を次々と生むことになるが、その過程で自身の新たなスタイルを発見する。近年の作品では、福島の原発問題に対する大衆のツイートを扱った「MONUMENT FOR NOTHING Ⅳ」(2012年)がそれだ。原発反対派、推進派の意見を大量に壁に貼り付けることで、互いの意見が別方向に引っ張り合い、力が均衡して動きが停止する―その状態を表現した作品だった。

僕は以前、ツイッターで「自分は作品にジレンマと矛盾を埋め込む、それが創作動機の中心。(一部抜粋)」とつぶやきました。ジレンマや矛盾、つまりある緊張状態で固まり停止しているものを作品として見せたいんです。反原発にせよ原発推進にせよ、それは「ある一方向の意志」ですよね。僕はそれ自体を作品にしたいとは思っていません。最近ではソーシャリー・エンゲージド・アートという言葉も出てきて、アーティストと社会活動家の区別がつかないような動きがあります。それはそれで良いと思いますが、僕はそれをやったらアートじゃなくなるという考えがあるんですね。そこは古い頑固者です。

© AIDA Makoto, Courtesy of Mizuma Art Gallery福島の原発に関するツイートを大量に貼り付けた「MONUMENT FOR NOTHING IV」は、会田氏が考えるジレンマや矛盾を表した作品だ

鑑賞者の内なる考えを引き出す会田氏の作品を始め、派手さはないが重要な作品を作る現代美術家は数多く存在する。題材や技法は、時代の変化とともに進化していくものだろうが、果たして既存の枠組みは、最先端のアートの存在に耐えうるだろうか。

僕は最近「アートは滅びるときが近付いている」という発言をする機会が多いのですが、それは第一に、19世紀ヨーロッパで形作られた「近代」という日本も明治以降に便乗した枠組みが、崩壊しつつあるという認識があるためです。アートも「近代」と密接に結びついたものですから、例えば富裕層だけが支える極端な構造のアート・マーケットや、今年バンクシーが自身の作品をシュレッダーにかけた事件などを見ても、それらは今までのアートの枠組みにおける末期状態の具体例であると僕には感じられます。また、インターネットによる社会の変化も、この認識を裏付ける決定的なものだと思っています。

 
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