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Thu, July 28, 2016

BBC に取り上げられた日本のポルノ産業と春画の違い

硬派で鳴らすBBC放送の深夜報道番組「ニューズナイト」で、日本のポルノ産業で活躍する若者たちが取り上げられた。毎年2万本ものAV(アダルト・ビデオ)が東京で撮影されているというのには驚いた。東京はポルノの首都だという。オランダの飾り窓には妖艶な女性が立つが、イベント用に設置された飾り窓では、上半身を露わにしたイケメンのAV男優に乙女たちがカメラ内蔵型スマートフォンを片手に殺到している。

「優しくしてくれない」「物足りない」と現代の日本男児に不満を抱く女性たちがAV男優にドキドキしたり、うっとりしたりする気持ちを求めてサイン会に参加して、DVDを購入していく。30秒間限定で憧れのAV男優と会話を楽しめる。女性の5人に1人がAVの愛好者という統計もあるそうだ。「エロメン三銃士」と呼ばれる一徹さんは35歳、有名私立大学の出身で、家庭を持っている。

AV女優の沖田杏梨さん(27)は英国で暮らしたこともあり、BBCのインタビューにうらやましいほど流暢な英語で答えていた。中国のミニブログ「微博」に勉強中の中国語で書き込み、100万人を超えるフォロワーを獲得。ひと昔前までAVと言えば、少し後ろめたい感じがしたが、今は開放的、アジアに広がる新しい成長産業といった空気さえ感じられるのだ。

杏梨さんのブログをのぞくと、英語で「女という性がなぜ欲望の対象となり、商品化されなければならないのですか」という質問が寄せられていた。これは英国でもよく聞かれる意見だ。杏梨さんは「国境を超えて人々はエロチックなものを好みます。これがポイントです。私は恵まれているのかもしれないけれど、幸せ。日本と海外の架け橋になれればと願っています」と答えている。中国でも杏梨さんのファンの約4割は女性だという。日本では働く女性が増え、男という性の商品化も進んでいるようだ。

 

日本のポルノ産業は時代を超えて、世界に衝撃を与えてきた。鎖国していた江戸時代から「ポルノ先進国」だったのは歴史的な事実である。ロンドンの大英博物館で開かれた「春画 日本美術における性とたのしみ」には予想4万人をはるかに上回る8万7893人が訪れた。愛と性の悦びを大胆に表現した日本の春画は幕末に黒船で来航した米国のペリー提督に贈られ、マネやモネなどの印象派、ピカソ、ロダン、ロートレックらに影響を与えたことで知られる。

キリスト教文化では肉体は恥とされ、ルネサンスでギリシャやローマの古代文化が見直された。それも行き詰まったところに開国したばかりの日本から浮世絵や春画が流れ込んだ。春画に魅了されたマネは裸婦を描き、社会の批判を浴びた。当時、英国を始め西洋は堅苦しい現実と道徳に縛られていた。性の交歓を謳歌し、自由にその姿を描ける日本は何と開放的で進んだ国なのだという誤解が広がったともいわれている。

 

大英博物館の春画展は、日本以上にジェンダーや性の商品化に厳しい英国人女性にも好意的に受け止められたようだ。女性向けに歌舞伎役者の肖像と性器を描いた春画では、陰毛は役者と同じ髪型に整えられ、舞台化粧の隈取りのような血管が魅力的に脈打つ。春画には暴力的で強制的な性は出てこない。男性と女性の満ち足りた愛と性のファンタジーが描かれている。それが時代を超えて西洋で支持された理由だった。エロメン男優と女優による新しいタイプのAVが人気を集める理由はそこら辺にある。しかし、毎年量産される2万本のAVの大半は暴力的で、女の性を商品化したものであるのは間違いない。一徹さんや杏梨さんはほんの一握りの成功者に過ぎないのだ。

インターネット上で無料のAVが氾濫、撮影時間は次第に長くなり、出演料はどんどん安くなると杏梨さんは語る。AVに出演しているのは将来有望な若者、生身の人間である。長引くデフレでバイト料が減り、学業と両立できなくなって時間給の良いAV業界に飛び込む女性も少なくないという。「失われた20年」といわれる経済無策が若者の将来と日本の未来を蝕んでいるが、その一方で失業率は4%を切って3.7%まで下がっている。この矛盾をどう説明すればいいのか。ほのぼのさせられた春画展と異なり、BBCのニュスを見ていて無性に悲しくなった。

 
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木村正人氏木村正人(きむら・まさと)
在英国際ジャーナリスト。大阪府警キャップなど産経新聞で16年間、事件記者。元ロンドン支局長。元慶応大法科大学院非常勤講師(憲法)。2002~03年米コロンビア大東アジア研究所客員研究員。著書に「EU崩壊」「見えない世界戦争」。
ブログ: 木村正人のロンドンでつぶやいたろう
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