高インフレ下の投資について
英国のインフレ率は6月時点で7.9パーセントとG7各国の中で最高です。銀行金利も上がってはいるものの、インフレ率を超えるものではありません。今回は高インフレ下の投資について考えてみましょう。
銀行預金金利がどんどん上がっています。手持ち資金を全部預金した方が得ですか。
2021年末より英国中央銀行の指標金利が0.1パーセントから5.25パーセントへと急激に上昇しているので、各銀行も預金金利を上げています。しかし、5パーセントの金利を得てもインフレが7.9パーセントですと、実質貨幣価値は下がっていることになります。また、今高くても景気後退が予想される来年・再来年に金利が低下することは十分考えられます。一方、歴史的に、預金以外への資産は長期間保有するとインフレ抵抗力のある資産として考えられています。従って、短期間の投資であれば預金へ、長期間向け資産は投資することを検討できると思われます。
インフレ・預金・株式の10年間上昇率
長期投資の具体的な投資対象について教えてください。
株式は長期的にはインフレヘッジが効く代表的資産の一つです。高インフレ下、多くの企業が商品やサービスの値上げをしていますよね。商品・サービスに競争力のある企業は、仕入れ価格が高くなっても自己製品・サービスの価格に転嫁できる強みを持っています。上記チャートをご覧いただくと、英国トップ100社で構成されるFTSE100指数と、世界株式指数であるFTSE Worldがインフレや預金金利をはるかに上回っていることがわかります。また、2020年のコロナ下に急落・回復したように、変動が激しいので長期保有をすることが重要ということもお分かりいただけると思います。
ではどの株がいいでしょうか。
どの企業も、値上げができるほどの競争力のある商品・サービスを保有しているわけではないため、優良企業をじっくり選定する必要がありますが、相当な数ですし有望な企業を選定するのは至難の業です。そこでそれらの企業を調査・選定し、投資している投資信託が検討できると思います。プロの投資家が専門に運用しますので、ポートフォリオ構築と継続的運用、企業調査、機関投資家向けの安い売買手数料などの恩恵を受けることができます。
エネルギー価格が上がっているので、その関連投資信託などどうでしょうか。
確かにインフレ下ではエネルギー価格は急騰しましたが変動率がとても高いです。例えば、経済活動が停止したともいえるコロナ下では、原油価格はゼロ近くまでになる展開もありました。2022年には米国で取り引きされている原油WTI(West Texas Intermediate)は1バレル70ドルから120ドルへ高騰しましたが、現在80ドル近くまで下げています。従って、これらへの投資は「投資」ではなく「トレード」(短期的売買)に向いているといえると思います。
過去5年間の原油価格(米国WTI)推移
それらの投信はどこで購入するのですか。
銀行窓口、自己責任で行うオンライン・トレード口座、独立系ファイナンシャル・アドバイザー(Independent Financial Adviser = IFA)からなどです。銀行で銀行所属のFAを通した場合は銀行が用意した一定数の投資信託から選択することになりますが、IFAは英国内外の5000個超の投資信託の中から有望な投資信託を選択することができ、取引代行も行います。
税金はどうなりますか。
投資信託はStock&Shares ISAにて利用でき、1税年度2万ポンドまで投資できます。ISAでは売却益や配当が非課税です。通常の証券口座(General Investment Account) で運用する場合売却益は年6000ポンド、配当は1000ポンド(2023/24年度)まで非課税です。それを超える場合の税率は2023年5月号をご参照ください。
当コラムは2023年7月時点の法制と税制に基づき一般的なガイダンスのために作成されており、皆様のご理解を深めるために内容を簡素化してある場合もあります。専門家の助言なしに記載情報にのみ基づき行動することはお控えください。その場合、筆者は一切責任を負いません。投資助言を含まない税務助言はFCAに規制されていません。
※次回のマネー教室は11月16日号に掲載致します。