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Life at the Royal Ballet バレエの細道 - 蔵 健太

第17回 バレエと料理の共通点

15 September 2011 vol.1316

舞台装置の組み立て作業9 月20 日の新シーズン・スタートに向け、
舞台装置の組み立て作業が進む

6週間の夏休みも終わり、新しいシーズンが始まった。とは言っても実際に舞台が始まるのは9月20日からなので、現在は連日、スタジオ・リハーサルを行っている。

ロイヤル・バレエ団では毎シーズン、夏休み後に舞台が始まるまで最低でも8週間の準備期間が与えられる。長く体を休めた後は、体が動かなくなりやすい。長期休暇は、1年間舞台をこなしてきた体の疲労を回復させる半面、筋力を低下させてしまうのだ。

今年で33歳になった自分の勝手な考えだが、休みを取るのは心身ともに回復させるのには非常に良いが、取り過ぎも良くない気がする。20代の頃は夏休みなどの長い休みには完全休暇を取っても平気だったのだが、最近は休みを取り過ぎるとその分、ダンス感覚が鈍る。楽しい時間の後にはつらい時間がやってくる。「人生楽ありゃ苦もあるさ♪」と誰かが歌っていたのを思い出す(笑)。

幸か不幸か自分は今回の夏休み、ほとんどの時間をバレエ活動に費やしてきたので筋力が落ちてきたとは思っておらず、この準備期間を筋力アップや趣味の時間に費やしている。

前にも書いたことがあるが、舞台シーズンが始まるとロイヤル・バレエ・ダンサーにはプライベートの時間がほとんどない。月曜日から土曜日まで朝10時半から夜の10時半まで働き、年間150回以上の舞台を行っている自分たちに与えられるプライベートな時間は本当に限られている。オンとオフの切り替えが上手くいかないとストレスを溜めやすくなり、舞台に響くこともある。

そんなストレスを防止してくれるのが「料理」。ロイヤル・バレエに入団した頃から始め、最初は遊び半分だったのだが、今では時間があれば台所に立つようにしている。時間を自分で決められ、家でできるのも良いし、何より健康的。和洋中なんでも作るように心掛け、最近では本屋さんに行ってもついつい料理コーナーの雑誌に手を伸ばしてしまったり、料理番組でおいしそうなものがあったらメモまで取っている。

元々は怪我がきっかけで本格的に始めた料理だが、何が本格的かと言うと「レシピ通りに作る」という点かもしれない。そしてレシピ通りにできたら、次はそれを上回る味にしようと常に向上心を持っているということ。始めの頃は何となく写真付きのレシピやテレビを見て、自分流に行っていた。でも今は違う。初めて作る料理はレシピの手順を守り、限りなく「きちんと作る」をテーマにしている。理由は簡単、きちんと作った方が確実においしいから。そして自分の感覚でその「きちんと」ができたら、自分の手でその料理をもっとおいしく仕上げる工夫を始める。

先日、家に友人を招き、料理がすごく楽しいと話している際に、料理自体が何となく今の自分の職業に似ているということを指摘された。つまり、バレエ・ダンサーもまずはきちんとした基本を習い、振り付けというレシピを覚え、きちんとそれができるようになったら、自分流にステップを変えてみたり、アレンジを加えて楽しむのだ。そしてバレエでも料理でも、振り付け(レシピ)が複雑で難しい程、燃えたりする点も似ている。また、きちんとできたときの達成感にも、近いものがあるような気もする。ただ残念なのは、バレエと違ってお世辞にもまだまだ人を喜ばせるところまではいっていないし、楽しみ過ぎるとすぐに太ってしまうところ(笑)。趣味は趣味。先程も言ったが、休みや遊びを楽しみ過ぎると自分に跳ね返ってくる。

何事もバランスが大事。今シーズンも仕事にプライベートに、オンとオフの切り替えを楽しんでいきたい。

 
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蔵 健太
1978年8月2日生まれ。北海道旭川出身。95年にローザンヌ国際コンクールに出場し、スカラーシップ賞を受賞。ロイヤル・バレエ学校で2年間学んだ後、97年にロイヤル・バレエ団に入団する。現在、ソリスト。http://kentakura.exblog.jp
今後のスケジュール
「Alice's Adventures in Wonderland」3月15日~4月13日(フロッグ役)
(予定は突如変更になる場合があります)
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