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Mon, 22 October 2018

極右民族主義者の模範は「日本」
ノルウェー乱射事件と欧州の極右勢力

ノルウェーで発生した乱射事件で77人を殺害したブレイビク被告は、その初公判で、多文化主義とイスラム系移民から同国を守るための行動であったと供述した。反イスラム主義を唱え、英極右勢力との関係を有するとみられるが、その一方で、犯行に際してはアルカイダから犯行着想を得たことを説明するなど、錯綜しているとも解し得る同被告の極右思想が明るみになってきた。

アンネシュ・ブレイビク被告
アンネシュ・ブレイビク1979年生まれ、ロンドン出身、ノルウェーの首都オスロ育ち。外交官の父と看護師の母が1歳のときに離婚。16歳のときに、スプレー缶を使った落書きでノルウェー警察により拘束される。  
99年コソボ戦争時に、ノルウェー政府のセルビア爆撃協力に反論を唱える。同年から2004年まで、移民政策に反対を示す「進歩党」に所属。デンマークで05年に、スウェーデンで は07年に発生したムハンマド風刺漫画掲載問題に関し、両政府及びノルウェー政府のイスラム諸国に対する弱腰姿勢を批判。  
同被告のフェイスブックには、宗派が「保守的キリスト教徒」、趣味は「ボディー・ビルディング」と「フリーメイソンリー」と記されていた。

欧州の主要な極右民族主義政党

英国 「英国国民党(BNP)」ニック・グリフィン党首
ノルウェー 「進歩党(NP)」シーヴ・イェンセン党首
オランダ 「自由党(PVV)」ヘルト・ウィルダース党首
ベルギー 「フラームス・ベランフ党(VB)」フランク・バネック党首
スウェーデン 「スウェーデン民主党(SD)」ジミー・オーケソン党首
フィンランド 「真のフィンランド人党(PS)」ティモ・ソイニ党首
フランス 「国民戦線(FN)」マリーヌ・ルペン党首
ドイツ 「国家民主党(NPD)」ホルガー・アプフェル党首

ニック・グリフィン党首、マリーヌ・ルペン党首、シーヴ・イェンセン党首

ブレイビク被告と関連があるとされる英極右勢力

反イスラム主義団体「English Defence League(EDL)」
トミー・ロビンソン代表(スティーブン・レノンから改名)。ロンドン近郊ルートンを本拠地とする。英国内に18師団あり、各地でデモ抗議を不定期に開催。英サッカーのフーリガンとも関連。

ネオナチ団体「Combat 18」
英歌手、故イアン・スチュアート・ドナルドソンなどによるネオナチ音楽を推進する団体「Blood and Honour」の関連組織。ヒトラーを崇拝し、欧州における非白人住民や移民の殺害に関わっているとされる。

ネオナチ団体「Column88」
1945年ごろ結成、80年代に解散。英国海兵隊特殊部隊から軍事訓練を受けていた民兵組織。現在、欧州各国で地下組織として活動しているともされる。

反イスラム主義者の手本はアルカイダか

ウトヤ島
乱射事件発生の約1時間後に撮影された、
事件現場となったウトヤ島の様子

16日、昨年7月に発生したオスロ政府庁舎爆弾テロと、同近郊のウトヤ島での銃乱射事件の初公判で、アンネシュ・ブレイビク被告(33)は、ノルウェーの文化と民族性を守るための正当防衛であったとし、無罪を主張した。同被告は、犠牲者77人の名前が読み上げられても表情ひとつ変えなかったが、反イスラム主義を象徴する自作のプロパガンダ・ビデオが法廷のモニターに映し出されると、初めて感情を露わにし、唇を震わせながら涙を拭いた。  

反イスラム主義を掲げる同被告だが、国際テロ組織アルカイダが世界で最も成功した過激派で、欧州の民族主義過激派は多くを学ぶことができると述べるなど、イスラム過激派思想に触発された可能性も示唆した。欧州からのイスラム教徒排斥を訴える同被告の基本思想は、アルカイダが主張するイスラム圏からの欧米人排斥を模範にしているとみられるが、テロ実行後、取り囲まれた警察に即降伏し動機を供述するなど、多くが殉教を選ぶイスラム過激派とはその性質が異なる。

英極右勢力に送られた「マニフェスト」

テロ犯行の約1時間半前、ブレイビク被告は、1516ページにまとめた自作のマニフェスト「2083年: 欧州独立宣言」を英国内の極右勢力にメールで送信していた。送信先の中には、極右政党「英国国民党(BNP)」支持者や反イスラム主義団体「English Defence League(EDL)」などのメンバーがいたとみられる。メールを受け取った者の中で、同テロ実行を知っていた者がいるか否かは不明であり、また同マニフェストから、EDLのメンバー600人が交流サイト「フェイスブック」に同被告を登録していたことのほか、2010年3月、EDLが主催したオランダ人極右議員支援デモに同被告が参加していたことが確認されている。  

ブレイビク被告は、中世の「テンプル騎士団(下記「関連キーワード」)」による秘密命令に従い、イスラム教徒と文化的マルクス主義から欧州を守ることが使命であると信じているとみられ、同マニフェストには、2002年4月、欧州8カ国のテンプル騎士団代表が、新たな使命に向けた会合をロンドンで秘密裏に設けたことも記されている。しかし、テロ専門家は、同マニフェストに記された内容がすべて事実であるとは限らないとし、「ブレイビク被告の妄想」である可能性も指摘する。

極右勢力の手本は単一文化国家「日本」

「単一文化が保たれている完全な社会」として日本や韓国を例に挙げたブレイビク被告の思想は、英国の極右政党であるBNPのニック・グリフィン党首のそれと重なる。実際、BNPの総選挙マニフェストには「英国は、日本や韓国、シンガポールのように国益に沿った国家経済・産業の運営を経済モデルとすべき」と示されている。また同党首は、2008年に行われた本誌とのインタビューで、国民性を保ちつつ国家の経済発展を遂げた日本の排他的な移民政策が模範であるとし、「日本も少子化問題を抱えているようだが、英国の移民問題に比べたらずっとましだ」とも述べていた。欧州で最も悪名高い極右民族主義者の2人が、ともに日本を模範としていることは興味深い。

Knight Templar

「テンプル騎士団」。正式名称は「キリストとソロモン神殿の貧しき戦友たち」。中世十字軍の活動にならい、聖地エルサレムの防衛という役割を担う騎士修道会としてフランスで1128年に設立。メンバーは私有財産を寄贈していたことから、その豊かな資金源を背景に強力な軍事組織及び金融機関として発展した。1307年、仏フィリップ4世が資産目当てでテンプル騎士団のメンバーを逮捕。1312年、同国内における同団の活動を禁止。他方、その後も欧州諸国では名前を変更するなどして活動が継続した。英国に起源を持つ男性秘密結社「フリーメイソンリー」も同団の派生組織であるとする説がある。

(吉田智賀子)

 
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