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Fri, 20 October 2017

映画は言葉ではなく、身体表現
映画監督 熊切和嘉さん

熊切和嘉さん

Kazuyoshi Kumakiri
1974年、北海道帯広市生まれ。大阪芸術大学芸術学部映像学科卒業。卒業制作「鬼畜大宴会」が第20回ぴあフィルムフェスティバルで準グランプリを受賞。第28回イタリア・タオルミナ国際映画祭グランプリに輝き、一躍注目を浴びる。その後も第60回ベネチア国際映画祭コントロコレンテ部門(コンペティション)で話題となった「アンテナ」など次々と話題作を発表。2014年には、モスクワ国際映画祭で、「私の男」が最優秀作品賞を受賞した。同年12月より1年間、文化庁新進芸術家海外研修制度にてパリに留学。2017年、第25回レインダンス・フィルム・フェスティバルでは、最新作の「武曲 MUKOKU」が長編コンペ部門の最優秀作品賞、そして最優秀監督賞にノミネートされている。

今回、レインダンス・フィルム・フェスティバルでは最新作の「武曲 MUKOKU」が長編コンペ部門の最優秀作品賞と最優秀監督賞にノミネートされています。ただ、次回作の準備でお忙しいため、ロンドンへはいらっしゃることができないとお聞きしました。

このたびは現地へ行くことができず、本当に申し訳ありません。レインダンスへはとても行きたかったのですが、スケジュールの都合がどうしてもつかず、無念です。今は秋から冬にかけ撮影する作品の準備に追われています。それは映画ではなく連続ドラマで、内容は冤罪事件をテーマにしたものです。

本フェスティバルでは2回にわたり「武曲 MUKOKU」が上映されますが、ロンドンの観客にはどのようにこの作品を観てほしい、また、こんな人に観てもらいたいという希望はありますか。

主人公たちが時折、口にする「己を斬る」という言葉――これはなかなか英語でそのニュアンスを伝えることが難しい言葉だと思うのですが、それは詰まるところ「己と向き合う」「自分の弱さと向き合う」といった意味合いです。このように「武曲 MUKOKU」の中では様々な「剣」や「禅」にまつわる言葉が出てきますが、それらを理屈ではなく、心で素直に感じてもらえれば、きっと国境を越えて伝わるものがあるのではないかと信じております。

2014年には文化庁の研修制度で1年間パリに留学されたそうですが、パリではどんな体験をされましたか。また、この留学が「武曲 MUKOKU」を作る上で何か影響を与えていますか。

パリ留学中は主に脚本の執筆をしていたのですが、その合間に2カ月間、黒沢清監督がパリで撮影した「ダゲレオタイプの女」の現場にメイキング・ディレクターとして参加しました。そのほかは、とにかくシネマテークや名画座に通って映画ばかり観ていました。特に、シネマテークではちょうどバスター・キートン*の特集上映が行われていて、それに通えたことは自分にとってとても大きかったです。映画は言葉ではなく、「アクション」「身体表現」だ、と改めて感じ、その思いを自分なりに形にしたのが「武曲 MUKOKU」なのです。

*20世紀初頭、サイレント時代の米喜劇俳優。表情を一切変えず、体を張ったアクションとギャグが持ち味

藤沢周さんの小説「武曲」を映画化しようと思ったきっかけは何だったのでしょう。

かつて日本には「剣戟(けんげき)」(俗に言う、チャンバラ映画)と呼ばれるジャンル映画が量産されていました。例えば三隅研次監督と市川雷蔵が組んだ「剣」三部作や、同監督が勝新太郎と組んだ「座頭市」シリーズ、それから黒澤明監督の「用心棒」や「椿三十郎」などもそうです。それを現代によみがえらせるということに、映画人としてこの上ない興奮を覚えました。

また、そこに描かれている父と子の物語は個人的に非常に強く共感できましたし、テーマ性――まさしく「自分と向き合う」ことこそ、今の時代に必要なのではないかと強く感じ、自分の手で映画化したいと思いました。

「武曲 MUKOKU」で描かれている剣道とラップは、意外な組み合わせでありながら、どちらも身体と精神をとことんまで突き詰めるような、一種の即興アートではないかと思います。熊切監督ご自身は、何かスポーツあるいは音楽演奏をなさいますか。

スポーツは子供のころから野球とアイスホッケーをやっていましたが、もう20年以上、全くやっていません。「武曲 MUKOKU」の準備に入る前、脚本家と一緒に剣道にも挑戦しましたが、身体が言うことを聞かず、半日で挫折しました。また、音楽も大好きですが、自分では家で暇つぶしにギターをいじるくらいです。今はとにかく自分のイメージを、自分の身体ではなく、俳優の身体を使って表現することに悦びを感じます。

最後に、今回のフェスティバルで「武曲 MUKOKU」を観ようと考えている弊誌読者に何かメッセージをいただけますか。

「剣」と「禅」をテーマにした映画ですので、一見とっつきにくく感じるところもあるかもしれませんが、私としてはあくまで映画的に、ある種の活劇性を重視して描いた作品ですので、素直に全身で楽しんでいただけたら幸いです。

「武曲 MUKOKU」

監督: 熊切和嘉 
出演: 綾野剛、村上虹郎、前田敦子、小林薫、柄本明、風吹ジュンほか 
(2016年、125分、英語字幕付き)

芥川賞作家・藤沢周の小説「武曲」が原作。羽田融(村上虹郎)はヒップホップに夢中な高校2年生。あるとき友人に剣道の道場に引っ張っていかれた融は、渋々竹刀を握る。同校剣道部のコーチを務める矢田部研吾(綾野剛)は、融の中に自分の父(小林薫)と同じ天賊の才能を見い出す。

レインダンス・フィルム・フェスティバルで上映

9月20日~10月1日にロンドンで開催の、レインダンス・フィルム・フェスティバル。インディペンデント作品の発掘に力を入れる同フェスティバルで上映される「武曲 MUKOKU」のスケジュールは下記の通り。30日は上映後、星野秀樹プロデューサーによるQ&Aあり。

2017年9月23日(土)18:30 、30日(土) 12:30
料金: £13
会場: Vue West End
住所: 3 Cranbourn Street, London WC2H 7AL
最寄駅: Leicester Square
www.raindance.org/festival

 
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