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Mon, 16 December 2019

Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 蔵 健太

第13回 手術

19 May 2011 vol.1301

手術手術前、医者に左右間違わないように印を付けられた足(写真左)と、手術直後の様子(同右)

あれは、2月に行われた「不思議の国のアリス」のステージ・リハの最中に起きた。

ジャンプの着地の瞬間に右膝に鋭く熱い刺激が走ったときには、もう遅かったのかもしれない。妙な違和感を膝の内側に覚えながらリハを続けたが、その日のすべての演技が終わった頃には、上手く膝に力が入らなくなっ ていた。


ロイヤル・オペラ・ハウスでの年間公演数が平均140回ある「ロイヤル・バレエ・ダンサー」にとって、怪我をすることは避けられない。自分も捻挫、肉離れなど小さな怪我をすることは多々あるので、今回も少し休めば治っていくだろうと軽く考えていた。

当初は、リハーサルのときに痛みを感じることは多少あったものの、公演本番中で大きな痛みを感じることはほとんどなく、体内に走るアドレナリンの助けもあって、演技には何の支障もなかった。しかし周りのダンサー 陣も怪我による公演離脱をしていく中、代役としての出番も増え続け、休みを取ることが難しくなってきていた。それに平行して右膝の痛みは徐々にひどくなっていき、一日に服用する痛み止めの量も増えていった。

1週間経った頃はまだきちんと曲がっていた膝も、2週間後には曲げ伸ばしをするのにも痛みを感じるようになり、3週間後には膝を曲げるのが怖くなるくらい痛くなってきていた。そして4週間が経つ頃に「白鳥の湖」一幕よりパ・ド・トロワを踊っていたときのこと。演技終了間際のコーダ(フィナーレ)でのジャンプをする際に、本来ならば伸ばさなければいけない膝が急にロックされ、動かなくなってしまった。 公演後にバレエ団のフィジオセラピストに説明したところ、すぐに専門医による精密検査を受けるよう、勧められた。


実は自分は大の医者嫌い。別にこれと言って彼らに何の恨みもないのだが、レントゲンやスキャンを取っては自分の体の中を見られ、やいのやいの言われるのがなぜかどうしても耐えられない。それに医者に会いに行くという時点で体に悪い部分があるのが分かっているので、人からあれこれ言われるよりも、できれば自分の力で治したいという気持ちも強い。しかし、舞台での演技にこれ以上差し支えがあっても困るので、そんなことは言っていられない。すぐにMRI スキャンを取り、膝の専門医2人と会った。

診断結果は「右膝関節半月板損傷」。簡単に言うと、膝のお皿の膜が裂けていて、「膝関節内視鏡手術」を行わなければいけないことになった。専門医は、このままの状態で放っておくと、傷ついた部分が膝の軟骨にまで 届き、ダンサー生命も危なくなると説明すると同時に、今ならば簡単な手術を行えば約2カ月で舞台復帰ができると鼻息荒く自信をもって語っていた。

8年前に椎間板ヘルニアになってからというもの、体の健康状態にだけは本当に注意を払い、どんなフィジカルな役を演じるときにも石橋を叩くように仕事をしてきた。ジムに行き、ピラティスをし、食べ物にも気をつけ て頑張ってきたので、診断結果を聞いたときには今まで築き上げてきたものが壊れるような感じがした。手術をすることよりも、自分の自信がなくなることが、とても怖かった。


ただこのままでは、舞台で踊ることを監督に許可してもらえない。そんな訳で、大好きなバレエをするために、人生2度目の足の手術をしてきたのだった。

次回、闘魂リハビリ編に続く。

 
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蔵 健太
1978年8月2日生まれ。北海道旭川出身。95年にローザンヌ国際コンクールに出場し、スカラーシップ賞を受賞。ロイヤル・バレエ学校で2年間学んだ後、97年にロイヤル・バレエ団に入団する。現在、ソリスト。http://kentakura.exblog.jp
今後のスケジュール
「Alice's Adventures in Wonderland」3月15日~4月13日(フロッグ役)
(予定は突如変更になる場合があります)
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