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英国の橋(2)

15 May 2008 vol.1147

新しい千年紀を記念するミレニアム・プロジェクトの一環として、2000年までに英国各地ではさまざまな公共事業が整備された。それらの中には、テムズ河に架けられたミレニアム・ブリッジとイングランド北東部ニューカッスルに架けられたゲイツヘッド・ミレニアム・ブリッジも含まれる。


テムズ河上で揺れるミレニアム・ブリッジ

ロンドンのミレニアム・ブリッジは、ノーマン・フォスター卿が設計した全長325メートルの優美な吊り橋だ。今ではセント・ポール大聖堂とテート・モダンを繋ぐ新しい都市軸として機能しているが、2000年6月に開通してわずか2日後には閉鎖の憂き目にさらされた。開通に合わせて詰め掛けた大勢の通行者が引き起こす横揺れが、見事に橋の持つ固有周期(一回揺れるのにかかる時間)と共鳴したのだ。それにより、橋はより激しく揺れ、歩行者は歩くこともままならない状態に陥った。華麗さを追求するあまり、構造的に華奢になったのが災いした格好だ。英国の威信をかけたはずが、欠陥品を世に知らしめてしまったが、幸い負傷者は出ていない。ちなみに横揺れのエネルギーを吸収するダンパーの取り付け工事には、9億円近い費用を要したという。

ロンドンのミレニアム・ブリッジとアーチ形のゲイツヘッド・ミレニアム・ブリッジ
ロンドンのミレニアム・ブリッジ(左)とアーチ形のゲイツヘッド・ミレニアム・ブリッジ(右)


もう一つのミレニアム・ブリッジ

イングランド北東部ニューカッスルのタイン河に架けられたゲイツヘッド・ミレニアム・ブリッジも注目に値する。大胆な構造表現や洗練されたデザイン力に定評のあるウィルキンソン・イアー設計の斬新なアーチ橋で、全長約100メートルの歩行者専用橋である。こちらはオーソドックスなアーチ橋なのだが、驚異的なのは船の走行に応じて開閉すること。一般的な開閉橋では、真ん中で橋桁が2つに別れて跳ね上がったり、橋脚の軸を中心に横に回転したりする形式を取るが、ここでは両端に取り付けられた軸部を中心に縦に30度回転する。

造船などの産業都市として栄えたニューカッスルでは、基幹産業の衰退への対応策として、ウォーターフロント一帯において再開発事業が目白押しで、新旧相まった景観が築かれつつある。河畔にはノーマン・フォスター卿設計の音楽ホールも完成した。このホールは入道雲のような曲面が特徴的で、不思議とタイン河に架けられた他のアーチ橋と調和する。また幾重にも連なったカーブの連続は、独特のスカイラインを形成している。


橋梁デザインの新傾向

コベント・ガーデンにある「ブリッジ・オブ・アスピレーション」
コベント・ガーデンにある
「ブリッジ・オブ・アスピ
レーション」
何も、川や峡谷を繋ぐだけが橋ではない。ビルとビルを空中で繋ぐ構造物も立派な橋である。ロンドンのコベント・ガーデンにあるロイヤル・バレエ・スクールとロイヤル・オペラ・ハウスを繋ぐ空中廊下「ブリッジ・オブ・アスピレーション」は、圧巻だ。10メートルにも満たない短スパンの橋だが、バレエの躍動感をも実感させる力強さを秘めている。建築学的には、位置のずれた2点間を、構造体を少しずつ回転させることで上手く繋げている。

現代の技術では、全長4キロにも及ぶ長大橋や、数本の橋を連結させて十数キロに及ぶものまで建設可能となっている。しかし建物同様、高さや長さを競う時代は終焉に差し掛かっているように思える。それよりも、規模は小さくてもデザインの洗練されたものが、街中でその存在感を醸し出す。そんな時代の到来を予感させる構造物が、英国から発信されている。

ゲイツヘッド・ミレニアム・ブリッジ
タイン河に架けられた橋は、それぞれ周囲の景色と完全に調和している


藍谷鋼一郎
建築家。1968年徳島県生まれ。九州大学、バージニア工科大学大学院卒。ボストンのTDG、Skidomore, Owings & Merrill,LLP(SOM)のサンフランシスコ事務所及びロンドン事務所で勤務後、13年ぶりに日本に帰国。写真撮影を趣味とし、世界中の街や建築物を記録。新聞・雑誌に寄稿している。
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