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Sat, 27 July 2024

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

国際女性デーに考える英国女性の社会参加度 - 世界の男女格差比較で英国は21位

3月8日は国際連合が定めた「国際女性デー」でした。毎年この日は、女性への差別撤廃と地位向上を訴えるデモ行進が世界中で行われます。もともとは1908年、米ニューヨークで女性たちが労働時間の短縮、賃金の上昇、参政権を求めたデモがきっかけでした。以来、国際デーの一つとして1975年には国連から制定されています。国連は、女性たちが社会のあらゆる局面に完全にかつ平等に参加することを基本的な人権としています。さて、現状はどうでしょうか?

昨年12月、国際機関「世界経済フォーラム」が発表した世界の男女格差の比較ランキング(「グローバル・ジェンダー・ギャップ指数」)が日本で大きな話題となりました。調査対象の153カ国の中で121位という低い結果になったからです。一方の英国は21位。随分と差がありますね。日本は「健康と寿命」分野での男女格差は40位なのですが「政治への関与」では144位に。政治面での遅れが足を引っ張っているというわけでした。

改めて、英国の女性の社会参加度を見てみましょう。政治面では、昨年12月の総選挙で、英国では220人の女性下院議員が当選しています。これは定員(650)の34%にあたります。英主要政党で最も女性下院議員が多かったのが自由民主党(64%)、これに労働党(51%)、スコットランド独立党(SNP、34%)、保守党(24%)が続きます。英国は過去に女性首相を2人輩出しており、SNPや北アイルランドと隣国アイルランドに拠点を置くシン・フェイン党の現党首も女性です。一方のジョンソン政権では、閣議に出る政治家の27%が女性です(BBCニュース、2月14日付)。

英国で女性下院議員が34%、閣議に出席する女性政治家が27%という数字は果たして十分に高いといえるのでしょうか。人口の半分は女性ですから、「まだまだ」と筆者は考えます。

また、賃金格差に目をやると、さらに「まだまだ」感が強くなります。国家統計局(ONS)によると、フルタイム、パートタイムを含めての被雇用者男女の賃金格差は17.3%(2019年)でした。この数字は同じ組織に勤務する男性および女性の平均時給の差を示します。

ONSの分析では、女性の方が男性よりも「無給の仕事(料理、育児、掃除、介護など)」に60%も多くの時間を費やしていたそうです(2015年のデータ)。皆さんの家庭ではいかがでしょうか。

前向きな動きとして筆者が注目しているのは、メディアによる試みです。2~3年前からBBCはカメラの前に立つキャスターなどの男女比率を同等にする「50:50プロジェクト」を開始しています。それはBBCのニュース番組「アウトソース」の司会者、ロス・アトキンスさんの発想でした。ほかの番組もこれに倣うようになり、次第に広がっていったそうです。BBCの調査によれば、視聴者の3人に1人が女性が多くなったことに気づいており、5人に1人が「より番組を楽しめるようになった」と答えているそうです。女性だけに限らず、さまざまな地方出身者、異なる人種の司会者や記者もニュースを報道していますよね。これはBBCだけではなく、ITV、チャンネル4やチャンネル5などのほかのテレビ局でも同様です。

一方、新聞の編集長といえばこれまで男性が常でしたが、英ニュースサイト「プレス・ガゼット」(2月7日付)によると、「デイリー・ミラー」紙、「サン」紙、「サンデー・タイムズ」紙、「ガーディアン」紙、「フィナンシャル・タイムズ」紙をはじめ、英国の22の大手日刊紙および日曜紙のうち8紙が女性編集長だそうです。

さて、そんな中で労働党は現在、党首選の真っ最中。来月上旬には新党首が選出されるそうですが、果たして初の女性党首を出すことができるでしょうか。

キーワード

Global Gender Gap Index(グローバル・ジェンダー・ギャップ指数)

世界経済フォーラムが、「経済活動への参加と機会」、「教育」、「健康と寿命」、「政治への関与」の4つの分野での国ごとの男女格差を算出し、比較ランキングをリポートにして発表している。2019年12月発表の最新版では女性の政治参画が著しく進んだことが特徴となった。世界で見る女性下院議員の割合は25.2%、閣僚は21.1%。国別比較ランキングの上位三カ国はアイスランド、ノルウェー、フィンランド。

 

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