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Mon, 17 June 2019

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

第2野党・ 自由民主党の復活劇は成功するか

メイ首相の突然の発表で、6月8日に急きょ総選挙が行われることになりました。世論調査で与党・保守党に20ポイント以上の差を付けられている最大野党・労働党は、基幹産業の国営化を含む左派政策を維持し、核兵器のボタンを押すか押さないかをはっきりさせないコービン氏が党首のままでは「絶対に勝てない」と言われています。保守党の一人勝ちが予測される中、急激に支持を伸ばしつつあるのが第2野党の自由民主党です。

前回2015年の総選挙では57議席から8議席と大幅に議席を減少させ(その後の補欠選挙で現在の議席数は9)吹けば飛ぶような存在の自民党ですが、選挙実施決定から約1週間で1万2500人が党員となり、総党員数が23年ぶりに10万人を超えました。また、選挙確定から2 日間で50万ポンド(約7000万円)の個人献金がありました。労働党はこの半分以下と言われています。

なぜこれほど、自民党に期待がかかっているのでしょう。大きな要因は労働党の弱体化でしょう。現実味のない政策を掲げるコービン氏を党首とし、党内紛争が延々と続いた労働党に代わる「もう一つの選択肢」としての自民党の躍進です。ブレグジット(英国のEUからの離脱) に強く反対する姿勢を維持してきたのもプラスに働きました。昨年6月のEU加盟維持か離脱かを問う国民投票で労働党は残留を推しましたが、コービン氏は十分な指導力を発揮できないまま有権者は離脱を僅差で選択しました(離脱支持が52%、残留支持が48%)。親EUの自民党は残留の48%の国民の意見を集約する位置にあります。ファロン党首は「再度、国民投票を行うべきだ」と訴えてきました。「離脱に投票した人はどんなことになるか分からないで投票した」とさえ述べ、離脱派の国民からひんしゅくを買いましたが、いざ総選挙となると、ハードブレグジットを止めるための大きな防波堤として期待がかかっています。先月末、信心深いキリスト教信者のファロン氏にメディアが何度も「同性愛者は罪人だと思うか」と質問する場面が報道されましたが、自民党の人気が急上昇中のため、故意に答えにくい質問を投げ掛けるというメディアのいつもの習慣が出たと筆者は見ています(ファロン氏は「罪人とは思わない」と議会で返答しました)。

自民党が下院で一けた台の議席を持つ政党になってしまったのは、保守党との連立政権(2010~15年)がきっかけでした。保守党も労働党も過半数を獲得できなかった2010年の選挙で、自民党は第1党となった保守党と連立政権を担うことに同意しました。自民党は発足(1988 年)以来、一度も政権を担当したことがなく、大きなチャンスだったのです。政権運営では保守党も自民党も妥協せざるを得なくなりましたが、自民党は選挙中の公約のいくつかを破ることになりました。その一つが大学の授業料です。値上げはさせず、最終的には無料化すると誓っていましたが、実際には値上げが実施され、クレッグ党首(当時)は「嘘つき」と言われてしまいます。信用を落とした自民党は下院選で50議席近くを失ってしまいました。

クレッグ氏の後を継いだのがファロン党首です。「災難となるハードブレグジットを止めたいなら、オープンで寛容な英国を維持したいなら」自民党に投票しよう、と呼び掛けています。また、他党と連立政権を組む可能性をきっぱりと否定しています。「保守党を倒すために、戦略的に自民党に投票する」行為も「必要ない」と強気です。

自民党が下院選で最も議席を増やしたのは2005年でした(62議席獲得)。2003年のイラク戦争開戦前、ケネディ党首(当時)率いる自民党は強い反戦の姿勢を表に出しました。「筋を通す政党」として自民党が高く評価された結果が2005年の総選挙です。第2野党としての自民党は、特定の政策に焦点を当てることで国民から大きな支持を得ることができることを過去の例が示しています。それでも、自民党が50~60程度の議席を獲得するまでには次の次の選挙(2022年に予定)まで待たなければならないかもしれませんね。

 
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