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日経電子版 春割り
Fri, 19 April 2019

ベッキー・クルーエル 過渡期をしなやかに乗り越える知的美少女

2009年、14歳という若さでスターになったベッキー。彼女は、透明な水が打ち寄せるビーチや牧草を食む牛たちに囲まれたマン島にある自宅を離れることなく、ネオンきらめくハイテク大国、日本で人気者になってしまったという、まるで映画のようなドラマチックなストーリーを持つ「ネット・アイドル」だ。そんな彼女は先日16歳の誕生日を迎え、中等教育を終えたばかり。ローティーンからハイティーンとなり、少女から大人に成長する大きなターニング・ポイントに立っている。仕事の面でも、DVD撮影に、CDリリースに、日英間を奔走するという「超クレイジー」な多忙さもひと段落して、今後の展開についてあれこれ思案を巡らせているという。私生活でも、仕事でも今、彼女はまさに人生の転機の真っ只中にあると言える。ビデオで見られる通りの愛らしい笑顔の中に時折、プロの厳しい顔をのぞかせながら、今まであまり語られてこなかった英国での彼女の生活、そして将来の展望について語ってくれた。

(取材・文 柏木敬子)

ベッキー・ クルーエル Beckii Cruel
1995年、イングランド北西部ランカシャー州生まれ。2歳で英国とアイルランドの中間に位置するマン島に移住。11歳頃から、アニメに代表される日本のサブカルチャーに興味を持ち始める。14歳のときに、自宅で日本のポップ・ソングに合わせてダンスをするビデオを撮影しネットに投稿。このビデオで見せる可愛らしい容姿とキュートなダンスが話題となり「ネット・アイドル」と呼ばれ、一躍人気者となった。日本では「可愛いにもほどがある」のキャッチ・コピーとともに彼女のDVDやCD、写真集が続々と発売され、英BBCは彼女のドキュメンタリー番組を製作した。

フー・イズ・ベッキー・クルーエル?

ベッキーさんは動画投稿サイトがきっかけで有名に なったという、一風変わった経歴をお持ちですよね。弊誌の読者を含め英国に住んでいる日本人には、そのいきさつを知らない方もいるので、自己紹介をしていただけますか。

「こんにちは、ベッキー・クルーエルです。インター ネット元年と言われている1995年に生まれた16歳。英国とアイルランドの真ん中にある、マン島の出身です。日本が大好きで、14歳のときに日本のポップ音楽に合わせて踊ったダンスをネットに投稿し、思いがけず有名になってしまいました。今では 歌手・ダンサーとして日本と欧州で活動しています」 ……こんな感じで分かってもらえるかしら?

ありがとうございます。ご出身地である「マン島」は隣接した英国ともアイルランドとも違った、独自の文化と言語を持った場所であると聞いていますが、ベッキーさんにとって、出身地はご自身のアイデンティティーと深く関係しているのでしょうか。

もし誰かに私の国籍を聞かれたら、真っ先に「マンクス(マン島人)」だって言うと思います。でも私は生まれてから2歳になるまでは英国に住んでいたし、両親は英国生まれだから、英国人でもあるんです。そのせいか自分がマン島っていう特別な場所から来たっていう自負はあるけれど、国籍については特にこだわりがあるわけではありません。ただ、私のデビューの際には、マン島出身だっていうことに ニュース・バリューがあったと思います。何しろこの島の人口は約8万人で、日本人はそのうち7人だけなんですから(笑)。こんなに遠く辺鄙(へんぴ)で、日本にゆかりのない場所に住んでいる普通の女の子が、なぜ日本で人気者になったのか、そこに人の興味をそ そるストーリーがあったと思います。特に英国人の興味を引くみたいで、BBCが製作した私のドキュメンタリーも、マン島ののどかな風景と、東京の賑やかさの対比から始まるんです。

なるほど。確かに英国人にとっては、マン島と日本のつながりを想像するのは難しいかもしれませんね。そのBBCのドキュメンタリーでは「普通の女の子が、親の知らぬうちにインターネットを通じて日本でスーパースターになってしまった」と驚くご両親の様子が描かれていました。ベッキーさんの成功について、ご両親は今はどう考えていらっしゃるのですか。

私が動画投稿サイト「ユーチューブ」にビデオを投稿したのは、有名になろうと計画したものではなくて、単なる思いつきだったんです。その後、日本 からの反響があまりに大きくて自分でも驚いたぐらいなので、ビデオ投稿のことすら知らなかった両親は心底驚いたと思います。「小さい頃はとてもシャイだったあなたが、今では人前で歌ったり踊ったりしてるなんて」と母は今でも口にするんですよ。彼女は去年、私の仕事で一緒に7回も日本に行ったの に、今でも日本に行ったことが信じられないって言うぐらいなので、一連の出来事が夢だと思っているのかもしれません(笑)。

これまで(日本でDVD をリリースしたり、テレビに出演する機会を与えられるなど)チャンスが大き過ぎて、私も両親もどう対処していいか分からな かったときも少なからずありました。でも、家族みんなで一歩一歩進むことで、なんとか乗り越えてきたんです。今、両親は私の活動を全面的にサポート してくれるし、私の仕事が上手くいくように願っていてくれています。


デビューのきっかけとなったビデオ

自宅近くの風景

ベッキー・アズ・ア・スチューデント

16歳と言えばちょうど義務教育である中等教育が終わり、高等教育を受けるかどうかの選択をする、いわば人生の節目の時期かと思います。今後、学業は続けていくのですか。

今後は大学などの高等教育機関に進学するために 必要な勉強を行うシックス・フォームと呼ばれる学校に進学して、Aレベル(大学進学希望者が受ける統一試験)に向けて勉強を続ける予定です。語学が好きなので、フランス語、スペイン語、英語を専攻しようと思っています。日本語も取りたいと切望しているのですが、マン島では日本語の試験が受けられないのが残念です。

もちろん、進学後も仕事は続けます。学校は休みが多いので、仕事との両立はさほど難しいと感じたことはありませんし、これまでも学校と仕事のバランスが取れた生活ができていまし た。自分でも驚いているぐらい(笑)。7月に GCSE(義務教育修了時に受ける統一試験)を受けたばかりなので、その結果が気になっているところです。とは言え、万が一試験がうまくいってないとしても、芸能活動に振り分けた時間を勉強に費やすべきだったとは思いません。私は日本での芸能活動を通じてかけがえのない経験を得ることができたので、こちらの方が重要だと思っています。試験は何度でも受けることができるけど、私が日本で得た経験は二度と得ることができないものですから。

You Can't Kiss Me, 2011
新曲「You Can't Kiss Me, 2011」PV のワンシーン PV撮影の様子
PV撮影の様子
PV撮影の様子
新曲「You Can't Kiss Me, 2011」PV撮影の様子
PV撮影の様子
新曲PV撮影にはスタイリストのJemma BoltやHelen Shephardも参加

フロム・ジャパン・トゥ・ ザ・ワールド

なるほど。当面は仕事と学業の両立とのことですが、その先の将来の夢というのはありますか。

世界中で有名になれたらうれしいと夢見ています。英国で成功してみたいとも思いますし、世界規模で人気者になったら本当に素晴らしいなあと考えたりもしますが、基盤はあくまで日本です。すべて が始まった日本から離れすぎないように気を付けなきゃいけないと自戒しているんです。

世界を視野に入れつつ、日本が基盤とはどういうことでしょうか。

このことについては、英国の人気女性歌手、シェリル・コールの米国デビュー失敗を見て、自分なりに考えました。シェリルは米国進出が成功したかに 見えた矢先に、彼女の預かり知らぬところで陰謀のような形で米国から追い出されてしまったんです。一連の出来事を新聞で読み、シェリルのいちファンとしては非常に腹立たしく感じました。ただ、プロとして客観的に考えると、シェリルは英国を離れて米国に進出するのがちょっと早すぎたんじゃないかなとも思うんです。もっともっと英国でファンを増やして、地盤を固めてから米国進出を考えた方が良かったんじゃないかなと。それは自分にとっては、日本を大事にするということです。シェリルと同じ轍(てつ)を踏まぬよう、足元を固めつつ、将来に向かって慎重に進んでいきたいと思っています。

日本を基盤に活動とのことですが、過去には英国ポップ・グループの「シャンプー」、最近ではタレントのリア・ディゾンさんなど、日本で急に有名になった 外国タレントは、一過性の流行から先に進みにくい、という傾向があるようです。ご自分もそうなってし まうかもしれないという不安はありますか。

外国人タレントが日本で活動するには、いくつもの困難が伴うというのは事実でしょう。実際、私も日本から遠く離れた場所に住んでいるので、日本からの注目を集め続けるというのは本当に難しいと感じています。インターネットというメディアを使って日本と接点を持つ努力はしていますが、日本のメディアやポップ・カルチャーはすごい速さで動いているので、その動きについていくのは骨が折れます。一番良い方法だと私が信じているのは、今、毎週土曜日に流している「ニコニコ動画」を通じた放送、ツイッターやブログでの情報発信など、自分ができ ることをやり続けること、そして日本に行って仕事をする機会をできるだけ増やすことです。

若いうちに芸能人としてのキャリアをスタートできたことは、日本での活動においてポジティブに働くと思います。これから年齢を重ねるとともに、自分の色々な面を見せていけるからです。ファッションも異なるものを見せられるようになるし、歌手として扱う音楽だってもっと成熟していくはずです。父はよく、「マドンナだってデビュー以来、幾度もイメージ・チェンジを繰り返していつもフレッシュであり続けたからこそ、数十年もポップの女王として君臨しているんだ」と言うのですが、私も同感です。

ただ、難しいのは、「成功の法則」ってきっと存在しないんですよね。成功というのは様々な可能性を試した後に、向こうから「結果」としてやってくるものだと思います。例えば今、数カ国語を勉強しているけれど、別に語学を使って、欧州のショービズの世界に乗り込もうというわけではなく、ただ語学の勉強が好きで、得意だから続けたいと思っているだけなんです。そもそも、ブレイクのきっかけになったビデオでのダンスも、小さい頃から習っているダンスがたまたま「結果」として成功につながっただけで、成功のためにダンスをしていたわけではないのですから。今はできることを何でも試して、将来に対するオプションをたくさん作る時期だと考えています。

自宅の庭にて
マン島にある自宅の庭にて
涼宮ハルヒのコスプレ
人気キャラクター「涼宮ハルヒ」のコスプレ
マン島TT レース
マン島TT レースで日本チームのサポートを務める

ネクスト・ステージ、ネクスト・チャレンジ

「将来に対するオプションをたくさん作りたい」とのことですが、今後の活動に新しい展開があるということですか。

今は自分が音を上げるまで、できるだけ多くのことを経験をしたいと思っているんです。

具体的にはまず、上の学校に進んだら地元のラジオ局で週に3度ぐらいの頻度で仕事を始める予定です。自分の番組を持つのか、プレゼンターとしてDJ のような仕事をするのかはまだ決定していませんが、ラジオの世界がどうなっているのかをのぞくという貴重な体験ができるので、とても楽し みにしています。

もう一つ興味があるのは、ファッションの世界です。日本に行ったときにかわいいと思ったアイテムは、だいたい6カ月遅れて英国に入ってきているように思います。英国とは全然違った、刺激的な日本のファッションを英国に紹介するような仕事にも挑戦してみたいですね。ラジオでのお仕事とは違って、こちらは具体的なプランがあるわけではないのですが、今は日本のファッション雑誌に目を通して、日本のおしゃれを研究しています。でも、どんな道を選んだとしても、私の活動にはどこかで「日本」が関係してくると感じています。

歌・ダンスはもちろん、それ以外の分野にも活動の範囲が広がりそうですね。ただ今後、グローバルな 活動を視野に入れているのであれば、ベッキーさんが日本にこだわることは、足かせになりませんか

私にとって日本は足かせではなく、基盤です。 例えば、私のビデオを観て日本のアニメ、ひいては文化に興味を持ち始めた欧米人はとても多いんですよ。コスプレにしても、日本人がしているのを見ても西洋人にはなかなか身近に感じられないけれど、私がするのを見て、初めて自分でも試したくなったという人が大勢いるんです。私というフィルターを通して日本の文化が欧州や米国に浸透しやすくなるのではないかと思います。言うなれば「親善大使(アンバサダー)」的な役割をしているようなものでしょうか。私がやっていきたいのは、このようなことだと認識しています。「日本を海外に紹介する親善大使」─これが今後の挑戦の基盤となるもの、と言えるかもしれませんね。

 

「可愛いにもほどがある」と称される、ビデオでのキュートな姿そのままでインタビュー場所に現れたベッキー。ところが話を始めると、ティー ンエイジャーとは思えぬほど的確で豊富な語彙を使いこなし、客観的に自らを語ることができるインテリ女性の姿がそこにはあった。ハキハキとした口調、凛とした瞳、伸びた背すじも、彼女の知性を強調していた。

このインタビューの直後、彼女は投稿動画配信サービス「ニコニコ動画」を通じて現在のマネージメントから離れることを自ら発表した。

10月24日には豪歌手カイリー・ミノーグや英 ボーイズ・バンドJLSのプロデューサーとして知られるトム・ニコルス氏のプロデュースによる新曲がリリースされる。音楽ビデオの撮影も順調に終わり、後は発売を待つばかりだ。地元ラジオ局との新プロジェクトも間もなく始まる。さらに先日、GCSE試験の結果が発表され、無事、希望していた高等学校への進学が決定した。

旧マネジメントからの決別、大物プロデューサーによる新曲のリリース、そして進学と、人生 の次ステージへの移行は着実に進んでいるようだ。まさに人生の過渡期にあるとも言えるベッ キー、さぞかし大きなプレッシャーと戦っているに違いないと思いきや、彼女のブログにはショッ ピングの様子や、運転免許取得のレッスンのことなど、至って健康的なティーン・エイジャーの日 常が描かれていた。傍から見たら大変なこの時期を、16歳の少女は力むことなく、しなやかに、 軽やかに駆け抜けている。

今後、歌手として、ダンサーとして、DJ として、ファッション・デザイナーとして、いや、もしか するとそれ以外の分野で活躍する彼女の姿が見ら れるかもしれない。ベッキーは、どんな分野に進んでも頭角を現す人材である、とあえて断言したい。今後、乞うご期待な存在だ。


You Can't Kiss Me, 2011
10月24日リリース予定!

ベッキー・クルーエルの最新情報はこちらでチェック
Beckii Cruel Website:
http://beckii.co.uk
Twitter: http://twitter.com/#!/BeckiiCruel
 
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