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ロンドンのゲストハウス
Thu, 18 July 2019

保守・自民から選び抜かれた精鋭部隊 イギリス新連立政権の主要閣僚を一挙紹介

閣僚

5月6日の総選挙で労働党が敗退し、保守党、自由民主党の連立政権が誕生してからはや2カ月。単一の政党による政権運営が一般的である英国での数十年ぶりの 連立政権の誕生を、キャメロン首相は自ら「歴史的な大きな変化」と述べた。教育改革や金融制度改革、先日発表された緊急予算など、新政権は日々、着々と歩を進めているが、では、この政権の重要な背骨として活躍する主要内閣メンバーとは、どのような人たちなのだろうか。今回は、彼らのプロフィールを中心に紹介する。

(猫山はるこ)

キャメロン内閣について

連立政権の組閣で注目されたのは、自由民主党に幾つの閣僚ポジションが与えられるかという点だった。結果は、クレッグ党首の副首相就任を始め、同党から5人もの大臣が誕生することになった。長年、第3政党の座に甘んじてきた自民党にとっては大きな成果だろう。保守党の方は、オズボーン財務相を含め、選挙前の影の内閣でのポジションを引き継いだ無難な人選が目立った。意外だったのは、企業相就任が予想されていたケネス・クラーク氏の司法相任命、テリーザ・メイ氏の内務相就任など。元保守党党首のイアン・ダンカン・スミス氏の雇用・年金相任命は、自民党との連立を快く思わない保守党の右派勢力をなだめるためだったとの噂もある(ダンカン・スミス氏は党内右派)。ちなみに、文化・オリンピック・メディア・スポーツ相に任命されたジェレミー・ハント氏は、英語講師として日本に2年間滞在した経験があり、日本語ペラペラ、日本文化にも詳しいという英国の大臣には珍しい日本通だとか。

キャメロン内閣閣僚名簿

氏 名 年齢 役 職 所属政党
デービッド・キャメロン
43
首相 保守党
ニック・クレッグ
43
副首相 自由民主党
ジョージ・オズボーン
39
財務相 保守党
テリーザ・メイ
53
内務相 保守党
ウィリアム・ヘイグ
49
外務相 保守党
ケネス・クラーク
70
司法相 保守党
アンドリュー・ランズリー
53
保健相 保守党
マイケル・ゴーブ
42
教育相 保守党
リアム・フォックス
48
国防相 保守党
フィリップ・ハモンド
54
運輸相 保守党
ビンス・ケーブル
67
ビジネス・改革・技術相 自由民主党
キャロライン・スペルマン
52
環境・食糧・農村問題相 保守党
イアン・ダンカン・スミス
56
雇用・年金相 保守党
クリス・ヒューン
56
エネルギー・気候変動相 自由民主党
ジェレミー・ハント
43
文化・オリンピック・
メディア・スポーツ相
保守党
アンドリュー・ミッチェル
54
国際開発相 保守党
ダニー・アレキサンダー
38
主席財務相 自由民主党
エリック・ピクルス
58
コミュニティー・
地方自治相
保守党
オーウェン・パターソン
54
北アイルランド相 保守党
マイケル・ムーア
45
スコットランド相 自由民主党
シェリル・ギラン
58
ウェールズ相 保守党
ストラスクライド卿
50
上院院内総務 /
ランカスター公領尚書
保守党
サイーダ・ワルシ
39
保守党幹事長 保守党

首相・副首相コンビ

David Cameronデービッド・キャメロン
David Cameron

43歳 首相 保守党

過去200年で最年少の英国首相

保守党党首就任当時は、中身がないだの政治経験が浅いだの、ブレア首相(当時)の簡易版だのと散々言われたが、それも今や昔。自民党への熱烈なラブコールが実り、新連立政権を誕生させてからは、野党当時のような妙なイメージアップ作戦も行わず、黙々と首相職に打ち込んでいる。キャメロン家は、ハノーバー朝のウィリアム4世とその愛人の子供の子孫にあたり、金融業界で要職に就いた人物が多い。キャメロン氏の父親も、大手の株式仲買業者の共同経営者だった。

イートン校、オックスフォード大卒業のサラブレッドで、趣味はテニスと音楽鑑賞。数年前、最も好きなアルバムは80年代のインディー・ロック・バンド、ザ・スミスの「クイーン・イズ・デッド(女王は死んだ)」であるとコメントしたことがある。首相に就任し、定期的に女王と謁見する身分になった今では、この発言を少なからず後悔しているかもしれない。妻サマンサさん(39)は現在4人目の子供を妊娠中で、9月に出産予定。

Nick Cleggニック・クレッグ
Nick Clegg

43歳 副首相 自由民主党

帝政ロシアの貴族の血を引く国際派

総選挙前は英国民でさえ「誰それ?」な人が多かったのが、選挙戦の一環として行われた党首のTV討論をきっかけに一気に知名度アップ。にわかに注目が高まり、過去にマスコミの取材で述べた「これまでの女性経験は30人くらい」とのコメントが掘り起こされるなど、少々恥ずかしい出来事もあった。

ケンブリッジ大など3つの大学で学位取得後、欧州委員会などで勤務。母はオランダ人、父は英国とロシアのハーフなので、英国人の血は4分の1しか入っていない。子煩悩らしく、3人の子供たちがアイスランドの火山灰の影響で妻の実家があるスペインに足止めされた際は、我が子恋しさに相当へこんでいたとか。副党首としては政治改革を担当。自民党悲願の選挙制度改革を何としても達成したいところだ。

内閣メンバー紹介

将来は准男爵の称号を継ぐ自信家

George Osborneジョージ・オズボーン
George Osborne

39歳 財務相 保守党

実家は17世紀から准男爵の称号を受け継ぐ名家、父親は高級壁紙会社を創設して大成功した億万長者と、光り輝くバックグラウンドを持つのがこの御方。時に傲慢にも見える強気な態度は、家柄、富、知性、仕事と、まだ30代にしてすべてを兼ね備えた男の自信の表れか。オックスフォード大卒業後、保守党の調査部で働き、ヘイグ保守党党首時代は同党首のスピーチライター兼政治秘書として活躍。サッチャー政権下で運輸相などを務めたデービッド・ハウエル氏の長女フランシスさんと1998年に結婚、一男一女あり。公共支出削減という新政権の最重要課題を抱え、オズボーン氏が今の自信満々な態度をずっと保っていけるかどうかは興味深いところ。

英国史上2人目の女性内相は靴フェチ

Theresa Mayテリーザ・メイ
Theresa May

53歳 内務相 保守党

治安、移民対策などに鉄 拳を振るう内務相に任命されたのは、ちょい怖めの容貌でそこらの少年ギャングなぞ軽く威嚇できそうなメイ氏(別にルックスで選ばれた訳ではないだろうが)。オックスフォード大で地理学を学んだ後、イングランド銀行などで勤務の傍ら、ロンドン内で区議会議員も務めた。1997年に国会議員に初当選し、2002年に保守党初の女性幹事長に就任。同年の保守党大会で党の近代化を訴える演説を行い、同党がいまだに「(移民や貧困層に同情的ではない)意地悪な政党としてみなされている」と発言、物議を醸したことは有名。真っ赤なパンプスや豹柄のヒールなど派手な靴が好きなことで知られ、タブロイド紙からしばしばファッション・チェックされている。

一度聞いたら忘れられない声の持ち主

William Hagueウィリアム・ヘイグ
William Hague

49歳 外務相 保守党

北部なまりの残る鼻声については好き嫌いが分かれるものの、ウィットに富んだ優れた弁才の持ち主であることは誰もが認めるところ。弱冠16歳で保守党の党大会で演説したときから、既にその雄弁さは知られていた。サウス・ヨークシャー州で自営業の両親に育てられ、公立校に通ったという経歴は、富裕なミドルクラスの家庭出身でパブリック・スクール卒という多くの閣僚メンバーとは対照的。大学はオックスフォード大に進学し、経営コンサルタントとして勤務した後、1989年の補欠選挙で国会議員に当選。1997~2001年には保守党党首を務めている。趣味は柔道で、マドンナの元夫ガイ・リッチーと同じ柔道教室に通っていたこともあるとか。

「ダメ党首」が大臣にカムバック

Iain Duncan Smithイアン・ダンカン・スミス
Iain Duncan Smith

56歳 雇用・年金相 保守党

2001年9月から保守党党首を務めるも、弁才なし、指導力なし、信念なし、カリスマ性なしのないない尽くしで「ダメ党首」の烙印を押され、ついには2003年11月、同党議員による不信任決議を受けて党首退陣。英国中の笑い者だったあの頃は、まさか閣僚として政治の第一線にカムバックする日が来るとは思っていなかったかも。母方の曾祖母は日本人だが、特に親日的傾向は見られない。政治家になる前は英陸軍の軍人、民間企業勤務を経験した。

若手を蹴散らすいぶし銀の魅力

Kenneth Clarkeケネス・クラーク
Kenneth Clarke

70歳 司法相 保守党

国会議員歴40年、サッチャー、メージャーの保守党政権下で保健相、教育・科学相、内務相、財務相などの重要ポジションを歴任した大ベテラン。気取らない率直な話しぶり、態度で一般庶民に人気が高い。メディアが彼を指して使う「大物の野獣(big beast)」とのあだ名は、政治家としての豊富な経験に対する尊敬と、親しみの念が込められていると言えよう。ジャズと葉巻の愛好家というのも、渋いオヤジのイメージにピッタリ。弁護士の資格を持つ。

教育改革にまい進する元労働党支持者

Michael Goveマイケル・ゴーブ
Michael Gove

42歳 教育相 保守党

保守党の近代化を推進するグループ「ノッティング・ヒル・セット」の一員で、キャメロン首相に最も近しい政治家の一人。政権発足以来、教育改革にまい進している。冷たい印象だが、喋りながら興奮すると口を突き出す様子はひょっとこのお面のようでユーモラスと言えなくもない。生後4カ月でエディンバラの労働党支持者の家庭に養子として引き取られ、自身も若い頃は労働党党員だった。「タイムズ」紙でジャーナリストとしての勤務経験あり。

社交ダンス好きな経済の専門家

Vince Cableビンス・ケーブル
Vince Cable

67歳 ビジネス・改革・技術相 自由民主党

オズボーン氏よりも財務相に適任との声も少なくない経済の専門家。金融危機に早くから警鐘を鳴らしていたことで有名。ケンブリッジ大、グラスゴー大卒。1997年に国会議員に初当選する前は、石油会社「シェル」の経済アドバイザーなどを務めていた。豊富な知識と経験に基づいた鋭い経済分析で他の政党の政治家からも尊敬を集める存在であるが、連立政権発足以降は労働党から「オズボーン財務相のプードル」呼ばわりされるなどしており、かなりご立腹の様子。社交ダンスが趣味で、BBCのダンス番組「ストリクトリー・カム・ダンシング」に「本気で出演したい」と語ったこともあるが、多忙な大臣職を得た今となっては、夢も当分おあずけか。

スキャンダルで突如要職に任命

Danny Alexanderダニー・アレキサンダー
Danny Alexander

38歳 主席財務相 自由民主党

組閣当初は得意分野のスコットランド相に任命され、楽々の大臣デビューのはずだった。が、自民党のデービッド・ローズ議員が経費問題であっけなく主席財務相の座を辞任したのを受け、突如このポジションに就く羽目に。経済関係の役職に就いた経験がないため適性を疑問視する声も聞かれたが、確かに、経済政策発表の記者会見で、演説するオズボーン財務相をじーっと横から見つめる姿はどこか所在なげ。今後の頑張りに期待。エディンバラ生まれで、スコットランドの島で少年時代を過ごした。オックスフォード大卒。議員になる前は、スコットランド自由民主党の広報担当、スコットランドの国立公園の広報部長などとして働いていた。女性誌編集者の妻との間に2児あり。

舌鋒鋭い若き女性イスラム教徒

Sayeeda Warsiサイーダ・ワルシ
Sayeeda Warsi

39歳 保守党幹事長 保守党

英国初の女性イスラム教徒の閣僚。両親はパキスタン人移民。「白人のオヤジだらけ」というキャメロン内閣のイメージを中和するのに一役買っている。39歳という若さと、愛くるしさが残るルックスからは想像し難い舌鋒の鋭さは、元弁護士という経歴ゆえか。19歳のときに親戚の男性と強制結婚させられ、1児をもうけるも2007年に離婚。昨年再婚した。リーズ大卒業。なお、上院議員であり、選挙に当選して下院議員になったことはない。

シティで成功、7軒の家持つ大富豪

Chris Huhneクリス・ヒューン
Chris Huhne

56歳 エネルギー・気候変動相 自由民主党

2005年に国会議員に初当選してから1年も経たないうちに自民党党首選に立候補した野心家(結果は次点)。地味ながら自信に満ち溢れた態度が大物感を漂わせる。仏ソルボンヌ大、オックスフォード大卒。政界入り前、ロンドンの金融街シティでエコノミストとして働いていた時に巨額の富を築いたらしく、推定資産は350万ポンド(約4億6700万円)。自分名義で7軒もの家を所有している。最近、25年連れ添った妻との離婚を発表した。

ハング・パーラメントとは

選挙でどの政党も議会の過半数の議席を獲得できなかった場合、その状態を「ハング・パーラメント」と呼ぶ。5月の総選挙では、最大政党となった保守党は307議席を得るにとどまり、過半数(326議席)に手が届かなかった。ハング・パーラメントになった場合、①複数の政党が連立政権を発足させる、②単一の政党が少数与党政権を発足させる、③もう一度選挙をやり直す、という選択肢がある。少数与党政権の場合、政権党は、それぞれの法案ごとに他の政党の賛同を取り付け、可決にこぎつけるという面倒なプロセスを強いられる。5月の総選挙前には、ハング・パーラメントになった場合、政権が不安定になるとして懸念する声が多く聞かれた。

ハング・パーラメントの例

英国 小選挙区制を採用している英国では、ハング・パーラメントになることは稀である。今回の総選挙以前では、1974年2月の総選挙でハング・パーラメントになったのが最も新しい例であった。この際は、選挙前の政権党だった保守党が自由党(The Liberal Party。既に解散)との連立交渉に失敗し、議席数で最大政党となった労働党が少数与党政権を立ち上げた。しかし、議会では政府法案の否決が相次ぎ(同年6、7月の間に18法案が否決された)、政権運営は困難を極め、結局ウィルソン首相は同年10月、再度の総選挙実施を余儀なくされた。この同年2回目の選挙では、労働党がわずか3議席差で辛うじて過半数を獲得し、政権を維持することができた。

海外 英国以外の欧州の国では、選挙の結果、単一の政党が過半数を取れず、連立政権を組むという状況はごく一般的である。連立交渉の期間も、英国では今回、わずか1週間ほどで終わったが、欧州の国では数週間から数カ月かかる場合もある。これらの連立政権は、必ずしも過半数の議席を得ている単一の政党による政権に比べて弱小ということはなく、例えばドイツの連立政権にはうまく機能し、成功とみなされている例が数多くある。欧州以外を見てみると、カナダでは2004年以降、現在までに行われた3回の下院選挙ですべてハング・パーラメントとの結果になり、少数与党政権が続いている(ただし同国では「ハング・パーラメント」との言葉は使われていない)。

 
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