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Wed, 20 November 2019

知って楽しい建築ウンチク
藍谷鋼一郎

ロイズ・オブ・ロンドン

前回の本欄で紹介した英国建築界のスーパースター、リチャード・ロジャース卿。同じく現代建築界をリードするレンゾ・ピアノ(伊)と協作したパリのポンピドゥー・センターは、世界中を驚愕させた出世作だ。そして彼の地位を不動にした名作と言えば、やはりシティにあるロイズ・オブ・ロンドンだろう。

ロイズ・オブ・ロンドン
内部にも独特の構造は生かされている

ロイズ・オブ・ロンドン
金融街シティで一際目立つ
ロイズ・オブ・ロンドンの建物

コーヒー・ショップとして始まる

いまや世界最大級の保険会社に成長したロイズの始まりは、1688年にまで遡る。この頃、エドワード・ロイズという男性が経営するコーヒー・ショップに、保険業者が集まって商談を行っていた。そしてこのブローカーの溜まり場が、規模の拡大とともに今日ある姿にまで成長したわけだ。100年、200年と時は流れ、コーヒー・ショップは姿を消したものの、オーナーの名前だけはしっかりと受け継がれた。

古代ギリシャでは、「アゴラ」と呼ばれる集会場所に市民が集い、討論を繰り返していたという。そういった人々の行為を受け入れる器として建築物が発展し、機能を満たす空間や名称が確立された。ロイズ・オブ・ロンドンは、新しいビジネス・モデルの発掘、そして、ギリシャ建築命名の現代版とでも言えようか。

チャールズ皇太子の苦言

石造の重厚な建築群が軒を連ねる金融街シティにおいて、英国ハイテク建築の総本山ロイズ・オブ・ロンドンは一際目立つ。建設当時の衝撃はすさまじく、チャールズ皇太子に「経済の中心地に工場のような建物が出現した」と嘆かせた。

ロイズ・オブ・ロンドン
チャールズ皇太子に「まるで工場」と嘆かせた外観

ロジャース建築は、とりわけ部材と部材が繋がるジョイント、人体の骨格で言えば関節のディテールに定評がある。ここではポンピドゥー・センター同様、通常は外壁や天井の中に隠してしまう空調ダクトなどの配管設備を外観に曝け出している。それは一見、石油コンビナートと見間違うほどだ。また一般に柱や梁、床などの構造体に比べ、設備施設は耐用年数が短いとされる。すなわち、取替えや修繕を頻繁に行わないといけない。だからこれらを外側に配置する方が、簡単に交換できて効率的でもあるということになる。

ハイテク建築の御三家

ロイズ・オブ・ロンドン
剥き出しになった配管設備剥き出しになった配管設備

ハイテク建築の御三家といえば、先述の英国を代表するリチャード・ロジャース卿とノーマン・フォスター卿、そして、イタリアのレンゾ・ピアノの3人が挙げられる。ガラスや鉄を巧みにデザインした先鋭的で機械的な建築表現は、建築界に新時代の到来を予感させた。また技術革命の波とも同調し、巨大化を続ける構造物建設にも打ってつけだった。大スパンのオフィス・ビルや空港ターミナル、あるいはスポーツ施設などに彼らの代表作が多いのも頷ける。3者は各々の設計事務所を開設し、独自の建築スタイルを確立、70歳を超える今も現役で活動中だ。

現在ロジャース卿が建設を手掛けている超高級コンドミニアムは、ハイド・パーク横の超高級ホテル、マンダリン・オリエンタルに隣接している。ホテルのサービスを共有できることも付加価値をつけているそうだが、最上階のペントハウスは2000平方メートル近くの床面積で、200億円で売却済みだそうだ。また彼はロンドン市長ケン・リビングストンの懐刀としても活躍中で、ロンドンの未来像を決定する立場となっている。

 
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藍谷鋼一郎:九州大学大学院特任准教授、建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学卒、バージニア工科大学大学院修了。ボストンのTDG, Skidmore, Owings & Merrill, LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録し、新聞・雑誌に寄稿している。
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