ロンドンのゲストハウス
Mon, 16 July 2018

高田万由子インタビュー 東日本大震災チャリティー公演を実施 バイオリニスト葉加瀬太郎さんと集めた寄付金は約5万ポンド以上

ロンドン市内各地で開催されてきた、バイオリニスト・葉加瀬太郎さんの東日本大震災チャリティー・コンサート。そこで集められた寄付金が3月28日、ツアーで不在の葉加瀬さんに代わり、妻で女優の髙田万由子さんによって英国赤十字社*に渡された。集まった総額は、約5万4000ポンド*。葉加瀬さんとともにチャリティー・コンサートのために奔走してきた高田さんに、震災直後からたった5日間で計7回のコンサートを開いた日々を振り返って頂いた。
(塩月聡子)

髙田万由子髙田万由子(たかたまゆこ)

1971年生まれ。東京都出身。99年にバイオリニストの葉加瀬太郎氏と結婚し、現在は2人の子供とともにロンドンに在住。自身も女優としての活動を続ける一方、葉加瀬氏の音楽家活動を支えている。

地震発生後すぐにロンドン三越にてチャリティー・コンサートを開かれるなど、葉加瀬さんの行動力には感銘を受けました。しかしその分、準備は大変だったのでは?

地震を知ってすぐに、主人はツイッターで被災地に必要と思われる情報を2日間送り続けました。3日目の朝、主人に「どこでも良いからチャリティー・コンサートをしたい。場所を確保してくれ」と言われ、「ロンドン三越は?」と提案しました。三越さんなら、在英邦人の方の多くが場所をご存じですから、たくさんの人に足を運んで頂けると思ったんです。渡邊支店長には「今日の夕方にでも」とお願いしたのですが、最低限の準備期間を考え、翌3月14日にコンサートを開かせて頂くことになりました。とはいえ、ろくな告知はできませんでしたので、どれほどの方に来て頂けるかは見当もつかなかったんですよ。主人も「お店の入り口を開けて、バスキングのように街ゆく人に演奏を聴いてもらおう」と話していましたし、たとえ小さな活動でも毎日続けることで輪を広めていけたら……と考えていました。

しかし蓋を開ければ、通りに溢れるほどの人でしたね。

本当にびっくりしました!何より彼自身が一番驚いていましたね。セッティングもできていない時間から続々と人が集まって下さって、近隣のお店には「リージェント・ストリートが通行できない状態になっている」との連絡が入ったそうです。関係者の方々を始め、日本人留学生たちが主人のツイッターに呼応して、フェイスブックや口コミを通じて情報を広げてくれたんですよ。そのため、規模が大きすぎて同じ場所で続けられなくなってしまって。幸いにも、フォートナム&メイソンやカドガン・ホールの方々が開催を快く引き受けて下さったり、セント・パンクラス駅のユーロスター乗り場前や教会などでもコンサートを開くことができました。

セント・パンクラス駅
セント・パンクラス駅のユーロスター乗り場前での演奏

私ども聴き手側は、葉加瀬さんの演奏を間近で見られて大感激でしたが、葉加瀬さんや高田さんもこれまでの演奏会とは違ったご経験をされたのではないでしょうか。

そうですね。それぞれの場所で、それぞれ印象的なことがありました。例えば、フォートナム&メイソンでは、螺旋階段上からも見下ろせる地下の食料品売り場で演奏させて頂きましたので、各階でご覧になっていた方が次々とお札を投じて下さったんです。50ポンド札や20ポンド札が天からヒラヒラと舞い降りてくる光景は、なかなか目にできないものだと思いましたね(笑)。また、カドガン・ホールでは準備期間が短かったこともあり、打ち合わせが大変でした。入場料無料を主張する私たちに対して、ホール側は「チャリティーとはいえ、これまで入場料をとらなかった前例はない。ましてや寄付金を集めるためであれば尚更、少なくとも50ポンドぐらいには設定するべきだ」とおっしゃって。けれども葉加瀬は「それでは意味がない」と、頑として反論したんです。

葉加瀬さんの強いポリシーを感じますね。

「お金はもちろんだけど、人の力を集めたい」というのが、彼の一貫した思いでしたから。日本の惨状に胸を痛めつつも「自分たちに何ができるか分からない」と気を揉んでおられる方々の思いを一つに集めて、日本に届けようというのが今回のコンサートの趣旨でした。ですから、どれだけ多くの方に集まってもらうかが重要だったのです。結局、1枚1ポンドで販売したカドガン・ホールでのチケットは数時間で完売し、予想以上の方にお集まり頂けました。

最初の三越さんでのコンサートで、葉加瀬さんがお見舞いの言葉を述べられた後、「さあ、ここからは楽しくいきますよ」と仰いましたよね。その言葉通り、奏でられる音色を聴くうちに気分が明るくなったのが不思議でした。

不思議ですよね。でも、それが音楽の力なんだと思います。どんなに辛くて悲しいときでも、音楽を聴けば心が救われる。音楽は、重く、暗くなった心でさえも上向きにしてくれるんです。主人がいつも「音楽は楽しくなくてはならない」と言っているのはこういうことなんだ、と今回は特に実感しました。色々な音が重なり合うように、人の心も重なり合い、一人ひとりとの距離がグッと近づいたように感じましたね。カドガン・ホールのコンサートでは「音楽が持つ求心力ってすごいな」と思うと自然に涙が流れてきて、会場を見渡すとお客様を始め有志で集まった学生オーケストラの人たちも泣いておられました。彼自身も演奏しながらウルっときていたようです。

今回のコンサートで人との絆を感じ、日本は立ち上がっていける、と勇気づけられた方は多いと思います。

私自身もその一人です。各地でコンサートを開くたびに、多くの人に支えられ、助けて頂きました。三越の渡邊支店長は初日から最後の寄付金の集計作業まで終始サポートしてくれましたし、カドカン・ホールも、前例がありませんでしたが二つ返事でホールを提供してくれました。コンサートのパンフレットも、前日のお昼にやっと演目が決まったにもかかわらず、たった半日で刷り上げてくれて……。後からお話を伺うと、夜中に社員の方々がインクを乾かす作業をして下さっていたそうです。それに、毎回お手伝いをしてくれた学生さんたち*は、演奏が終わる都度、世界中の人々に向けて動画を配信してくれました。もちろん企業、個人問わずすべての皆さんが無償で、日本のためにと買って出て下さったのです。ですから今回、英国赤十字社に寄付させて頂いたお金は、主人一人の力ではなく、集まってくれたお客様を含め、関わって下さった方全員の力の結晶だと思っています。

その思いも、きっと被災地の方々に届くことと思います。

私どもはチャリティー活動を続けていくつもりですし、音楽を通じて世界中の人々の思いを被災地の方々に届けていけたらと思っています。主人が3月19日に日本へ帰国してからは、11歳の娘が積極的にチャリティー・コンサートに参加して主人の曲を演奏しています。今回の震災については皆さん心から日本の復興を応援してくれています。私たちのご近所さんはわざわざ寄付金を持って訪ねてくれましたし、主人がチャリティー・コンサートのために電子ピアノを持ってブラック・キャブに乗っていたら、バイオリンその経緯を聞いた運転手さんが5ポンド、「これを寄付して」と手渡してくれました。それも2日連続で!個人レベルでは小さなことでも、集めていくと大きな力になるはず。自分にできることを一人一人がすることで、日本への思いを届けられれば良いと思いますし、主人の音楽がその架け橋になれればうれしいです。

3月28日に行われた英国赤十字社への寄付金受け渡しは、学生ボランティアを始め、コンサート会場を提供したフォートナム&メイソンの代表者などが集まり、和やかな雰囲気の下で行われた。その場にいた全員の柔らかな表情を見ていると、いかに皆が心を一つにしてコンサートを盛り立てていたかが窺い知れたような気がした。

*1 : 英国赤十字社、日本赤十字社への募金の詳細はこちら
*2 : 4月1日現在の集計結果。ホール入場料や企業からの寄付金を合わせると、総額はさらに増す見通し。
*3 : 日本人学生ボランティア団体「Open Mind」「 London for Japan」は、日本国旗へのメッセージ記入を呼び掛ける とともに、募金箱を持って観客の間を回り、寄付金を募った。また「Pray for Japan」もサポートに参加。

 
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