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Fri, 19 January 2018

メリル・ストリープさん主演
サッチャー元首相の伝記映画公開へ

英国史上、最も有名な首相と言えば、ウィンストン・チャーチル氏などとともにまず真っ先に名前が挙がるのが、マーガレット・サッチャー氏ではないだろうか。自らを「確信の政治家」と呼んで大胆な政策を実行し、非難と称賛の両方を浴びた同氏であるが、この度、その伝記映画が制作され、話題を呼んでいる。

映画「The Iron Lady」
(邦題:マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙)

マーガレット・サッチャー氏が、英国初の女性首相の座に上り詰めながら、最後には失脚するまでの物語を、フォークランド紛争などのエピソードを交えながら、老いた現在の同氏が回想する形で描く伝記映画。

キャスト  
マーガレット・サッチャー メリル・ストリープ
デニス・サッチャー ジム・ブロードベント
キャロル・サッチャー オリビア・コルマン
ジェフリー・ハウ アンソニー・ヘッド
マイケル・ヘーゼルタイン リチャード・E・グラント
 
スタッフ  
監督 フィリダ・ロイド(映画「Mamma Mia !」)
脚本 アビ・モーガン(BBCドラマ「The Hour」)
プロデューサー ダミアン・ジョーンズ(映画「The History Boys」)
 
公開日  
英国 2012年1月6日
日本 2012年3月16日
 
受 賞  
ニューヨーク批評家協会最優秀女優賞(メリル・ストリープ)(2011年11月29日)

マーガレット・サッチャー氏略歴


the Margaret Thatcher Foundation

1925年10月13日、イングランド東部リンカンシャー州のグランサム(Grantham)という街に生まれる。旧姓ロバーツ。父親アルフレッド・ロバーツ氏は食品雑貨店を経営し、マーガレットは店の2階に住んでいた。奨学金を得て地元のグラマー・スクール(選抜制の公立学校)に入学。更に1943年、やはり奨学生としてオックスフォード大学サマーヴィル・カレッジに入学し、化学を学ぶ。在学中は、オックスフォード大学保守党協会の会長を務める。

1947年に大学卒業後、民間企業で研究者として働く。食品会社でアイスクリームの乳化剤開発などを手掛けた。1950年2月及び1951年10月の総選挙で、ケント州の選挙区から保守党の公認候補として立候補するも落選。1951年12月、裕福な実業家デニス・サッチャー氏と結婚。デニス氏は、弁護士資格取得のため勉強する妻を経済的に支えた。1953年、男児と女児の双子を出産。

1959年10月の総選挙でロンドン北部フィンチリーの選挙区から立候補し、当選。1961年、年金・国民保険省の政務次官に任命される。1970年、新たに発足したヒース政権で教育・科学相に就任。7〜11歳の学校児童への牛乳の無料配布制度を廃止し、批判を浴びた。1975年2月、保守党の党首選で当選し、党首に就任。更に1979年5月、保守党を総選挙で勝利に導き、英国初の女性首相となる。

11年間の在任期間中、経済政策では、インフレ抑制のための高金利政策、公共支出と財政赤字の削減を進めた。また、国営企業の民営化、労働法の改正による労働組合改革、公営住宅の払い下げによる住宅所有の奨励、ロンドン・カウンティー・カウンシルの廃止などの政策を実行したほか、フォークランド諸島の領有権をめぐってアルゼンチンと争い(フォークランド紛争)、勝利した。

政権末期の1990年、人頭税(poll tax)の導入が国民の強い反発を招き、ロンドンで大規模な暴動が発生する。1990年11月、サッチャー氏の欧州単一通貨に関する政策に反発し、ジェフリー・ハウ副首相が辞任。サッチャー政権にとって大きな打撃となる。続いて元国防相のマイケル・ヘーゼルタイン議員の党首立候補をきっかけに行われた保守党党首選の第1回投票で十分な票を獲得できなかったことで、首相を辞任。

首相辞任後は、2年間、下院の一般議員を務めたほか、回想録執筆などを行う。1992年、上院議員に任命された。

豪華な出演・制作陣で話題に

年明けすぐに公開されるマーガレット・サッチャー元首相の伝記映画「The Iron Lady(邦題:マーガレット・サッチャー鉄の女の涙)」が話題になっている。サッチャー氏を演じるのは、「ソフィーの選択」(1982年)などで2度のアカデミー賞受賞経験がある米国人ベテラン女優のメリル・ストリープさん。彼女を支えた忠実な「伴侶」であった夫デニス・サッチャー氏は、英国人の大物俳優、ジム・ブロードベントさんが演じている。監督は、ストリープさん主演のミュージカル映画「マンマ・ミーア!」を手掛けた英国人フィリダ・ロイド氏である。

国営企業民営化など実行

サッチャー氏が首相を務めたのは1979〜1990年。11年半にわたる政権期間中、国営企業の民営化、労働法の改正による労働組合の改革、公営住宅の払い下げによる住宅所有の奨励などの大胆な政策を実行し、経済面では、インフレ抑制のための高金利政策、公共支出と財政赤字の削減を進めた。サッチャー氏の政策については、70年代後半、労働党政権下で、財政難や公務員による大規模ストのため危機的状況に陥っていた英国を立て直したとの評価がある。一方で、炭鉱閉鎖などで大量の失業者を生み出したこと、特にイングランド北部の製造業の衰退を招いたことなどは、いまだに強い批判を浴びている。このように、首相としてのサッチャー氏は、政権が終わって20年以上経った現在でも、賛否が分かれる存在である。

認知症の元首相の描写に批判

映画の話に戻ると、こちらもサッチャー氏と同様、称賛と批判の両方の意見が飛び交っている。まず、ストリープさんの演技については、英メディアがこぞって絶賛している。彼女は、作品ごとに役に必要な英語の訛りを完璧に習得することで知られているが、今回も、サッチャー氏に生き写しと言えるほど同氏の話しぶりを見事に再現することに成功している。ストリープさんは既に、この役で、来年のアカデミー賞主演女優賞受賞が本命視されている。

一方、サッチャー氏の友人や、かつて一緒に同氏と働いた保守党の元政治家などは、同氏を老いさらばえた人物として描いていることに対し、不快感を示している。映画は、認知症になった現在のサッチャー氏が、過去を回想する形で描かれており、死んだはずの夫と同氏が「会話」をするシーンなどが繰り返し登場する。サッチャー氏の友人などは、こうしたシーンを含む映画を同氏の存命中に公開することは侮辱的であるとして批判している。サッチャー氏のこのような描き方について、ストリープさんは、マスコミのインタビューで、「正しい方法でやるのであれば、問題ないと判断した」と説明している。

その政策を支持するかどうかに関わらず、英国史上、最も大きな影響力を持つ首相の一人であったことは間違いないサッチャー氏。大女優の名演技によってその存在がいかにスクリーンに蘇ったかを見るだけでも十分に楽しめるであろうし、現役時代のサッチャー氏が記憶に残っている人は、老いた往年の宰相の描かれ方について考えるのも興味深いであろう。映画公開は来年1月6日からである。

Margaret Thatcher: The Long Walk to Finchley(2008)、
Margaret (2009)

マーガレット・サッチャー元首相を題材としたテレビ・ドラマ。「Margaret Thatcher: TheLong Walk to Finchley」は、困難を乗り越えながら、念願の下院議員当選を果たす若きサッチャーの姿を描く。BBC4で2008年に放映された。「Margaret」は、1990年にサッチャー氏が首相の座を失うまでの約1カ月間の様子を描くドラマで、2009年、BBC2で放映された。サッチャー氏を題材としたテレビ・ドラマは、ほかに「Thatcher: The Final Days(1991)」などがある。

(猫山はるこ)

 
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