あの人は誰?有力政治家たち
その顔触れ辞任の副首相、新顔党首、おなじみのあの政治家
テレビにたびたび登場するものの、「誰だっけ?」と思う政治家はいませんか。今回は最近話題の面々のプロフィールを見ていきましょう。
筆頭に挙げられるのが、アンジェラ・レイナー氏(45)です。赤褐色のロングヘア―が印象的な元副首相(Deputy Prime Minister)兼元労働党副党首。マンション購入をめぐり、税金を過少納付していた事実が発覚し、窮地に陥りました。高騰する住宅の問題に対する行政の責任者となる住宅・コミュニティー・地方自治相も兼務していたので、批判が高まりました。5日、購入時に適切な税務助言を求めなかったことで閣僚規範に違反したとする判断が出て、全ての職務を辞任。キア・スターマー労働党政権にとって大きな打撃となりました。というのも、英北部マンチェスターで生まれたレイナー氏は16歳で妊娠して学校を中退し、ケア・ワーカーとして勤務後、10年前に下院初当選、副首相という英政界のナンバー2にまで上り詰めた人物だったからです。恵まれた家庭の出身ではなくても、何事も努力すれば成し遂げられる可能性を体現していたのです。労働組合の活動家としても知られ、労組が基盤となる労働党にとって「労働党の星」でした。はっきりした物言いや目立つ服装もトレードマークで、元公訴局長であまり面白みがないスターマー首相とは正反対でした。
現役時代のレイナー氏に匹敵する目立つ存在といえば、英国の欧州連合(EU)離脱のきっかけを作った政治家ナイジェル・ファラージ氏(61)を挙げないわけにはいきません。政党支持率で首位となる右派ポピュリスト政党、リフォームUKの党首です。英南東部ケント生まれ。ロンドン金属取引所のトレーダーとして働き、自分自身もかつては「支配者層」の一部だったのですが、庶民の味方として支持を集めるようになりました。元欧州議会議員で、昨年夏の総選挙で初当選したばかり。しかし、政界での活動は長く、機を見るに敏なその才覚は天才的です。難民申請者の流入に対する国民の不安感を察知し、リフォームUKは厳格な国境管理を訴えています。「英国を再び偉大に」を合言葉に政権取得を目指しています。下院総議席650のうちリフォームUKはまだ4議席ですが、どの世論調査でも首位を維持しているため、数年以内の政権取得の確率は「ゼロではない」と言われています。
9月2日、環境政党・緑の党の党首として選出されたのがザック・ポランスキー氏(42)です。俳優や催眠術師を経てロンドン議会議員に。ユダヤ系で同性愛者であることを公表し、「環境ポピュリズム」を掲げています。全国的な知名度は低いものの、ファラージ氏の手法を参考に感情に訴える手法で支持拡大を狙います。
そしてポランスキー氏が共闘の可能性をにおわせているのが、政治の最前線から消えたかと思われていた、元労働党党首ジェレミー・コービン氏(76)です。ロンドン生まれの同氏は1983年から下院議員。筋金入りの社会主義者で、労働党左派の代表者の一人でした。2019年総選挙の大敗で辞任し、反ユダヤ主義問題で党から除名されましたが、今年7月に新党結成を模索していることが判明。これにより、労働党の伝統的な左派の支持基盤をさらに分断することになるかもしれません。
そして、ピーター・マンデルソン元駐米大使(71)も「話題の政治家」となりました。1997年の労働党政権発足に大きく貢献した人物で、トニー・ブレア政権(97~2007年)で何度か入閣しますが、スキャンダルに見舞われて辞任。ゴードン・ブラウン政権(07~10年)ではビジネス相を歴任し、今年2月には駐米大使に就任しました。しかし、少女買春などの罪で起訴され自殺した米富豪ジェフリー・エプスタイン氏との親交が改めて問題視され、11日、被害者への配慮から解任されました。マンデルソン氏の大使任命を推した首相の責任も問われています。スターマー政権は巻き返しを図れるでしょうか。
Deputy Prime Minister(副首相)
首相不在時に国内外の公式行事や下院での職務を代行し、政策実行や国際課題を支える役割を担う。雇用権や労働の正当な報酬に関する政策も所管する。現職はデービッド・ラミー下院議員。英国初の副首相就任は1942年、労働党党首クレメント・アトリーだった。当時は戦時内閣で、首相は保守党党首ウィンストン・チャーチル。