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第22回 トマス・フラー
トマス・フラー

歳月を超える名言がある。幾星霜を経て、その価値が色褪せぬばかりではない。まるで、数百年の後のありようを予見し、遥かな後世に向けて発せられたかのように、あまりにも「現代的」な生命力を持つ言葉なのである。今回のこの言葉など、その筆頭格であろう。9.11以来世界中を巻き込んで声高に唱えられる「War on Terror(対テロ戦争)」の時代を見越して、遠い時間の彼方から放たれた鋭い矢のようなものだ。

それにしても、この言葉の「今日性」は衝撃的である。そら恐ろしいくらいのリアリティがある。発言者のトマス・フラーは17世紀、市民戦争の時代の聖職者だが、いかに血で血を洗うような戦いを幾度となく目の当たりにしたにせよ、ここに平然と述べられた「真実」は、400年の歳月を貫き、21世紀の現代にこそ真の輝きを得るような気がしてならない。

「セキュリティ」の確保は、アメリカを先頭に対テロ戦争の時代の世界の指導者によって、毎日のように、しかも焦眉(しょうび)の急として語られる。だが、安全確保の対策を講じることは、なにがしかの敵を想定して、その侵犯から守るということであるから、どうしたって、灰色のものを色眼鏡で影を濃くして見ることになるし、臭いと感じれば、蓋をして封じるにせよ、蓋をこじ開けて中身をさらけ出すにせよ、有無を言わせずという強引さで迫ることにもなる。要するに、力で抑えつけるという姿勢からは免れない。

そこに、落とし穴がある。力を頼みとする限り、必ずや排他性の熱を帯びた盾を構えざるを得ず、対象とされた者たちからすれば、矛を突きつけられたに等しい傷を負い、憤懣を抱えることになってしまう。セキュリティ強化が必死であればあるほど、不愉快の種を撒かれた心は屈折し、どす黒い感情を溜め込んでいく。憎悪の毒がふくらんで爆発すれば、天を突くように聳え立つ繁栄の城、権威の砦(とりで)も、木っ端微塵に粉砕され、倒壊する。

力で抑えつけるだけでは、真の解決はない。しかし、我々にとって真に苦しいのは、既に諍(いさか)いが始まっている時、愛の言葉は空しく、力を頼みに手段を講じざるを得ない点である。要するに、未来には地獄の口がぽっかりと口を開けて待つだけなのだ。

フラーの言葉を「発見」した時、そのあまりの今日的なリアリティに、私は慄然とした。地獄の黙示録を覗くように思った。救いのない分、フラーの言葉は真実を穿っていると言わざるを得ない。世界の指導者たちは、この言葉をなんと聞くだろうか―。


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