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ターナー・プライズ2007

英国の近代アートにおいて、知名度、権威ともにナンバー1の「ター ナー・プライズ」。しかし、2008年にリバプールが欧州文化都市となることを祝し、23年間の歴史上初めて、ロンドンではなくテート・リバプールで候補者の展覧会と授賞式が行われるとあって、実際に鑑賞に行けない人も多いのでは?そこで、4人の候補者がこの展覧会のために用意した作品と、選考対象となったエキシビションを一部紹介。12月3日の受賞者発表前に、ターナーが誰の手に渡るか予想してみては?(本誌編集部: 國近絵美)


ターナー・プライズとは?
1984年に「一般市民が新しい美術に関心を持つようになる」ことを目指して設立。07年現在、賞の対象者は50歳以下の英国籍、あるいは英国で活躍しているアーティストとされ、90年を除き、毎年4人のアーティストがノミネートされてきた。「ターナー」は18~19世紀に活躍した英国を代表する画家、J・M・ターナーの名にちなむ。


「物」が発する声に耳を澄ますアーティスト

ザリーナ・ビーミ
Zarina Bhimji

1963 Uganda生まれ
1982-83 Leicester Polytechnic
1983-86 Goldsmiths' College, University of London
1987-89 Slade School of Fine Art, University College London

このエキシビションで展示されている写真とビデオ作品は、どれもウガンダ生まれのビーミが90年代後期から行ってきた、東アフリカに関する大規模なリサーチから生まれたものだ。不安感をあおるほどの空虚さや、人工的なまでに生気を失った風景を写す彼女の写真は、「空間」がかつて持っていた匂いや温度、音や雰囲気を伝えるドキュメンタリーとしての存在、そしてその空間がもうどこにも属していないというセンチメンタルな感情を持ち合わせている。それは社会や生活の一部であった物や場所が発する残像や声を見逃さない、ビーミならではの鋭く繊細な視点があってこそ捉える ことができる風景なのだろう。

また、彼女が3年前に訪れた工場で撮影されたのが、隣室で上映されているビデオ作品「Waiting」だ。サイザルと呼ばれる、ロープの原料となる麻を扱うこの工場では、労働者たちの顔が写されることはない。それゆえ、せっせとサイザルを加工していく手からは、物を大量に生産しては消費していく人間たちが、「街」という有機体に住み着くパラサイトであるかのような印象を受ける。この35ミリフィルムで撮影された後に高解像度のビデオに転写されたという映像では、扇風機にはためく埃、漆喰の壁に空いた穴、それらを照らす、屋根の隙間からこぼれる強い日差しといった何気ない風景が、詩のようなリズムと美しさで展開されていく。そしてその美しさの陰に、現代社会が持つメランコリーが強く滲む作品だ。

ザリーナ・ビーミIllegal Sleep 2007 © Zarina Bhimji. DACS, London 2007
Photo: Courtesy of the artist and Haunch of Venison, London
ザリーナ・ビーミShadows and Disturbances 2007 Courtesy of the artist and Haunch of Venison, London ©Zarina Bhimji. DACS, London 2007

空間の魔術師

Mike Nelsonマイク・ネルソン
Mike Nelson

1967 Loughborough生まれ
1986-90 University of Reading
1992-93 Chelsea College of Art and Design, London
ロンドン在住

出展作品: AMNESIAC SHRINE or The misplacement (a futurological fable): mirrored cubes - inverted - with the reflection of an inner psyche as represented by a metaphorical landscape

「記憶喪失の神殿、あるいは間違って置かれた物(未来学的な寓話):精神を比喩的な風景として『あべこべに』反射させた鏡張りの箱」という、とてつもなく長い、立派なタイトルを付けられたこの作品。狭い展示スペースに入る と、部屋の中心には焚き火のインスタレーションが無造作に置かれている。燃えあとの残る木は本物だが、火はプラスチック製で、明らかに偽物。解釈に困ったまま、そそくさと次へと移る他の観客と一緒に隣の部屋に入ると、今度は床から天井まで続く箱が4つ並んでいる。それぞれの箱に空いた穴をのぞくと、そこには砂と小さな電球で出来た夜の砂漠のような空間が、鏡張りの壁に反射して無限に広がっている。人工的な美しさはあるものの、4つのどの箱も、中身は同じ風景。箱と箱の狭い間を縫って次の部屋に行くと、最初の焚き火のインスタレーションに戻っている。しかし、「なんだ、これだけか」とあなどるなかれ。これは実は最初に入った部屋ではなく、全く別の部屋なのだ。もう一度箱の部屋に入り、来た道を戻ると、ちゃんと最初の焚き火の 部屋に戻っている。

デジャヴの様な錯覚を人工的に造り上げたこの作品は、ある空間の中にさらに異なる空間を作ることで、観客を一瞬のうちに独自の世界に引き込んでしまうネルソンの実力が見事に現れた傑作だろう。観客に「ギャラリーで作品を鑑賞している」という自己意識と、作品を理解する時の無意識の状態を行き来してほしい、という本人の希望が見事に達成されている。鑑賞後に、膝をたたいて「まいった!」と言いたくなる希有な作品だ。

代表作: AMNESIAC SHRINE or Double Coop Displacement

ネルソンが90年代後半から登場させている、元湾岸戦争の従軍兵が結成したという想像上のバイカー集団、「Amnesiacs(記憶喪失)」シリーズ。SF小説や音楽、映画、歴史や神話など、あらゆるものからインスピレーションを受けるという彼の作品の多くは、観客がそれぞれのフィルターを通して理解し、作品同士をつなぎ合わせていくことが要求される。※この作品は今回のエキシビションには含まれていません。

代表作: Mirror Infill

この暗室は06年のフリーズ・アート・フェアで、目立たないようにギャラリー・スペースの間に設置された。あまりにもリアルな部屋に、多くの観客はこれが作品であることに気がつかなかったとか。※この作品は今回のエキシビションには含まれていません。

マイク・ネルソン 壁に空いた穴をのぞくと、上の砂漠のような風景が広がる
AMNESIAC SHRINE or The misplacement (a futurological fable): mirrored cubes - inverted - with the reflection of an inner psyche as represented by a metaphorical landscape 2007 ©Mike Nelson Photo: Photography: David Lambert & Rod Tidnam, Tate
マイク・ネルソン AMNESIAC SHRINE or Double Coop Displacement, Matt's Gallery, 2006 ©Mike Nelson Courtesy the artist and Matt's Gallery, London.
マイク・ネルソン Mirror Infill, 2006 Commissioned and produced by Frieze Projects ©Mike Nelson Courtesy the artist and Matt's Gallery, London

アートを武器に、現代社会を斬る

Mark Wallingerマーク・ ウォリンジャー
Mark Wallinger

1959 Chigwell, Essex生まれ
1978-81 Chelsea School of Art, London
1983-85 Goldsmiths' College, University of London
ロンドン在住

出展作品: Sleeper

英国の階級社会にシニカルな笑いを持って対峙し、歪んだ社会構造に疑問を投げかけるアーティスト、マーク・ウォリンジャー。彼が今回の展示作品に選んだのは、04年に製作したビデオ1本のみだ。そして真っ暗闇に設置されたスクリーンに映るのは、素人っぽい、手ぶれしまくりのカメラワークでクマの着ぐるみを着た本人を追ったドキュメンタリーである。

ガラス張りのモダンな建物の1フロアを行ったり来たりするクマを眺めているうち、観客が実際にパフォーマンスに参加することなく、事後報告のようにアイデアを見せられるのは果たしてアートなのか、と疑問が浮かぶ。しかし頭が重いのか、うつむき加減でうろうろと不格好に歩くクマ(実際、とても足が短い)を見守っているうちに、「偽物」に隠れながらも、アーティストの動揺、孤独などがひしひしと伝わってくる。時おり通行人が立ち止まっては、建物の中でうなだれているクマを見て笑い去っていく。ガラス張りということは、その対象が望むが望むまいが、傍観者は興味がある時にだけ見る、ということだ。時々、観客に向かって両手を挙げたり、四つん這いになったりするクマは、おどけているのか威嚇しているのか分からない。しかし、クマがたとえ助けを求めようと、観客はその滑稽な外見に、ただただ笑うだけだ。

パフォーマンス自体はとてもシンプルで、説明も一切ない。しかし「異質」なものへ社会が持つ固定観念を見せつける、力強い作品だ。ちなみに、クマはこの作品が撮影された地、ベルリンの街のシンボルである。

代表作: State Britain

ウォリンジャーがターナー賞候補に挙がるきっかけとなったのが、テート・ブリテンでのこのエキシビションだ。2001年6月からイラクへの経済制裁、そしてそれに続く戦争に反対し、パーラメント・スクエアで現在も1人で座り込みを続けているブライアン・ホー。彼が抗議活動に使った、支援者たちから贈られた看板や横断幕などは、反戦抗議を行う団体を締め出すために06年に英国政府が作った法律によって警察に没収されてしまった。このエキシビションでは、その没収された600個ものオリジナルの看板などを、15人のアシスタントと共に半年かけて、約9万ポンド(約2070万円)を費やし、40メートルにもわたるディスプレイとして再現してある。ホーの反戦運動をそのまま作品化したこのエキシビションは、「これがアート?」という疑問を抱かせつつも、ホーの運動と思想を広く社会に浸透させることに貢献したことに変わりはない。※この作品は今回のエキシビションには含まれていません。

マーク・ ウォリンジャー Sleeper 2004-5
©Mark Wallinger
マーク・ ウォリンジャー State Britain, 2007 Installation view at Tate Britain ©Mark Wallinger Photo: Sam Drake, Tate Photography

「外観」が表す「内面」に注目

Nathan Coleyネイサン・コリー
Nathan Coley

1967 Glasgow生まれ
1985-89 Glasgow School of Art
グラスゴー在住

出展作品: There Will Be No Miracles Here

コリーの作品には、英国人の政治や価値観、そして信仰心などを、建築や公共のスペースがどのように象徴しているのかを考えさせるものが多い。今回の展示を見ていると、なかでも建築物がいかに人や社会に活力を与えたり、あるいは力どうしを衝突させたりするかに興味があるようだ。

広い空間にぽつんと置かれたこのインスタレーションは、元々は森や空き地など、野外で展示されていたものだ。「ここでは奇跡は起こらない」というネガティブなメッセージを電球を使ってポップに訴えることによって、英国らしいブラックなユーモアが表現されている。白い壁に囲まれたキューブの中で、そこだけ明るく輝く「嘘っぽさ」に思わず意味を求めてしまうが、野外で見ないことには、作品本来の力が発揮されないのかもしれない。

また、コリーの展示スペースは、2本の「敷居」のスカルプチャーによって仕切られている。これは自身が造り上げた「神聖なる空間」と外界とを遮り、区別するという役割を持つそうだ。日本人には馴染み深いが、敷居自体が英国人の概念にはあまりないらしく、つまづく人が続出していた。しかしこれもアーティストの望むところで、観客がこれを跨いだり足を引っかけたりすることで、「無意識に」彼の空間を通り過ぎることができないようするのも目的の1つなのだとか。

代表作: Camouflage Church

厚紙で造られたこの教会は、シナゴーク(ユダヤ教の礼拝堂)、モスク・バージョンもあり、いずれもストライプに塗られている。「美しい」というだけで芸術作品を賞賛することは、とても危険なことだと語るコリーにとって、アイデアを交換し議論を交わすことが、「次世代アート」なのだという。※この作品は今回のエキシビションには含まれていません。

ネイサン・コリー There Will Be No Miracles Here 2006 Courtesy of the artist, doggerfisher and Haunch of Venison, London ©Nathan Coley . Photo: Photography: David Lambert & Rod Tidnam, Tate
ネイサン・コリー Camouflage Church, 2006 ©Nathan Coley Courtesy doggerfisher and Haunch of Venison
ネイサン・コリー 左)Hope and Glory 2007 Courtesy of the artist, doggerfisher and Haunch of Venison, London ©Nathan Coley . Photo: Photography: David Lambert & Rod Tidnam, Tate
右)Annihilated Confessions #2 (Black) 2007 Courtesy of the artist, doggerfisher and Haunch of Venison, London ©Nathan Coley

Turner Prize : Retrospective

歴史を知って未来を読む!
ターナー・ プライズ回顧展

英国のモダン・アートが、レベルも社会認識も米国や欧州に比べ遅れをとっていた80年代に制定されたターナー・プライズ。紆余曲折を経ながらも、世界を先導する近代アートの地となりつつある英国で、この賞が現在持つ意味とは?過去23年間の受賞者、22人の作品を集めたテート・ブリテンの回顧展で、その意義を探ってみよう。

1984 MALCOM MORLEY
ターナー・プライズ誕生の記念すべき年の受賞者は、マンハッタン在住の英国人アーティスト、マルコム・モーリー。しかし「過去12カ月で英国アート界に最も貢献したアーティスト」であることが審査基準だったため、メディアはもちろん、米国に移住してから26年間、数えられるほどしか英国に滞在していなかったモーリー自身もととまどいを隠せなかったという。
Hodgkin
©the artist
1985 HOWARD HODGKIN
ホッジキンは、インスタレーションが主流の現代アートの中で、ターナー賞を受賞した数少ない画家の1人だ。彼は賞について「アントニー・ゴームリーのようなアーティストが大衆に受け入れられるようになったのはこの賞のおかげだと思うけれど、近代アートがポピュラー・アートになっている最近の傾向は少し危険だと思う」と語る。
Gilbert & George
©the artists. Photo:
J Fernandes & S Drake
1986 GILERT AND GEORGE
英国現代アートにおいて先駆者的存在なこの2人は、アート学生時代に出会い、意気投合。当時素材を買う金がなく、体に絵の具を塗り自分たちを彫刻に見立てることを始め、それ以降、自分たちを作品に投影させてきたという。
Deacon
©the artist
1987 RICHARD DEACON
1984年にもノミネートされたスカルプターのリチャード・ディーコンは、若い観客がアートを日常的に鑑賞するようになったことにおいては、ターナー賞は多大なる貢献をしたと評価する。「この賞のおかげで、アートが急にセクシー なものに変わったんだ」とコメント。
1988 TONY CRAGG
1989 RICHARD LONG
1990 開催中止
1991 ANISH KAPOOR
世間の関心を得るに至らず、スポンサーが確保できなかったために賞を開催できなかった90年から一転し、この年からチャンネル4が完全にバックアップすることが決定。スターが司会を務める授賞式の模様がテレビ中継されると、突然国民的な一大イベントとなる。また、この年から50歳以下という年齢制限が審査条件に加えられ、当時37歳のカプールをのぞき、候補者が全員20代という前代未聞の年となった。
1992 GRENVILLE DAVEY
Whiteread
©the artist
1993 RACHEL WHITEREAD
この年、過去に人気ポップ・デュオ「KLF」として活躍していた現「Kファンデーション」が、その年の「最低のアーティスト」にターナー賞の賞金の2倍である4万ポンド(約920万円)を贈呈すると発表した。ターナー・プライズを受賞したレイチェル・ホワイトリードがこの賞にも選ばれたが、最初は賞金の受け取りを拒否。しかしKファンデーションが賞金を燃やすパフォーマンスを計画したため承諾し、全額チャリティーに寄付したという。
1994 ANTONY GORMLEY
Hirst
©the artist
1995 DAMIEN HIRST
牛を切断しホルムアルデヒト漬けにした受賞作品への賛否両論はともかく、保守的な傾向の強かった英国において、アートを一般人の会話レベルにまで持って行ったハースト。1988年、彼がまだ学生だったころに倉庫を使ってエキシビションを催し、これをきっかけにアーティスト達がオルタナティブなスペースで展覧会を企画するというスタイルが広まったということでも英国アート界に大きく貢献している。彼はターナー賞を「テートとチャンネル4の金儲けのためのメディア・サーカス」と呼ぶ。
1996 DOUGLAS GORDON
Wearing
©the artist
1997 GILLIAN WEARING
23年の歴史の中で、3人しかいない女性受賞者のうちの1人がウェアリングだ。前年の候補者が全員男性であったことに対する非難を受け、この年のノミネート4人全員が女性となり、この選択も「逆差別」と議論を呼んだ。
1998 CHRIS OFILI
1999 STEVE MCQUEEN
血のついた下着や使用済みコンドームが転がるベッドの作品で、一躍「セレブ」入りしたトレイシー・エミン。この年は受賞者よりも、彼女が受賞を逃したことの方が話題を呼んだ。結局、賞は斬新な映像作品を創り上げたスティーブ・マックイーンの手に渡った。
Tillmans
©the artists. Photo:
J Fernandes & S Drake
2000 WOLFGANG TILLMANS
ティルマンズは受賞するにあたって、英国メディアによってゲイであることとドイツ人であることを非難されるのではないかと心配していたという。しかしそれは杞憂に終わり、「英国では、成功した外国人に対して好意的なんだね」と喜びを語った。
2001 MARTIN CREED
5分おきに付いたり消えたりする照明──この全てを削ぎ落としたクリードの受賞作品に賛否両論が交わされたのはいうまでもない。ノミネートが発表され、エキシビション・スペースが与えられた時も、複数の作品を展示するようにとのプレッシャーがあったという。
2002 KEITH TYSON
Tillmans
©the artists.
2003 GRAYSON PERRY
きっとターナー賞授賞式の歴史上、最も壇上に上がることを楽しんだのがペリーだろう。自分のもう1人の人格「クレア」として、少女趣味なドレスを着て登場したペリーは、一夜にして英国で最も有名なトランスヴェスタイトとなった。「クレアとしての自分を世界に見てもらえたのは、政治的なことも含め、本当に貴重な体験だった」 という。
2004 JEREMY DELLER

Starling
©the artists. Photo:
Kunstmuseum Basel,
Martin Bühler
2005 SIMON STARLING
ドイツのライン川で見つけたという小屋は、展示の際「観客に破損される危険がある」とキュレーターから注意を受けていたというが、メディアの酷評とは反対に、観客からはこの作品がきっかけとなって創られた詩やビデオが送られて来たりと、温かい称賛を得た。スターリングは「英国の観客は昔よりも洗練され、アートに貪欲になっている」とコメント。
Starling
©the artists.
2006 TOMMA ABTS
2人目のドイツ人、3人目の女性、4人目の画家としてターナー賞を受賞したアブツ。英国の文化について「全てポップ・カルチャーに帰依しているようだけど、それは英国以外では考えられないことだ」 と語る彼女は、受賞する前は自身の作品が大衆受けするものでないためメディアの反応が怖かったと いう。

テート・リバプールのキュレーター、
ローレンスさんインタビュー

今回のテート・リバプールでのエキシビションの全てを取り仕切ったといっても過言ではない、キュレーターのローレンスさんに話を伺いました。

Laurence Sillarsさん
職業: Exhibitions and Collections Curator

──さっそくですが、4人の候補者のうち、お気に入りのアーティストはいますか。

いいえ、職業柄、特定のアーティストをひいきにすることは出来ないのです。どのアーティストに対しても平等に製作過程を助けたり、どうすれば作品をベストな状態で展示することが出来るのかを考えるのが私の仕事ですから。

──現代社会やアーティストにとって、ターナー・プライズの重要性はどういった点だと思いますか。

コンテンポラリー・アートを軸に、社会問題や政治などが討論されるのは、とても意義のあることだと思います。そしてこの賞は、アートがポップ・カルチャーの1つとして、深く人々の生活に浸透するきっかけになったのではないでしょうか。

──しかし一方で、候補者達がメディアから一種のセレブ的な扱いをされたり、過剰な議論が一人歩きしたりもしていますよね。

確かに、ターナー・プライズがアーティストに与える影響は大きいです。しかしだからといって、アーティストたちがノミネートされたいがために一般受けする作品を創ったり、話題作りのためだけに過激な作風にしたりする、ということはまずないでしょう。それに多くのアーティストにとって、賞を獲得することはもちろん、テートの広大なスペースに作品を展示すること自体が大きな魅力となっているようです。

──その年によってアート界に大きな流れがあるとしたら、2007年はどういった特徴がありますか。

全体的に、国としてのアイデンティティであったり、国際紛争、宗教、権力といった、現在の社会において重要な問題を反映した作品が多いのではないでしょうか。

──ずばり、今年の勝者を予想してください。

毎年予想しては外れているから、教えられないですよ(笑)。後は4人の審査員たちに任せましょう。今年は例年以上に悩むことでしょうね!

インフォメーション

TURNER PRIZE
期間 08年1月13日まで
オープン 火~日10:00-17:50 (12月24~26日は休館)
入場料 無料
住所 TATE LIVERPOOL Albert Dock, Liverpool L3 4BB
最寄り駅 Liverpool Lime Street駅
TEL: 0151 702 7400
Website www.tate.org.uk

TURNER PRIZE: A RETROSPECTIVE
期間 08年1月6日まで
オープン 10:00-17:40(入場は17:00まで)12月24~26日は休館
入場料 £9~11
住所 TATE BRITAIN Millbank London SW1P 4RG
最寄り駅 Pimlico駅
TEL: 020 7887 8888
Website www.tate.org.uk

●12月3日(月)にリバプールで行われるターナー・プライズの授賞式は、チャンネル4にて中継される。また、受賞者が発表される前の11月26日~29日までの期間中、同じくチャンネル4で、候補者たちのオリジナル・フィルムが放送されるのでお見逃しなく。


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