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Fri, 29 March 2024

第89回 お散歩編: 宝くじの夢とタバコの煙

謹賀新年、本年もどうぞよろしくお願いいたします。この時節、年末ジャンボや初夢宝くじと聞くだけで気分が高まります。日本の宝くじの起源は、神社や寺の修復費用を集めるために行われた「富くじ」だそうです。世界最初の宝くじは中国の万里の長城の建設が目的だったとか。英国も港湾設備や海軍を強化し、海外進出を準備するために初めて宝くじを行いました。時は1569年1月11日、場所は旧聖ポール大聖堂の西側正面口。

 英国の国営宝くじも人気
英国の国営宝くじも人気

初の国営宝くじが行われたのは旧聖ポール西口門
初の国営宝くじが行われたのは旧聖ポール西口門

これは女王エリザベス1世の発案と言われます。上流階級を購入のターゲットとしたためか、資金還元率はほぼ100%だったそう(現在の国営宝くじは還元率が50%と低いですが、約30%が慈善活動に費やされています)。といっても景品は賞金だけでなく、銀の食器や高級布の現物支給もあり、さらに購入者には「女王様のお赦し」が与えられ、重罪(殺人、反逆、海賊行為など)でない限り、逮捕されない不逮捕特権が付いたそうです。

この宝くじは賞金が数年後から分割で支払われるところがミソで、王室は無利息で長期にわたり多額の資金を調達でき、北米に植民地を建設する道が開けました。女王の寵臣、ウォルター・ローリーは処女王エリザベスに捧げる植民地をバージニアと名付け、北米に進出します。ところが先住民との戦いに敗れて撤退。次の王様ジェームズ1世は1606年、バージニア勅許会社を作り、再び進出を図りますが、植民地経営は軌道に乗りません。

現在の米バージニア州
現在の米バージニア州

植民地から金や銀が発掘されず、農産物にも恵まれず、会社の経営は借金が溜まって倒産の危機。そこでこの会社に宝くじを発行させ、調達資金を株式の配当に充てながら、土地を販売することで会社の再建を図りました。ジョン・スミス船長は植民地開拓の指揮を執ると、先住民から土地を奪い、植民地が天国だと宣伝を活発化。偶然タバコ栽培が成功するとたくさんの移植者が押し寄せて農園を作り、奴隷を使ったタバコ貿易が大繁盛しました。

シティにあるジョン・スミス像
シティにあるジョン・スミス像

ディズニー映画「ポカホンタス」にも登場するスミス船長は、金髪碧眼の美男子。でも実際は黒髪茶眼で残忍な男でした。バージニア会社はロンドン会社(ジェームズタウン)とプリマス会社(ニュープリマス)に分かれ、前者は南部の開拓の中心、後者は北部の巡礼父祖の拠点に発展。宝くじの夢はタバコの煙に巻かれながら、巨大な米国を誕生させていきます。英国のスーパーでは、宝くじとタバコは同じ窓口で販売されています。煙たい理由があるのかもしれませんね。

タバコと宝くじは同じ販売窓口
タバコと宝くじは同じ販売窓口

 
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シティ公認ガイド 寅七

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