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Wed, 12 December 2018

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 蔵 健太

最終回 蔵健太の「バレエの細道」

7 March 2013 vol.1382

昨日の夜公演は、前回のコラムでも話したデビューの役。楽しくて楽しくて、あっという間に時間が経ってしまった。今、目を閉じても、始めのステップから最後のカーテン・コールまで見てきた景色、体で感じた空間など、舞台上での色々なことを思い出せる。

舞台が終わると、決まって軽い反省会を心の中で行うことにしている。どんなに長い時間舞台に立っていても、その瞬間には二度と戻れない。現役16年目になるのだが、今まで一度も「今日は完璧だったぜぇー」と思ったことはなかった。上手に踊れた部分には触れず、少しでも違和感を覚えた時間を振り返り、何かもっと工夫できたのではないかと、次の舞台に繋げるために考える。悔しい思いももちろんあるのだが、それ以上に常に進化していきたいという気持ちがそれに勝っている。

ステージ裏舞台終了後には、ステージ裏から
ステージにお礼を言うのが自分の日常

このコラムを書き始めたときからバレエが大好きだと言い続けてきた。しかし一方で、自分自身が完成品ではないことを自覚してもいる。未完成なアーティストだからこそ、生きる限り日々努力してその度に学び、七転び八起きすると信じている。

舞台の上では常に輝いていたい。そう思い毎日をがむしゃらに過ごす。正直100点じゃない姿をお客さんに見せるのに少し恥ずかしい気持ちを抱いてしまうのは否めないのだが、100点満点を目指す自分をお客さんに見せるのに、さほど悪気は感じない。ステージ上で自分の可能性を人に見てもらえるなら、少々恥ずかしくても何も悪びれることはないと思う。

前回も話したが、自分は常に自分の感性と自分らしさを大切にしてきた。だからこそ、100点ではない自分に対しては、自らが判定していかなければならないと思っている。いつでも前に向かって進みたい。だからこそ常にその日、そのときの現実をしっかり受け止めることを大事にしたいと思う。頭で描いているイメージが舞台上で現実に繋がるようになるには時間が掛かるし、イメージ通りに踊れない自分にもどかしさや不安を感じるときもある。昨日今日さっきまで出来なかったことが急に出来るということはほとんどない。でもどんなに困っても、自分のイメージを崩して楽な道を選ぼうという気にはなれない。間違ったっていい、1回しかない自分の人生だから、とことん自分を追求していきたい。いつか自分が踊れなくなっても、それまで舞台で何か残してきたと思える人間になりたい、そういう人間でありたいと、強く感じながら日々頑張り続けたい。

バレエはいつも自分に対してたくさんのことを教えてくれた。当たり障りのない毎日から当たり障りのある毎日を送るためのきっかけをくれ、エネルギーは人からもらうものではなく、自ら発信しなければいけないものだと、何かを得たいのなら自分がまず動かなくてはいけないのだということを実感させてくれた。

他人の姿に涙したのも初めてならば、勇気をもらったのもバレエが最初だった。言いたいこと、やりたいこと、伝えたいこと、届けたいもの、守りたいものは皆、違う。人それぞれが持つこだわりがアートになり、それを皆で共有出来れば、どれだけ素敵なんだろうと、心からそう思う。これからもバレエを愛する気持ちは変わらないし、踊ることだけではなく、様々なことにチャレンジしていきたい。

このコラムも今回で最終回となる。約3年間、応援してくれた読者を始め、編集部の皆さんには、心から感謝している。コラムが終わっても自分の「バレエの細道」はまだまだ続く。自身のブログでも引き続き自分の思いを綴っていきたい。これからも劇場で皆さんに会えるのを、楽しみにしています。

「今まで本当にありがとうございました」

蔵 健太

 
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蔵 健太
1978年8月2日生まれ。北海道旭川出身。95年にローザンヌ国際コンクールに出場し、スカラーシップ賞を受賞。ロイヤル・バレエ学校で2年間学んだ後、97年にロイヤル・バレエ団に入団する。現在、ソリスト。http://kentakura.exblog.jp
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