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Tue, 17 July 2018

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

第二次大戦時の宰相チャーチルどんな人物だったのか - 愛される理由とは

3月上旬、英映画「ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男」でチャーチル役を演じたゲイリー・オールドマンが、第90回米アカデミー主演男優賞に輝きました。オールドマンは、2011年「裏切りのサーカス」のスパイ役で、同賞の主演男優賞にノミネートされましたが、残念ながら夢はかなわず。今回は事前の下馬評でも最有力候補となり、予想通りの受賞となりました。この映画では、辻一弘さんが日本人としては初のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞しましたね。

チャーチルといえば、恰幅の良い体、犬のブルドッグを思わせる顔、葉巻を口に加え、2本の指で勝利のVサインを作る姿を思い浮かべる人は多いでしょう。ここで改めて、チャーチルの人生と、なぜ彼が英国で大きな存在を持つ政治家なのかを振り返ってみましょう。

チャーチルの生まれは1874年。父ランドルフは後に財務相まで務める保守党の政治家で、母ジェニーは米国の富裕な家庭の出身でした。ランドルフは第7代マールバラ公爵の三男です。

チャーチルは父を大変尊敬し、いつかは父のように政治家になりたいと願うようになりますが、学校の成績はあまり良くありませんでした。チャーチルには大学進学は無理とみた父は、サンドハースト王立陸軍士官学校への進学を勧めました。3度目の入学試験で、チャーチルはようやく合格します。

卒業後、騎兵将校になったチャーチルは、実戦に参加してみたくてたまらなくなりました。そこで、当時スペイン領であったキューバで発生した独立戦争でスペイン軍と行動を共にするのですが、ここで初めて銃撃戦に遭遇します(1895年)。そして、このときの体験や、英領インドに赴任中に戦闘に加わったパシュトゥーン人の反乱鎮圧作戦(1897年)などを新聞に寄稿したり、本にまとめたりしました。チャーチルは軍人兼ジャーナリスト、作家であったのです。

1900年、チャーチルは保守党議員として初当選し、理想肌の若き政治家として党の政策を公に批判。4年後には当時の自由党に鞍替えします。1924年には保守党に戻るのですが、党内では「裏切り者」「日和見主義」と見なされ、根強い反チャーチル感情を生んでしまいました。

第一次大戦では、チャーチルが主導した「ガリポリ作戦」(1915〜16年、英仏の連合軍による、ダーダネルス海峡入り口にあったガリポリ要塞の攻撃・占領作戦)が失敗し、海軍相を罷免されてしまいます。1922年の下院選では落選し、気晴らしのために絵画を描くようになりました。議員として復活したのは24年の補欠選でした。

1939年に第二次大戦が勃発し、翌年5月にチャーチルは首相に就任しました。映画でも分かるように保守党内の反応は冷ややかなものでした。チャーチルは1930年半ばからドイツ・ヒトラー政権の脅威を演説で警告してきたのですが、「好戦的」「大げさな表現で脅しをかける、時代錯誤的な人物」と見られていたからです。多大な犠牲者を出した第一次大戦の後で、「もう2度と戦争をしたくない」という感情が、国民にも政治家の中にも強かったのです。でも、ヒトラーが次々と西欧諸国で進撃を進め、あわや英国も征服されてしまうのではないかという事態になったとき、チャーチルは最後まで戦い抜く決意を力強く表明しました。

チャーチルは「言葉の魔術師」でもありました。1940年夏の、英独間で制空権を争う戦い「バトル・オブ・ブリテン」について、「人類の歴史において……、かくも多くの人間が……、かくも少ない人間によって救われたことはない」と述べた演説はよく知られています。一連の演説によって、国民の一人一人を鼓舞したチャーチルは、人々の心中に入り込みました。勇気づけられる言葉の数々に感動し、国民は一丸となって総力戦を戦うことになります。第二次大戦の勝利を導いた政治家チャーチルのことを英国民は今後も忘れることはないでしょう。

キーワード

ジョン・ブル(John Bull)

典型的な英国人、擬人化された英国を意味する。18世紀の寓話「ジョン・ブル物語」の主人公の名前にちなむ。小太りの体に正装の半ズボンと英国旗柄のベストを着用し、山高帽をかぶるジョン・ブルの像は、同様の体型で山高帽をかぶるチャーチルの姿と重なる。チャーチルは英国を象徴する人物として、人々から愛情と敬意を得た。
 
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