instagram Facebook ツイッター
ロンドン生活便利サイト neconote
Sat, 14 December 2019
一川響英国で活躍する津軽三味線奏者
一川響さん

[ 後編 ] 当然のことながら、日本と英国では文化が異なる。日本の伝統的な楽器である三味線の魅力を英国に伝えようとする場合、どこまで異国の文化を受け入れ、そして伝統のどんな部分を守らなければならないのか。演奏活動やレッスンを通じて、ロンドンならではの経験を重ねてきた一川さんに話を聞く。全2回の後編。

前編はこちらから


プロフィール
いちかわひびき - 1980年3月27日生まれ、石川県金沢市出身、ロンドン在住。20歳で長唄三味線の演奏を始める。21歳で津軽三味線「明宏会」に入門。2007年にポーランドで開催されたイベントでの演奏がきっかけで海外展開に目を向けるようになり、10年4月に来英。14年には欧州経済領域以外の国籍を保有する人物の中でたぐい稀な才能を持つ者に対してのみ発給される滞在許可「Exceptional Talent Visa」を取得。英国を始めとする欧州各地でのコンサートの企画・出演や、三味線の演奏指導などを行っている。ロンドン地下鉄でのバスキング(路上演奏)のライセンス保持者。
www.hibikishamisen.com
 

ここだけは譲れないという一線

初めての海外公演を行ったポーランドで歓声を上げる聴衆を目にして感動を覚えたという一川さんは、三味線のさらなる可能性を探るための場所として英国を選んだ。そしてこの国には、日本ではまず経験することができない、いくつもの驚きが待っていたのである。例えば、英国各地で開催されているアニメ関連イベントへの出演。来場者の多くは、現地在住の10代から20代の若者たちだ。彼らは恐らく三味線という単語さえ耳にしたことがないだろう。しかし、共演する歌手が一度音頭を取ると、人気漫画に登場するキャラクターのコスプレに身を包んだ彼らが、一川さんが奏でる秋田民謡「ドンパン節」のメロディーに乗って「ドンドンパンパン!」と掛け声を合わせてくれたという。

またインドの伝統的な打楽器であるタブラとの合奏を披露したかと思えば、テクノのDJとのコラボレーションも行った。日本では三味線とベース、ドラム、笛で構成されたバンドに参加していたという一川さんは、もともと異なるジャンルの音楽に対しても関心を持っていた。様々な人種と文化が交錯するロンドンという街は、そうした異分野との融合を実現するための絶好の舞台だったのである。

日本大使館で行われたイベント
テクノのDJとともにコラボレーションを行う一川さん(写真右端)

自ら指導を行う三味線レッスンにおける生徒の層も幅広い。性別・年齢・国籍を問わず、三味線に興味を持つ人なら誰もが挑戦しやすい環境づくりに取り組んでいる。世界各地から人が集まるロンドンだからこそ、生徒一人一人の個性を大事にしたいという思いもあるが、それと同時に、師匠から教わった三味線の基礎と基本は失わないようにレッスンを進めている。「楽しく演奏をできる雰囲気を第一に、まずは気負うことなくトライアル・レッスンを受けてもらい、緊張をほぐします」。生徒数は20を超え、毎年生徒によるコンサートを開くほどだ。

ロンドンでの活動は日本にいるときとは違い、カジュアルに演奏する場面も多い。しかし、三味線奏者としてここだけは譲れないという一線も存在する。それが「日本の民謡をきちんと弾くための技術を極めたい」というこだわりだ。津軽三味線は元来、伴奏楽器。民謡の歌い手に合わせて弾くのが本来のスタイルである。一川さんは現代的なアレンジを加えた独奏の曲目だけでなく、民謡の面白さを英国で広めたいと考え、日々民謡曲の練習に励んでいる。「民謡にしかない独特の技術を要求するフレーズがあり、そのフレーズを弾く度に欧州の音楽関係者からは『ギターにはないテクニックだね』と驚かれます。そういう部分は大事にしたい」。

最終的に人は人につく

三味線の新たな可能性を夢見て、故郷の金沢を飛び出してから早5年。英語をろくに話せない状態で来英したため、当初は自身で企画や交渉などを進めたりすることができず、人のつてに頼ることが多かったという。誰かの紹介を受けて一つ公演を行い、その会場に居合わせた人に声を掛けてもらうということを続けていくうちに、数年があっという間に過ぎた。「師匠からずっと言われていたのが、『人は人につく』ということ。三味線の大会で優勝したから人がついてくるわけではない。最終的には人は人につくんだということを再三仰っていたことを今になってよく思い出します」。

一川さんは、2012年にその師匠をロンドンへと招待している。トラファルガー広場で開催された「ジャパン祭り」のステージ上で、ともに演奏を行った。「自分が英国で続けている活動を理解してもらうことができた上に、とても喜んでいただけました」。一川さんを英国へと気持ち良く送り出してくれた師匠を今度は一川さんが呼び寄せるという、まるで映画のような筋書き。ロンドンを舞台とした一川さんの物語の続編に乞うご期待だ。

ジャパン祭り
「ジャパン祭り」で師匠(写真右)とともに演奏を行った

 
  • Facebook

2020年 カレンダー販売
キャリアコネクションズ ゲンダイ・ゲストハウス
バナー バナー

ロンドン・レストランガイド ブログ