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ロンドンのゲストハウス
Sat, 17 August 2019

湖水地方「桃源郷」を感じる旅 「ありのまま」を守り続ける人々の心に触れる Part 2

湖水地方の山中に、スーパーはない。確かにちょっとは不便だけれども、
地元の人々が意に介する風がないのは、自分たちで食材を育てたり、
地元の「食」を大切にしているから。
湖水地方の「ありのまま」の自然や農業を守るため、
それに何より新鮮で美味しいから、彼らは地元で採れた食材に強いこだわりをもつ。
湖水地方特集2回目の今回は、「食べる / 飲む」をテーマに、
英国人の誰もに愛されるビールとアイスクリームに注目。
湖水地方の味を守り続ける人々の思いを、舌で存分に感じてみよう。
(本誌編集部:村上祥子)

取材協力: 英国湖水地方ジャパンフォーラム(www.kosuichihou.com

Local Beer 地ビール

水の美味しい場所には、美味しいビールがある。大自然が生み出す豊かな湧き水に恵まれた湖水地方には、昔ながらの醸造方法を守りつつ、独自のビールを造り続ける小さな醸造所、マイクロ・ブリューワリーが点在している。醸造家たちが慈しむように育てたビールは、造り手たちの思いとともに熟成し、湖水地方の地ビールを愛する人々のもとへと渡っていく。いつもなら喉の渇きとともに一気に飲み干してしまうビールも、ここ湖水地方では、そんな時の流れに思いを馳せつつ、じっくりと味わってみたい。

ビールの種類
ビール醸造は「上面発酵」と「下面発酵」という2種類に大別できる。上面発酵とは、常温(18~25度)で発酵させる醸造法。酵母は液面に浮いてくる。一方、下面発酵は低温(6~15度)で発酵させる方法で、酵母は液体の底に沈んでいく。英国でよく飲まれるエールやスタウトは上面発酵により醸造されたもので、コクと果物の香りが特徴的。色は濃く、冷やさずに飲むのが一般的だ。日本で人気のピルスナーは下面発酵のビールで、色は淡色、爽やかな喉ごしと苦味が魅力だ。
リアル・エールとは?
エールの中でも、英国の伝統的な醸造方法を守り、濾過も加熱処理も行わず、樽(カスク)内で二次発酵させたものはリアル・エールと呼ばれる。今回ご紹介する醸造所はすべて、リアル・エールを守るために活動する消費者団体、CAMRA(Campaign for Real Ale)が発行している「Breweries of Cumbria」にその名が載っている、本物の「リアル・エール」を提供している場所である。

経験ゼロの職人がつくりあげた味
Barngates Brewery

Barngates Brewery
最近では雑誌等でも取り上げられる人気パブとなった

地ビール
ビールには、このパブで飼われていた
代々の犬の名が。ラベルにも犬たちの
イラストが使われている

ウィンダミアやボウネスと並び、観光客に人気の高いアンブルサイドを車で走っていると、山中に多数の車が並んだ駐車場が目に止まる。キツネや鹿の頭部の剥製が飾られ、ダーク・ブラウンの家具で統一された重厚な雰囲気のガストロ・パブ兼ホテル「ドランケン・ダック」。近年では予約しないと入れないこともあるという人気店だ。そしてこの店に隣接しているのが、バーンゲイツ醸造所である。もともとはホテルの地下貯蔵室で細々とビール醸造を行っていたが、1997年、オーナーが ホリデー・アパートメントだった隣の小屋を改造し、醸造所を設立。現在では、7種のエールを、カンブリア地方はもとより、ヨークシャーやランカシャー、マンチェスターなどの各地方に送り出す、知る人ぞ知る存在となった。

創業当初からここで働くジョンさんは、92年にブラックプールからやって来た。それまではバーで働いていたというジョンさん、実はそれまで全くビール醸造に関する知識がなかったのだとか。「でもイエーツ醸造所で38年の経験を持つベテランが、ゼロからすべて教えてくれたんだ」。湖水地方最古のマイクロ・ブリューワリーのベテランが、惜しみなく与えてくれたその知識と知恵を吸収し、十数年が経った現在。「ここのビールが一番。岩山から生み出される水が何と言ったって素晴らしいからね」と胸を張る、プロの醸造者として成長していた。

Barngates Brewery
左)ビールのラベルをモチーフにしたTシャツに身を包み、満面の笑みのジョンさん
右)ほのかな明かりに照らされたパブ内は落ち着いた雰囲気

Barngates Brewery
Barngates, Ambleside, Cumbria LA22 0NG
TEL: 015394 36575(Brewery)
015394 36347(The Drunken Duck Inn & Restaurant)
www.barngatesbrewery.co.uk
営業時間(Drunken Duck): 月~土 11:30-23:00、日 12:00-23:00

家族と地元を愛するアットホームさが魅力
Coniston Brewery

Coniston Brewery
深紅の家具と時代を感じさせる写真の数々が印象的な店内

最近、新たにピルスナーを取り入れた。「常に新しいことにチャレンジし続けたいのよ」とにっこり笑うのは、コニストン醸造所に隣接したパブ兼ホテル、「ブラック・ブル」のオーナー、スーザンさんだ。

各種ビール
家族の名前や地名が付けられた銘柄が並ぶ

コニストン醸造所は1995年、ブラック・ブルのオーナーの息子であるイアンさんの手によりスタートした。一部銘柄は米国やスウェーデンなどにも輸出され、英国内外で数々の賞を獲得しているが、この醸造所やパブが醸し出す空気に、気取りは全く感じられない。実はエールよりラガーが好みで……と、リアル・エールが自慢のパブで恐々切り出せば、気分を害した様子もなく、「それならこれ。そうそう、これもお勧めよ」とラガーに加え、オートミール・スタウトを味見させてくれる。口にした途端、スタウトならではのコーヒーのような芳ばしさを舌に感じつつ、喉にはすっと通っていく爽やかな後味に、「ああ、これならラガー好きにもぴったりですね」と言いながら飲み干すと、うれしそうに破顔した。

「このOliver's Light Aleという銘柄は孫の名から、Thurstein Pilsnerは、地元の水の名をとったのよ。いいでしょう?」と誇らしそうに語るスーザンさん。地元や家族を愛するアットホームな醸造所とそのパブは、今日も地元民や観光客、ビール愛好家や初心者を問わず、誰にでも温かく、ご自慢のビールを振舞っている。

Coniston Brewery
左)家族連れも入りやすいアットホームな雰囲気が魅力
右)笑顔で次々とお勧めビールを出してくれたスーザンさん

The Coniston Brewing Co.
Coppermines Road, Coniston, Cumbria LA21 8HL
TEL: 015394 41133
www.conistonbrewery.com

The Black Bull Inn and Hotel
Coniston, Cumbria LA21 8DU
TEL: 015394 41335
www.blackbullconiston.co.uk
営業時間: 10:00-23:00

犬好きが集う、地元民憩いの場
Watermill Inn & Brewing

Watermill Inn & Brewing
次から次へとひっきりなしに馴染み客がやってくる

隣り合わせになった2つの家族のテーブルの下で、それぞれの家族の飼い犬同士が、仲良くエサを食べている……。土地柄、犬を飼っている家庭が多い湖水地方の中でも、スタッフ、客ともに犬好き率が非常に高いウォーターミル。店に入れば、挨拶と同時に犬用のエサを手渡してくれるこのパブは、いつでも飼い犬を連れた地元民で賑わっている。とはいえ、このパブの売りは犬歓迎というだけではない。ビールはもちろん、地元の新鮮な食材を使った料理もかなりのもの。特にビールを醸造する際に出たカスを食べて育った牛の肉を、人気の自家製ビールCollie Wobblesに漬け込んで調理したビール・アンド・エール・パイなど、ビーフ料理の評判は高い。

食事
肉料理だけでなく、地元で栽培された野菜を
使った料理も新鮮そのもの

現在、醸造所で働いているのはわずか2人。創業の翌年、1997年から働き始めたブラックプール出身のヒューさんと、1年前に湖水地方にやって来たポーランド人のマーティンさんだ。「英語がまだ上手くないんだ……」と言いつつも、工程表を広げて醸造の過程を一つひとつ事細かに説明してくれたマーティンさんが、「ほら、まだカスが浮いているだろう? これを一日置くと、この液体が澄んだ奇麗な色になるんだ」と目を輝かせながら、醸造途中のビールを飲ませてくれた。酵母がふわふわと浮き、苦味がありつつもまろみを感じさせるそのビールはほのかに温かく、この温かさと柔らかい風味こそが、地元で育まれたビールの醍醐味なのかもしれない、と思わされた。

Watermill Inn & Brewing
左)清潔感漂う石造りの建物 
右)「これは英語で何て言うんだっけ……」と悩みながら、笑顔で醸造工程を教えてくれたマーティンさん

Watermill Inn & Brewing Co
Ings, near Windermere, Cumbria LA8 9PY
TEL: 01539 821309
www.watermillinn.co.uk
営業時間: 月~土 11:45-23:00、日 11:45-22:30
(食事は12:00-21:00) (12月25日休)

町の集会所の趣を持つビア・ホール
Hawkshead Brewery

Hawkshead Brewery
モールの一角に位置する醸造所の近くには、手づくりパンを売る店やアイスクリーム・ショップも

「一度カスク・ビールの味を知ってしまうと、缶のビールなんて味気なくなるよ」と笑いながらビールをぐいっとあおる、2人のおじいちゃん。何でも、ここホークスヘッドで年2回、開催されるビア・フェスティバル目当てでマンチェスターから来たのだとか。

ホークスヘッドはもともとはその名の通り、ホークスヘッド地域にその居を構えていたが、創業から4年が経った2006年、事業の拡大に伴い、3倍ほどの敷地面積を持つここ、ステイブリーに移ってきた。数人で経営している他のマイクロ・ブリューワリーと比べると、かなり規模が大きい。

食事
ホークスヘッドの
ビールは、湖水地方の
様々なパブでも味わえる

1階はショップとカフェ、2階がビア・ホールとなっている。ビア・ホールと言っても、広々としたフローリングの床にシンプルな木のテーブルと椅子がゆとりをもって配置されたこの空間、大勢の人が大騒ぎしながら押し合いへし合いビールを飲み交わすというよりは、町の人々の憩いの場といったイメージに近い。実際、時折イベント会場としても使われるのだと言う。ホールからはガラス越しに醸造所の作業工程を垣間見ることもでき、希望すればツアーも行ってくれる。

ホークスヘッドの瓶ビールは、オンラインでも購入が可能だが、やはり現地で味わうカスクの味は格別。クリーミーな泡をつくるため、ゆっくりと注がれたビールは、地元ケンダルのサビン・ヒル・ファームでつくられたボリュームたっぷりのポーク・パイをお供に、一口ひとくち、じっくり味わいたい。

Hawkshead Brewery
左)昼間からぐびりと一杯。やはりカスク・ビールの味は格別だ 
右)すっきり広々としたホール内

Hawkshead Brewery
Mill Yard, Staveley, Cumbria LA8 9LR
TEL: 01539 822644(Brewery)/ 01539 825260(The Beer Hall)
www.hawksheadbrewery.co.uk
営業時間: 月、火 12:00-17:00、水~日 12:00-18:00


Ice Cream アイスクリーム

英国では老若男女、誰もが大好きなアイスクリーム。そのアイスクリームの主原料と言えば、何といっても牛乳だ。至るところで牛が草を食むこの湖水地方で、アイスクリームが美味しくないはずはない。牧場直送の絞りたての新鮮な牛乳をたっぷり使った極上のアイスクリームを頬張れば、口の中いっぱいに湖水地方の自然の偉大さを感じられるはず。

地元食材なら何でもござれ
Low Sizergh Barn

Low Sizergh Barn
夏場の晴れた日には外でもアイスクリームを販売する

ダムソンのアイスクリーム
一見、ベリー系に見えるが、
食べると濃厚な味が口に広がる
ダムソンのフレーバー

緑の蔦に覆われた小屋に一歩入ると、チーズや肉製品、色とりどりの野菜など、見るからに新鮮な、生き生きとした食材の数々に目を奪われる。1980年、ナショナル・トラストから農場を借り受けたパーク一家が、80年代半ばの牛乳生産制限による経済的打撃を緩和するため、91年にショップをオープンさせたのが始まり。今ではショップだけでなく、トレイルやクラフト・ギャラリーも併設している。ここで販売しているアイスクリームはもちろん、自分たちで飼育している牛の乳を使用。

お勧めは、湖水地方で多く生産される西洋スモモの一種、ダムソンのフレーバーだ。濃厚だが後味はさっぱりとしているその甘味は、新鮮な牛乳に負けない存在感を放っている。この湖水地方ならではの組み合わせに舌鼓を打った後は、ミート・パイやチーズなど、地元産の食品を買い込んで、湖水地方の味覚を丸ごと味わいたい。

Low Sizergh Barn
左)とにかく豊富な品揃えのチーズ。「私たちの牛の牛乳からつくられました」というポップがかわいらしい 
右)小屋の右隣には牛舎が

Low Sizergh Barn
Low Sizergh Farm, Sizergh, Kendal, Cumbria LA8 8AE
TEL: 015395 60426
www.lowsizerghbarn.co.uk
営業時間: 9:00-17:30(ショップ)9:30-17:00(ティー・ルーム)
(12月25日、26日、1月1日休)

濃厚ながらくどくない、日本人好みの味をどうぞ
Natland Mill Beck Ice Cream Parlour

Natland Mill Beck Ice Cream Parlour
おじいちゃんから子供まで、誰もが美味しそうにアイスをほお張る

木と石を基調とした、広々とした店内は、避暑地の家族向けレストランのような趣。小さな子供連れの家族が、アイスクリームやパフェをほお張る姿がある。湖水地方の南の玄関口、ケンダルに位置するナットランド・ミルベックでは、オーナーが運営する裏の牧場の牛から採れる牛乳をふんだんに使った手づくりアイスクリームを提供している。様々なフレーバーの中でも「一番人気があるのはバニラやチョコレートなどの定番ですね」と語るのは、何とカオリさんという日本人女性スタッフ。英国人のご主人とともにケンダルに住み、このパーラーで働き始めて3年が経ったのだとか。新鮮な食材に恵まれた北海道で生まれ育ったカオリさんも太鼓判を押すピーチ・アンド・クリームは、採れたて牛乳の芳醇な味と爽やかなピーチの香りのバランスが絶妙な一品。その他のフレーバーも、濃厚ながらくどさがなく、日本人好みの味揃いだ。

Natland Mill Beck Ice Cream Parlour
左)ピーチ・アンド・クリーム(右)はたっぷり入ったピーチ・ソースが程よいアクセントになっている
右)「日本人と全く会わないので、日本語を忘れてしまいました」とはにかむカオリさん

Natland Mill Beck Ice Cream Parlour
Natland Mill Beck Lane, Kendal, Cumbria LA9 7LH
TEL: 01539 731141
営業時間: 9:30-17:00(12月25日、26日、1月1日休)

人気の観光スポットにある本格派
Windermere Ice Cream

Windermere Ice Cream
常に多くの観光客が往来を行き来している絶好の立地

湖水地方随一の観光地、ボウネス。同地方の観光の拠点となるフェリー発着所の斜め向かいにあるウィンダミア・アイスクリーム・ショップは、敷地面積は小さいながらも、32種類という圧倒的なフレーバーの多さが魅力。立地の良さも手伝って、いつでも観光客で賑わっている。店内では、ハニー・アンド・ラベンダーやシナモン・プラム、フルーツ・オブ・ザ・フォレスト・ヨーグルトなど、普段はあまり見慣れぬフレーバーを前に、どれにしようか、あれこれ悩むお客さんの姿が。しかし、観光地の中心にあるからと言って侮ってはならない。この店のアイスクリームは、ソルベなど一部の例外を除いては、すべてオーガニックの牛乳を使った本格派。中でも地元の食材を取り入れたレモン・カードやリュバーブ・アンド・カスタードなどのフレーバーは、せっかく湖水地方を訪れたのならば、是非試してみたい個性的な味だ。

Windermere Ice Cream
左)たくさんのフレーバーを前に、誰もが思わず悩んでしまう 
右)大勢のお客さんをてきぱきとさばいていく

Windermere Ice Cream
Lake Road, Promenade LA23 3DE
TEL: 015394 43047
www.scoopchocice.co.uk
営業時間: 9:00-20:30(12月25日、26日、1月1日休)

湖水地方「桃源郷」を感じる旅 Part 1

 
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