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Thu, 22 August 2019

英・リビア関係とその変遷
カダフィ・リビア政権崩壊の裏舞台

カダフィ大佐の行方が依然として不明の中、トリポリ制圧を果たしたリビア国民評議会(NTC)が合法的政府として稼動し始めた。しかし、半年で5万人以上の犠牲者を出したとされるリビア内戦の裏舞台に英政府関与の可能性が浮かび上がるなど、この内戦の本質が露呈するにはもう少し時間が掛かりそうだ。

リビア年表

独立・英外交断絶
1943年 英仏同盟が伊をリビアから追放
1951年 リビア連合王国が英仏から独立
1969年 カダフィ大佐主導の「9月1日革命」、「リビア・アラブ共和国」に国名改称
1977年 社会主義リビア・アラブ・ジャマーヒリーヤ国」に国名改称
1984年 英国人警察官殺害事件を受け、英がリビアとの外交関係断絶
国際社会からの孤立
1986年 米がリビア軍施設などに爆撃(ベルリン・ディスコ爆破事件などに対する報復)、対リビア経済制裁発動
1988年 パンナム機爆破事件(スコットランドのロッカビー上空でパン・アメリカン航空103便が爆発、米リビア爆撃に対するリビア人による報復)
1989年 仏UTA航空機爆破事件(サハラ砂漠にUTA航空772便が墜落、リビア人容疑者による爆破)
1992年 国連安保理が対リビア制裁決議
1998年 児童集団HIV感染事件(パレスチナ人医師とブルガリア人看護師が容疑者)
国際社会への復帰
1999年 国連安保理が対リビア制裁一時停止。英・リビア外交関係が修復
2002年 パンナム機事件アブデルバセト・アル・メグラヒ被告に終身刑判決
2003年 国連安保理が対リビア制裁解除。リビアが国連人権委員会議長国に選出、大量破壊兵器開発計画廃棄を宣言
2004年 ブレア英首相(当時)がリビア訪問
2006年 米・リビア外交関係修復、リビアの「テロ支援国家」指定が解除
2007年 児童集団HIV感染事件の容疑者が釈放
2008年 ライス米国務長官(当時)がリビア訪問(米政府高官としては1957年以来)
2009年 国連総会議長国、アフリカ連合(AU)議長国に選出パンナム機事件メグラヒ受刑者が温情的措置により釈放(英石油大手BPの関与疑惑が浮上)
2010年 アラブ連盟(LAS)議長国に選出。パンナム機事件メグラヒ受刑者の釈放に関し、英政府とリビアの間で取引が行われた疑惑が浮上



2010年5月、中国の北京で胡錦涛国家主席(写真右)
と握手するリビアのムーサ・クーサ外相(当時)(同左)

Picture by: Yemen Lens/AP/Press Association Images


8月22日、反政府勢力の首都制圧で、歓喜に沸くトリポリ市民たち
Picture by: Picture by: Alexandre Meneghini /AP/Press Association Images


敵の敵は味方?

リビアにおける反政府デモ発生直後の今年3月末、英政府は、ムーサ・クーサ・リビア元外相(元リビア対外情報局長)が外相職を辞任し、英国に亡命(カダフィ政権離反)したと発表した。そして今月3日、同元外相と英情報局秘密情報部(MI6)との協力関係を示す文書が、同元外相の事務所で発見された。

1979年、在英リビア大使として赴任したクーサ元外相は、1988年パンナム機爆破事件や2007年リビア児童HIV感染容疑者釈放などの和解交渉における主要な役割を担ったことから、次第に欧米政府との距離を縮めていったようだ。

同文書によると、MI6と米中央情報局(CIA)が、リビアのイスラム系武装組織「リビア・イスラム戦闘集団(LIFG)」のアブデル・ハキム・ベルハジ元指導者を含むテロ容疑者をリビアに搬送し、同国情報機関に尋問を委託していた疑いも浮上。これに対しキャメロン英首相は5日、「英国の信用に汚点を残さないため」調査を実施するとしている。しかしここで看過すべきでないのは、ベルハジ元指導者がリビア国民評議会(NTC)軍事部の現トリポリ司令官であり、カダフィ政権崩壊の一翼を担った人物であることだろう。

リビアと英国の協力関係

英・リビア両情報局の協力関係は、2003年のリビアの大量破壊兵器放棄に向けた和解交渉を機に始まった可能性が高い。その翌年にはブレア元英首相が、1943年以来初となる英首相のリビア訪問を果たしている。また、英陸軍元帥のリビア派遣提案なども行われたとみられており、双方が一定期間の蜜月を有していたことは確かだろう。ただ、今回の民衆蜂起の波を、カダフィ政権の潮時と見なしたクーサ元外相が英国のドアを叩いたのか、それともリビアの政権移行を商機の到来とみた英国が同元外相に亡命を教唆したのかは不明だ。しかし、双方の利害が一致していたことは言うまでもない。

英政府がNTCを唯一の代表政府であると宣言した7月27日から間もない先月23日、反カダフィ勢力は首都トリポリを制圧し、事実上、42年間続いたカダフィ政権が瓦解した。一部報道は、トリポリ襲撃は英空軍及びMI6によるNTCへの戦略助言が功を奏したとし、英政府の関与を報じている。

リビア内戦の本質とは

今月1日に開かれた、リビア再建築を話し合う英仏共同主催の「友好国会合」。会合に出席したキャメロン首相はこの際、カダフィ政権崩壊を達成したのは多国籍軍ではなくリビア国民だとした上で、「リビアをイラクのようにはしない」と宣言した。

一方、石油大手のアラビアン・ガルフ(Agoco)幹部は、「伊・仏・英企業など欧米諸国との取引には問題はないが、ロシアや中国、ブラジルとの間には政治的な問題がある」と発言。軍事支援国に対して優先的な処遇を図る姿勢を示した。また、仏ジュペ外相が、仏や英の企業が恩恵を受けることは「正当で当然」と述べるなど、早くも石油利権争奪戦に突入したことを示唆する展開がみられている。いずれにせよ、リビア内戦の本質を明かす端緒を開くには、一定程度の時間を要するだろう。

リビア国民評議会
(NTC / National Transitional Council)

ムスタファ・アブドルジャリル議長(大統領格)、マフムード・ジブリール執行委員会委員長(首相格)。2月27日、カダフィ政権成立前に首都であった北東部ベンガジにて結成、3月5日、リビアにおける唯一の代表政府である旨を宣言。穏健イスラムで民主的なリビアの構築を目指す。8月25日、カダフィ政権の崩壊に伴い、拠点をベンガジから首都トリポリに移動。今月20日、米ニューヨークにて第2回友好国会合を開催予定。20カ月後を目処に大統領を選出する国民投票の実施を予定している。

(吉田智賀子)

 
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