ロンドンのゲストハウス
Wed, 12 December 2018

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

英政界にセクハラ疑惑 -大物議員も辞任- どこまで広がる?

前回の本コラムで、米映画プロデューサー、ハービー・ワインスティーン氏のセクハラ疑惑が英国でも問題視されてきた状況を書きました。

その後、事態は収束するどころかますます広がっています。ロンドンのオールド・ビック劇場の前芸術監督で、米「ネットフリックス」のドラマ「ハウス・オブ・カード」の主演で人気を博していた米俳優ケビン・スペイシー氏にも何件ものセクハラ・性的暴行疑惑が持ち上がりました。ネットフリックスは「ハウス・オブ・カード」の撮影を中止し、スペイシー氏主演の映画「ゴア」も公開しないと発表しました。同氏のキャリアは、今や風前の灯(ともしび)状態です。

芸能界の大物に過去にセクハラを受けたことがある人が次々と声を上げる中、「実は私も」という事例が出てきたのが英政界です。

6日時点で保守党議員では少なくとも8人が、労働党議員では3人がセクハラ疑惑で党内の調査の対象になっており、ウェールズ地方やスコットランド地方でも自治議会の議員の中で疑惑の対象になる人が出てきました。

保守党はメージャー政権時代の1993年から94年にかけて金銭・性的スキャンダルに見舞われました。「メージャー時代の再来になるのでは」「次は誰の名前が挙がるのか」と疑心暗鬼が生まれる中、1日にメイ政権の重鎮ファロン国防相が辞任しました。15年ほど前に、党大会の夕食会で女性記者の膝に手を置いたことが発覚したのです。ファロン氏は「軍隊を率いるのにふさわしい行為ではなかった」と述べて、辞任の意を表明。その直前に、同じころに別の女性記者にキスを強要したという疑惑も出てきました。

メイ首相の片腕とされるグリーン筆頭国務相もある女性記者の膝を触り、性的なテキスト・メッセージを送ったとされる件で内閣府から調査を受けています。また、2008年、内務省での情報リーク事件で同氏のコンピューターが調査対象となった事件があったのですが、このコンピューター内にわいせつな写真があったという疑惑も浮上。グリーン氏はいずれの疑惑も否定しています。

労働党では、党の運動員だった女性が2011年の労働党のイベントでレイプされたと告白。当時、通報しないようにと党幹部に説得されたと言います。ワインスティーン氏によるセクハラ疑惑に声を上げた女性たちの姿を見て触発され、実名でメディアのインタビューに応じました。

政界のセクハラ疑惑が広がったことで、メイ首相は6日、与野党の指導者を首相官邸に呼び、対策を練りました。疑惑を取り上げる新体制を来年までに立ち上げることを約束し、現在の苦情受付電話サービスを向上させ、対面式のサポート体制を今月中に整えると述べました。

7日、事態は新たな展開を見せました。セクハラ疑惑を理由にウェールズ自治政府の大臣職から解任されたサージェント議員が自宅で死亡していたことが分かったのです。「疑いを晴らし、復帰したい」と本人は述べており、疑惑内容を否定していたように思えますが、サージェント氏は具体的な疑惑の内容を知らされていなかったもようです。セクハラ疑惑があっても現職を維持しているグリーン氏と、疑惑発覚後にウェールズ自治政府から去らざるを得なくなったサージェント氏の明暗が分かれました。現在は、本人に疑惑内容を知らせないまま即解任という措置が正しかったのかどうかが問われています。

この後も疑惑追及は広がってゆきそうです。ファロン氏は「15年、10年前だったら許されていたこと」が今は許されなくなったと辞任の書簡で述べました。確かに、セクハラ、パワハラについての意識は変化しているのでしょうが、セクハラをされた方が「許して」いたのかどうかは疑問です。不快に思っても、当時は声に出せなかっただけかもしれません。一連の「疑惑」は事実ではないかもしれませんし、犯人捜しが少々過熱気味となっている現状ですが、これを境に意識が変わることを期待する人は多いのではないでしょうか。

 
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