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Fri, 19 July 2019

第140回 半人半鳥の魔女から生まれた人魚

メソポタミア文明のイシュタル像(紀元前18世紀ごろ)を大英博物館で案内していたときのことです。「イシュタルは愛と美の女神として崇められ、その後、ヴィーナスやキリスト教のマリア様、空を舞う天使のモデルになったと言われます。この美しい姿をご覧下さい」と説明したところ、参加者たちが「うわっ、脚が鳥の足になってる!」と急に騒々しくなりました。実は、美女と鳥の足という意外な組み合わせは古代ギリシャにも登場します。

イシュタル像(大英博物館蔵)
イシュタル像(大英博物館蔵)

紀元前8世紀に活躍した吟遊詩人ホメーロスの作品「オデュッセイア」には女性と鳥の合成獣セイレーンが描かれています。セイレーンは、岩礁から美しい歌声で航海中の人々を惑わせ、遭難させる魔女。ドイツのローレライの伝説にも似たようなお話があります。ところがその後、7世紀末ごろにラテン語で書かれた「怪物の書」では、セイレーンが「半人半魚」の怪物と紹介されてしまいます。

セイレーン像(アテネ国立考古学博物館蔵)
セイレーン像(アテネ国立考古学博物館蔵)

通説によれば、ギリシャ語の「プテロ」が翼とヒレの両方の意味を持ち、またラテン語の単語でも翼とヒレが似ていたため誤訳されたのだそう。さらに14世紀後半に英国の詩人ジェフリー・チョーサーがフランスの寓話「薔薇物語」を翻訳した際、セイレーンをマーメイドと訳し、マーメイド=人魚という考えが普及。羅針盤の発明により海が未知の世界ではなくなり、航海でセイレーンの棲む岩礁を探すこともなくなったため、その存在は人々の記憶から消えていきました。

しかし、本来マーメイドが二股であり、半人半鳥のセイレーンがその由来だったことが現在に伝わっている例もあります。例えばデンマークのコペンハーゲンにある人魚姫の像が二股ですし、有名な某コーヒー・チェーン店のロゴ・マークも二股の人魚。また、シティのトリニティ・スクエアにある人魚像も二股です。ギリシャ神話のトリトンは人魚の一種とされますが、シティの船夫・荷役人組合ホールにあるトリトン像もきちんと二股に描かれています。

某コーヒー店のロゴは二股の人魚
某コーヒー店のロゴは二股の人魚

トリニティ・スクエアの人魚像
トリニティ・スクエアの人魚像

船夫・荷役人組合のホールにあるトリトン像
船夫・荷役人組合のホールにあるトリトン像

ちなみに、スコットランドのセルキーやアイルランドのメロウ、フランスのメルジーヌなど、もともと二股でない半人半魚もいます。それらはアザラシや蛇との合成獣であり、南欧から伝わったセイレーンに由来していません。改めて冒頭の話に戻り、突然の参加者からの声で寅七の足元から鳥が飛び立ちましたが、つまり美女は鳥や魚に例えられることが多いということなのでしょう。

 
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シティ公認ガイド 寅七

シティ公認ガイド 寅七
『シティを歩けば世界がみえる』を訴え、平日・銀行マン、週末・ガイドをしているうち、シティ・ドラゴンの模様がお腹に出来てしまった寅年7月生まれのトラ猫


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