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Tue, 19 March 2024

英国サカナ事情

マーケットのおじさん四方を海に囲まれた島国、英国。そんな土地柄、魚介類に恵まれているはずなのに、英国のスーパーで見る魚は、種類は豊富ではないし、新鮮さも疑問。そしてお値段も決して安くはない(涙)。そこで、この「魚三重苦」を乗り越えるべく、魚恋しい日本人が期待を胸にビリングズゲート・フィッシュ・マーケットへ行ってきました。今回は、英国の築地(?!)とも言われるビリングズゲートを中心に、英国のサカナ事情をお届けします。

英国の魚流通はここから始まる
ビリングズゲート・フィッシュ・マーケット

ビリングスゲート・マーケットとは?

フィッシュマーケット東ロンドンに位置する魚卸市場。ロンドンで流通している魚介類のほとんどはここで仕入れられていると言われている。英国内では最大の魚卸市場で、年間平均2万5000トン(内40%は輸入物)の魚介類がここで取引される。大量に買わないといけなかったりするが、基本的に一般人でも購入可能。

歴史

ビリングズゲート・マーケットの歴史は、1400年に端を発する。その年、当時の王ヘンリー4世は、ビリングズゲートにストールを出している小売商から敷地使用料を徴収することを決定したのだ。ちなみに肉の売買で知られるスミスフィールドも、同年にマーケットとしての活動を開始している。

魚今では、フィッシュ・マーケットとして知られるビリングズゲートだが、当初はとうもろこし、石炭、鉄、ワイン、塩、陶器など様々なものを扱う卸市場だった。しかし1699年に、どういったことかビリングズゲートを魚に特化したマーケットとする決議書が国会を通過し、以後、ビリングズゲートと言えば魚という公式が出来上がっていったのだ。そんなフィッシュ・マーケットでも取り扱いが禁止されていたものがあった。それは、ウナギ。当時ウナギの売買は、オランダ人漁師の専売物だったのだ。これは1666年のロンドン大火災時に、オランダ人漁師たちがロンドナーたちに食料を提供したお返しとして与えられた特権だった。

1873年になると、それまでただの広場のような所だったビリングズゲートに、マーケット用の建物が建てられた。そして今では、ウナギを含めた様々な魚介類を扱う卸市場として、英国人の食卓に欠かせない存在となっている。

営業時間 火~土 5:00am - 8:30am
定休日 日・月曜(バンク・ホリデー直後の火曜は休み)
住所 Billingsgate Market, Dockland, Trafalgar Way, London E14 5ST

※ 12歳以下の子供は入場できません。

ビリングズゲート・マーケットへ行ってきました!

ビリングズゲートの朝は早い。公式には朝5時からオープンということになっているが、魚小売店やレストランの仕入れ人は朝3時ぐらいには、ビリングズゲートの門をくぐっているという。門付近では、とくにセキュリティ・チェックもなく駐車場へ。カナリー・ワーフに建ち並ぶ高層ビル群を眺めながら建物内に入ると、中では煌々こうこうとした明りが灯り、市場の人々の威勢の良い声が飛び交う。とても朝4時とは思えない活気だ。競りなどは行われていないが、ロンドンでこれだけの魚を一同に見られるのはここぐらいだろう。

魚屋が所狭しと並ぶこのビリングズゲートでは、英国内で取れる魚のほとんどを始め、カナダ産のロブスター、ニュージーランド産のウナギなどが取引されるという。ちょっと歩いただけでも、美味しそうな牡蠣や帆立、活きたロブスター、タイ、スズキなどなど多くの魚が目に付く。名前のわからない魚やグロテスクな魚など店先を見て歩くだけでも面白い。鮮魚だけでなく、スモークものや冷凍物も売っているので、一般人にはこちらの方が使い勝手があるかも。

ウナギ値段が表示されていないのがマーケット初心者には怖い所だが、お店の人は親切に正直に教えてくれるのでご安心を。ちなみに、1月31日時点での平均価格は下記表の通り。ビリングズゲート・マーケットは、誰でも入場可能で、一般人でも商品を購入できるが、初めての時は魚に詳しい人と行くのがコツ。魚の見方がわからないと少し古い魚をつかまされることもあるとか(それでももちろん食べられますが)。必然的に購入単位が大きくなるので、友達や御近所の人を誘って買い出しに出掛けよう。

1キロあたりの価格
ニジマス £2.65  ウナギ £7.70〜9.90
ヒラメ(ドーバー・ソール) £11.50  サバ £2.60
タラ(切り身) £5.25  スモーク・サーモン £13.20
イカ £5.00  ロブスター(スコットランド産) £23

マーケット案内人
稲村達男さんとスタッフ一同
稲村さんとスタッフT&S Enterprises (London) Ltd.
あたりやの卸売り/買い付け部門で働く稲村さんは、毎朝のサカナの買い付けを担当している。午前1時30分頃から注文を取り、午前3時にはマーケットに到着しているという稲村さんとスタッフたち。私たちがロンドンで活きのいいサカナを食べられるのは彼らのお陰です。

シティ・オブ・ロンドンは、希望者にビリングズゲート・マーケット内でのツアーを開催しています。詳細は、以下までお問い合わせを。
Email: このメールアドレスは、スパムロボットから保護されています。アドレスを確認するにはJavaScriptを有効にしてください
Tel: 020 7987 1118

英語では何と言う? 魚の名前をおさらいしよう!

日本でよく食べた魚も、英語で言われると別物のように聞こえてしまう。たくさんの種類の魚を前に立ち往生しないように、魚を買いに行く前に、しっかりと魚の名前をおさらいしておこう。ついでに忘れてしまった漢字を思い出すのにも良い機会

鯵 Scad 鯵と言えば、鯵の開き。英国ではあまり見かけないが、日本では大衆魚の王者。脂肪が多い割にくせがなく、おいしい。
鮑 Abalone 生でも調理しても食べられる高級貝。繊細で奥の深い旨みは一度食べたら忘れられない。英国でも日本同様、高級品扱い。
鮟鱇 Angler 鍋物には欠かせない12月から2月が旬の魚。淡泊な味なので、ヨーロッパ諸国では濃厚なソースで食されることが多い。
烏賊 Squid / Cattlefish 非常に多くの種類があり、世界中の海に広く分布している。独特の歯ごたえのある身はどの料理にも合う。
イクラ Salmon Roe イクラは、元々魚の卵を意味するロシア語だが、日本では鮭の卵のみを指す。プチプチとした食感がなんともいえない。
鰯 Sardine 刺身、塩焼きにしたり、煮物、ツミレなど調理範囲の広い魚。少々生臭いので、しょうがなど香辛料、調味料を上手く使って料理するのがグッド。
鰻 Eel 東ロンドンの名物「ジェリード・イール」のおかげで、英国にいながら新鮮なウナギを手に入れることも可能。
海胆 Sea Urchin とげとげしい殻に囲まれた美味しいオレンジ色の身。消化器官があまり進化していないため、餌として食べたものがそのままウニの味になるともいわれている。
エイヒレ Skate スーパーでよく見かける魚のヒレ。柔らかな白身はおいしいが、骨が多いのが難点。価格は安く、重宝できる魚。
鰹 Bonito 南の海の潮の香りを運んでくれる魚。脂分をたくさん含んだ旨みたっぷりの魚で、皮付近が特に美味。英国では稀にまぐろと混同されることも。
鰈 Plaice 上品であっさりした味の白身魚。マガレイ、ホシガレイなど日本では種類が豊富だが、英国での分類はそこまで細かくないよう。(魚の進行方向に向き、エラが右ならカレイ、左ならヒラメ)
鯛 Sea Bream 日本では縁起物でもあり、海の魚の王様的存在。バランスの取れた旨み、身離れの良さで人気がある。日本ほど珍重されないが、英国の魚屋、レストランでもよく見かける。
鮭 Salmon 英国中のスーパーなどでよく見かける非常にポピュラーな魚。スコットランド産スモーク・サーモンも人気がある。
鯖 Mackerel 碧く輝く魚体が特徴。鮮度落ちが早く、生臭みのもとになる 成分が多いので、調理に工夫が必要。英国でも、朝食の定番スモークド・マカレルや缶詰などでよく見かける。
秋刀魚 Saury 日本では、秋の味覚の代名詞。太平洋に生息する魚のためか、残念ながら英国では鮮魚はあまり見かけない。旬の脂ののったものを丸ごと焼いて大根おろしで食べたい。
鱸 Sea Bass ボリューム感のある白身はどんなソースとも合い調理がしやすい。英国でもスーパー、魚屋、レストランのメニューなどでよく見かける。
鱈 Cod 英国といえば、コッドというくらい、よく見かける魚。英国名物のフィッシュ&チップスもタラが使われていることが多い。
帆立 Scallop 日本でも英国でもコクのある旨味が人気の高級二枚貝。殻付きで手に入れた場合は、貝紐も食べてみよう。こりこりとして貝柱とは違った食感が楽しめる。
鮃 Dover Sole, Lemon Sole よく締まった旨みのある高級白身魚。英国で獲れるドーバー・ソールは特に有名。目が着いていない側の方が身が締まって脂がのっている。
鰤 Yellow Tail 関東地方ではワカシ(20センチ前後)→イナダ(40センチ前後)→ワラサ→(60センチ前後)→ブリ(80センチ以上)、関西ではツバス→ハマチ→メバル(メジロ)→ブリと名前が変わる出世魚。冬に取れるものが、たっぷりと脂がのっておいしい。
鮪 Tuna 赤身が鮮やかなマグロはスーパー、魚屋でもよく見かけるが、ほとんどがステーキ用。刺身にするには、専門店で購入するのが安全。刺身を食べない英国人でもとろけるようなトロだけは食べられるという贅沢な人も。

新鮮な魚を見分けるポイント

まずは目 一般向け - 目が透き通っていますか。
ちょっと上級者向け - 目の色がその魚特有の色ですか。
そしてエラ エラは美しい紅色ですか。
くすんでいませんか。
最後に全体 一般向け - 表面が銀色に輝いていますか。魚体の色がはっきりとして透明感がありますか。また色に濁りがなく、コントラストがありますか。
ちょっと上級者向け - もともとザラザラしている魚はザラつきが残っていますか。ヌメヌメしている魚は、ヌメヌメが十分残っていますか。

脂がのっている魚を見分けるポイント

ずんぐりと太っている
腰の白い部分に黄みがかっている

魚によっては例外もありますが、これらを念頭に置いて数を見るうちに、新鮮な魚が判断できるようになります。

思ったより簡単 - 魚のおろし方

準備編 1) うろこを取る
包丁などの背を使って、尾の方から頭の方に向かって表面をなでるようにして、うろこを削ぎ落とします。尾びれや背びれなどの、ひれ付近はうろこが残りやすいので念入りに。済んだら、水でよくすすぎます。
2) 頭を削ぎ落とす
胸えらの下から、えらぶたにそって斜めに包丁を入れ、中骨に達するまで切り込みます。魚を裏返して、反対側も同じように切込みを入れ中骨まで達したら、一気に切り落としてします。 ※中小型の魚では先に落としておきますが、大型の魚は、えらやはらわたを取り除いた後に頭を落とした方が作業がしやすいです。
   
2枚おろし編  1) 頭を削ぎ落とし、おなかに切れ目を入れ内臓を取り出し、
きれいに洗います。
2) おなかの方から中骨に沿って、尾の方まで包丁を入れます。
3) 出来上がり。
2枚おろし

魚を仕入れた後は、こんな風に料理してみては?

アンコウの唐揚げ

ホーム・パーティーやお弁当に
アンコウの唐揚げ

お魚の苦手な人も食べやすい魚の唐揚げ。
アンコウ以外にも、マグロやサケなど
手に入りやすい魚で代用できるのもうれしい。

アンコウ 500g *ほとんどの魚で代用可能
★しょうゆ 50ml
★みりん 50ml
★ガーリック・ペースト 10g *なければ、生のにんにくをみじん切りにしたものを代用
★ホンダシ 10g
★卵 1個
★サラダ油  
★をよく混ぜ合わせ、マリネ液を作ります。
①に食べやすい大きさに切りそろえたアンコウを加え、よく混ぜ、30分~1時間ほど冷蔵庫で寝かせます。
②を冷蔵庫から取り出し、片栗粉をまぶします。
サラダ油を約170度に熱し、③を揚げます。*衣を少し落としてみて、いったん鍋底に沈んですぐ上がってくれば、丁度いい温度です。底まで落ちないのは高すぎ、なかなか上がってこないのは低すぎです。
盛り付けて、出来上がり!


Mawjuthさんこのレシピは、あたりやアクトン店のMawjuthさんに聞きました。「マリネ液には、お好みでお酒(大さじ2が目安)やおろししょうがを加えても美味しいですよ。」

マグロのごま漬け

お酒の肴にピッタリ
マグロのゴマ漬け

お酒にも合い、おもわず食が進むゴマ漬けマグロ。
生魚にあまりなれていない外国人には、
味がしっかりついている分、刺身よりも食べやすいかも。

刺身用マグロ 150g
いりゴマ 30g
しょうゆ 30ml
みりん 10ml
ネギ 少々
しょうが 少々
いりゴマを鍋で炒って、香りがよくなってきたら、すり鉢で半ずりにします。あるいは、ペーパータオルの上に取り出して、包丁の背で細かく刻みます。
①にしょうゆとみりんを加え、たれを作ります。
マグロを8ミリの厚さに切りそろえます。
漬けています③を②のたれに漬けて、
約15分ほど冷蔵庫で
寝かせます。
④に、ネギとしょうがの千切りを加えて、混ぜます。
盛り付けて、出来上がり!

オススメの魚屋さん

フィッシュ・マーケットの新鮮さは魅力だけど、そんなにたくさん買ってもなぁ……。誰もが感じるこのジレンマ。新鮮な魚を欲しい分量だけ買えるオススメの魚小売店はこちら。

あたりや
在英日本人の食卓を彩る新鮮な魚を提供している日本食料品店。最近は、高級デパートのセルフリッジにも出店し、英国人からも好評を得ている。

● Acton Shop
7 Station Parade, Noel Road, West Acton, London W3
Tel: 020 8896 1552
● Finchley Shop
595 High Road, North Finchley, London N12
Tel: 020 8446 6669
● Golders Green Shop
15-16 Monkville Parade, Finchley Road, London NW11
Tel: 020 8458 7626
● Oriental City
399 Edgware Road, Colindale, London NW9
Tel: 020 8205 0091
● Selfridges Fish Counter
400 Oxford Street, London W1
Tel: 020 7318 3725

Harrods(ハロッズ)
在英言わずと知れた高級デパートのハロッズ。仕入先の魚卸店から、最も品質の良い魚を買い上げているとか。
87-135 Brompton Road, London SW1
Tel: 020 7730 1234

Waitrose(ウェイトローズ)
英系高級スーパーの代名詞。日本のお魚屋さんほどではないが、英系スーパーの中では比較的多種の魚が揃う。英国各地に店舗を展開。詳しくはウェブサイトで確認ください。
www.waitrose.com

 

驚き!!マグロのコバナシ

マグロの速度は、時速160キロ!
普通は時速60キロで泳いでいるというマグロ。それだけでも俊足(?)なイメージはあるけれど、身の危険を感じたときは、最高速度時速160キロものスピードを出すそうだ。

マグロは休まない
マグロは、生まれてから死ぬまでただの一度も止まることなく泳ぎ続けている。夜もスピードダウンこそするが、泳ぎながら眠っているのだ。
 

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