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日経電子版Pro
Thu, 26 November 2020

小林恭子の
英国メディアを読み解く

小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi 在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社)など。

労働党が圧勝するか?
5月3日、イングランドで地方選挙
- 総選挙以来の国民の審判

来月3日、イングランド地方では4年ぶりの地方選挙が行われます。32のロンドン自治区、34の大都市自治区、68の地方カウンシル、17の単一自治体で4000を超える議席が争われます。また、ロンドンのハックニー、ルイシャム、ニューアム、タワー・ハムレッツ、ワトフォード自治区では区長選挙も行われます。北アイルランド地方のウェスト・タイロン選挙区では、下院の補欠選挙も行われますので、総選挙ほどの大騒ぎではないにしても、テレビで政見放送が行われ、選挙絡みの話題がひんぱんに報道されるようになっています。

注目点は、今回が昨年の総選挙後初めての大規模な選挙になりますので、有権者がこの国の政治を今どう見ているのかが、これで判明することです。更に具体的に言うと、ずばり、労働党政権が成立するかどうかを占う選挙でもあります。昨年の下院選で大きく議席数を伸ばした労働党。若い層を中心に労働党党首ジェレミー・コービン氏の「コービン人気」が高まりましたよね。コービン・フィーバーが今回も起きるのかどうか、見どころです。

先ほど、「選挙絡みの話題がひんぱんに報道される」と書きましたが、特定の候補者や政策が取り上げられることに加え、ほかの話題も政治色を帯びてきます。例えば、コービン氏や労働党内の「反ユダヤ主義の傾向」を批判する報道が続いています。本当にそうなのかどうかを国民のために追求するのはメディアの役目の一つですが、保守系新聞(「サン」紙、「デーリー・メール」紙、「デーリー・テレグラフ」紙、「タイムズ」紙など)にとって、この話題は労働党を痛めつける格好の機会です。昨年の総選挙の直前、メイ首相率いる保守党は労働党に対し、支持率で大きな差を付けていました。ところが、まさかの労働党躍進の結果に終わりました。次の総選挙は2020年で、すぐそこまで迫っています。

一方の労働党はロンドン市内で増えている若年層のナイフや銃による殺害事件を例に挙げ、「保守党政権が警察の人員削減をしたせいだ」と主張しています。確かにそのせいもあるのかもしれませんが、こちらにも「この機に乗じて」という姿勢が見えます。投票日まで、有権者はどの報道も裏を疑いながら接する必要があるでしょう。

特に保守党が労働党から死守したいと思っているのがロンドンのバーネット、ワンズワース、ウェストミンスター行政区と言われています。この3つの行政区をどの党が牛耳るか、注目です。

コービン党首(労働党のイングランド地方の地方議会での議席数は2048)、テレーザ・メイ首相(保守党は1302議席)、ビンス・ケーブル自由民主党党首(議席数は409)、英国独立党(UKIP)のジェラルド・バッテン党首(154議席) が、選挙戦の応援に駆け付ける姿をひんぱんに目にするようになるでしょう。

また今回の地方選は、来年3月末に実現するブレグジット(英国の欧州連合 (EU)からの離脱)前の、最後の大規模な選挙になります。果たしてブレグジットは、この選挙に何らかの影響を及ぼすのでしょうか。

2014年の地方選挙では、ブレグジットを望む有権者がUKIPに票を投じたことで、UKIPは初めてイングランド地方の議会に議席を得ました。同日に行われた欧州議会選挙では英国の第一党にもなりました。この結果に震撼したデービッド・キャメロン首相(当時)は、国民投票を実施しようと、決意を固めたと言われています。今回も、在英EU市民の動きが意外と選挙の行方を決めるかもしれませんね。

さて、地方選挙で票を投じることができる人は誰でしょう? その条件は、18歳以上で、英国籍かアイルランド国籍、英連邦及びEU加盟国の国籍を持つ人で、英国居住者であること。在英邦人においては、英国籍を取得していない限り、投票できません。郵便による投票は18日に締め切られており、代理人が投票できるのは25日までとなっています。

キーワード

自治区 (Borough)

読み方は「バラ」。ゲルマン語で「砦」を意味する「burg」から派生した言葉で、欧州各国では「要塞都市」の意味を持つ。中世には自治を認められた政府が置かれた土地を指した。現在は「ロンドン自治区」とは、32の主要な地方自治区のこと。
 
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