ロンドンのゲストハウス
Mon, 22 October 2018

読者とともに生きた作家
ディケンズ生誕200年を祝う

「クリスマス・キャロル」や「大いなる遺産」などの名作の著者として知られるのが、大英帝国が大きな発展を遂げたヴィクトリア朝を代表する作家チャールズ・ディケンズ。来年2月には生誕200 周年を迎え、英国各地で様々なイベントが開催される。今週は、ディケンズの生涯や作品群を振り返ってみた。

「生誕200年」を記念するイベント・関連ウェブサイト

「ディケンズ2012」www.dickens2012.org
ディケンズの生誕200周年を記念する各種のイベント、テレビ番組の放映予定などあらゆる情報を集約したウェブサイト
「ディケンズのロンドン」展
(ロンドン博物館、2012年6月10日まで)
www.museumoflondon.org.uk/London-Wall/
「チャールズ・ディケンズ生誕地での祝賀会」
(ポーツマス、2012年2月5日〜12日)
www.portsmouthmuseums.co.uk/events.htm
「チャールズ・ディケンズ・レクチャー・シリーズ」
(大英博物館、2012年2月21日〜24日)
www.bl.uk/learning/tarea/secondaryfehe/
dickenslectures/dickenslectureseries.html
英国人俳優サイモン・キャロウ著
「チャールズ・ディケンズと世界の大きな劇場」の朗読会

(ニュー・シアター・ロイヤル劇場、ポーツマス、2月7日)
www.newtheatreroyal.com/index.php/whats-on/simon-callow
ディケンズの映画回顧展(BFIサウスバンク、2012年1月〜3月)
www.bfi.org.uk
BBCのディケンズ特集(2012年2月まで)
www.bbc.co.uk/mediacentre/mediapacks/dickens

映像化されたディケンズの主な作品

タイトル 連載開始 内容 主な映像作品
「オリバー・ツイスト」
(Oliver Twist)
1837年 養育院で生まれた孤児オリバー・ツイストの物語。養育院を出た後に悪党フェイギン率いる窃盗団に捕まるなどの苦難を経ながらも、主人公が成長を遂げていくまでを描いた著者の出世作。 20世紀の巨匠デービッド・リーン監督による映画(1948年)が著名だが、2007年放映のBBCのテレビ・シリーズでは、日本映画「ラスト・サムライ」出演のティモシー・スポールが不気味なフェイギンを演じて好評を博した。
「クリスマス・キャロル」
(A Christmas Carol)
1843年 冷酷無比な商売人スクルージが、クリスマス・イブに精霊たちの訪問を受け、心を入れ替える。 ミュージカル映画「スクルージ」(1970年)で主人公を演じた名優アルバート・フィニーが、ゴールデン・グローブ賞を受賞。
「デービッド・コパーフィールド」
(David Copperfield)
1849年 少年コパーフィールドが様々な苦労をしながら作家として大成していく様子を描いた物語。自伝的要素が強い。 映画、テレビ・ドラマともに製作されているが、1999年放映のBBC版では、「ハリー・ポッター」シリーズのダニエル・ラドクリフが若きコパーフィールドを演じた。
「荒涼館」
(Bleak House)
1852年 賢明な少女エスターが「荒涼館」の持ち主として切り盛りする中で遭遇する出来事を扱った社会劇。探偵小説としての一面も。 2005年、BBCがこの長編小説をテレビ・ドラマ化し、15回に分けて放映した。
「リトル・ドリット」
(Little Dorrit)
1855年 父が収監されていた債務者監獄マーシャルシーで生まれた主人公のドリットが、遺産を手にした後も心清く生きていく様子を描く。 2008~09年にかけてBBCで放映されたシリーズでは、けなげなドリットを若手女優クレア・フォイが演じた。
「二都物語」
(A Tale of Two Cities)
1859年 フランス革命の時代に生きた、青年ダーニーとカールトン、そして無実の罪で牢獄に入れられた女性ルーシーの恋物語。 名優ダーク・ボガード、クリストファー・リーらが主演した映画(1958年)には、英国を代表する俳優たちが勢ぞろいしている。
「大いなる遺産」
(Great Expectation)
1860年 孤児のピップが何者かから多額の遺産をもらい、その後ロンドンで紳士修行を始めることになる。遺産を提供した人物が誰であるかは、物語の最後に判明する。 デービッド・リーン監督がモノクロ撮影した映画(1946年)が、アカデミー賞も2部門で受賞した。


苦難を強いられた少年時代

今年もいよいよクリスマスの時期となった。この季節になると手に取りたくなる小説の一つが、けちで意地悪な商売人スクルージが精霊との出会いを通して心を入れ替えるまでの模様を描いた作品「クリスマス・キャロル」。この名作を著した小説家が、世界的に有名な英国人作家であるチャールズ・ディケンズだ。2012年2月には、彼の生誕から200周年を迎える。

ディケンズが生まれたのは、イングランド南部ハンプシャー州ポーツマス郊外の街であった。海軍の会計士を父に持つ、中流階級の家庭の長男として生を受けるも、後に家族の負債が急増。1820年代初期、一家は破産状態に陥り、ディケンズは12歳で靴墨工場に働きに出掛けることになった。

その後、法律事務所で働き出したディケンズは、速記法を学んでジャーナリストを目指すようになる。日刊紙「モーニング・クロニクル」の記者となったのは22歳ごろのこと。記者としての仕事の合間に「ボズ」という筆名でエッセイを書き始め、これらのエッセイを集めた作品が出版されるようになると、彼は夕刊紙「イブニング・クロニクル」紙編集長の娘キャサリン・ホガースと結婚した。

自身の雑誌に著作を発表

ディケンズが長編小説「オリバー・ツイスト」を自分が編集する雑誌に発表したのは1837年であった。その数年後には「クリスマス・キャロル」を出版。その後も次々と新作を発表し、国民的な人気作家となっていく。

ディケンズの作品は、リアリズム、喜劇的表現、優れた散文表現、性格描写、社会評論では群を抜くと言われているが、過度に感傷的と批判する人もいる。彼の小説の典型的なパターンは、貧しい少年や少女の主人公が幾多の事件を乗り越えて、最後は幸せをつかむというもの。幼少時の貧困の体験や、その後自力で成功を遂げるという点など、彼自身の人生と重なる部分が多いようにも見える。また、たとえ暗い主題を扱っていても、楽天主義とユーモアが物語の隅々に顔を出すので、読者に充実した読後感を与えてくれる。

底辺層に目を向けた人道的な作風

ディケンズは、英国が大きく発展を遂げた一方で、国内における貧富の差が拡大していったヴィクトリア朝時代を生きた。晩年のディケンズが目を向けたのは、そんな時代から取り残された、社会の底辺層。小説やエッセイを通じて、貧困の撲滅や債務者監獄の環境改善などを主張した。

1870年6月9日、ディケンズはケント州の邸宅で、脳卒中の発作に見舞われた。58歳の年齢で息を引き取ったのは、その翌日。遺体は、ウェストミンスター寺院に設けられた、詩人たちのための敷地に埋葬された。

小説を書くばかりか、朗読会で読者と直接つながる場を持ち、言論人として様々な社会問題にも積極的に関わったディケンズ。英国に生きる私たちにとっては、生誕200周年を記念するイベントや彼の著作を通じて、改めて英社会に存在する貧富の差について考えたり、英国人独特のユーモア精神を学び直す良い機会になりそうだ。


Christmas carol

クリスマス・キャロル(=クリスマス聖歌)。「キャロル」には元々、「踊りのための歌」という意味があるが、共同体の「祝歌」、あるいは宗教儀式などにおいて歌われる賛美歌の一種にもこの言葉が用いられるようになった。クリスマス・イブの夜に歌うのがクリスマス・キャロルで、「清しこの夜」「もろびとこぞりて」などの歌が日本でも著名。チャールズ・ディケンズ作の「クリスマス・キャロル」の冒頭部分で紹介されているのが、1830年代に出版された「世の人忘るな」(GodRest Ye Merry,Gentlemen)というクリスマス・キャロルである。

(小林恭子)

 
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