北東部
数ある英国方言の中でも、最もわかりづらいと言われるのがこのダーラムやノーサンバーランドを中心とした北東部の訛り。特にニューカッスルの英語は「Geordie」(ジョーディー)と言われ、同じ英国人でも聞き取れないほどの難易度を誇る。第二次大戦下、英国第8軍が南アフリカに駐留していた際、ジョーディーの連隊は他の連隊とは異なり、暗号を使う必要がなかったという嘘か本当かわからない言い伝えまであるほど。確かに「Divvent dee that! Hadaway!」なんて言われても、欠片かけらも理解できない……(ちなみに答えは「Don't do that! Get lost!」)。
北中部
ヨークシャーやイースト・ミッドランズを含むこの地域では、かなりきつい訛りがみられる。英国では北中部のみならず、北部訛りに対する偏見が根強く残っているが、この地域の人々は自分たちの言葉に誇りを持っていて、自らの訛りを「tyke」(タイク)と呼び、守ろうとする傾向が強いとか。ロンドン近辺では全く耳慣れない単語や、使い方が異なる言葉も多く、知らなければお手上げ状態。リーズなどで時間を聞き、おじさんが「Half past ten, love」と言っても、それは別にナンパされているわけではない。この地域では「mate」のように単なる相づちのような感覚で「love」が使われるのだ。女性に対しては「duck」もよく使われる。別にアヒルに似ているというわけではないからご安心を。
Mrs. Wilkinson(以下W): What's this?
ミセス・ウィルキンソン: これは一体何?
Billy(以下B): It's a letter.
ビリー: 手紙だよ。
W: I can see it's a letter.
W: 手紙ってことくらいわかるわよ。
B: It's me mam's. She wrote it for when I was 18, but I opened it.
B: お母さんが書いてくれたんだ。18歳になったら読みなさいって言われたんだけど、待ちきれなかった。
その他、北東部独特の言い回しもある。内緒でバレエをやっていたビリーを怒鳴りつける父親が、「Lads do football, boxing, wrestling」と言うのだが、この「lads」とは男の子のこと。一方女の子は「lasses」。ビリーの親友マイケルが、バレエを始めたビリーに対して、チュチュを着るのかと尋ねるシーンがあるが、ビリーは「They're for lasses」と答えている。またビリーが友人と別れる時に「Tara!」と声をかけるが、これは「じゃあまたね!」という意味で使われている。
Tony: Dance, little twat! No? So piss off.
トニー: ほら、踊れよ! 踊りたくない? だったらとっとと失せろ!
He's not doing any more fuckin' ballet.
こいつはもうバカげたバレエなんかやらないんだからな。
Go near him again, I'll smack you, you middle-class cow.
いいか、またこいつに近づいてみろ。ぶちのめしてやるからな、中流階級のバカやろう。
W: You know nothing about me, you sanctimonious little shit!
W: 一体、私の何を知っているっていうの、独り善がりのバカがきが!
原題の「THE ENGLISHMAN WHO WENT UPA HILL BUT CAME DOWN A MOUNTAIN」、これには大きな意味がある。同姓の多いウエールズでは、「鍛冶屋ジョーンズ」、「葬儀屋ジョーンズ」など、姓にあだ名を付けて呼ぶことが多い。とてつもなく長い呼び名の祖父を持つ少年が、その呼び名の由来に興味を持ったことからこのストーリーは始まるのである。