(ロンドン 7月4日 時事)東京都の外郭団体、東京国際金融機構(中曽宏会長)は3日、ロンドン市内で「日英トランジション・ファイナンス(移行金融)フォーラム」(時事通信社共催)を開催した。日英両国による移行金融に関する政策連携の機運を高めるのが狙い。中曽会長は基調講演で、英政府とロンドンの金融街シティーを擁するシティー・オブ・ロンドンが共同設立した「移行金融評議会」との協業を通じ、「互いに学び合える」と期待を示した。
移行金融とは、脱炭素化に向けて省エネルギー化や燃料転換を段階的に進めるために企業が行う資金調達手法。移行には莫大(ばくだい)な資金が必要とされ、日本政府は今後10年間で約150兆円の官民投資を確保する方針だ。
中曽会長はこの中で、「(大規模な資本投資と技術革新を必要とする)脱炭素化への移行は理想的な成長戦略だ」と述べ、経済成長を促すと指摘。日英協力を巡っては「さまざまな可能性がある」とし、具体的な協力分野の一つとして、アジア太平洋経済協力会議(APEC)ビジネス諮問会議(ABAC)が主導する自主的炭素クレジット市場の拡大を挙げた。
英移行金融評議会のシャーマ議長は、移行金融分野で先行する日本の戦略や進捗(しんちょく)状況から「多くを学ぶ必要がある」と言及。また、移行金融を活用する動きが世界中で増しているとし、「志を同じくするパートナーと協力したい」と語った。
フォーラムでは、両政府の取り組み状況や民間企業の現状、日英協力の課題などを議論。「貿易摩擦や政策の不確実性は、長期投資をちゅうちょさせる要因」と懸念が示される中、複数の参加者からは、公共投資が触媒的な役割を果たすことで、民間投資を喚起する重要性が指摘された。
Mon, 07 July 2025