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Thu, 18 January 2018

経済への損失は年間約8億ポンド
英国で増加する金属の盗難事件

ヒンチンブルック病院について

街中に設置されている歴史的人物の銅像や、マンホールの蓋、排水路の蓋などが盗まれる事件が今、英国内の様々な地域で発生している。これらは、英国で現在大きな問題となっている金属盗難事件(metal theft)の一例であり、政府や自治体は対策を急いでいる。

最近発生した金属盗難事件の例

2011年10月 イングランド東部リンカーン市にある中世の遺跡「ビショップス・パレス」の屋根の鉛の部分が盗まれる。「ビショップス・パレス」は、国内に残る最も重要な中世の遺跡の一つであり、イングリッシュ・ヘリテージの保護対象になっている。
2011年10月 イングランド南西部ウィルトシャー州の街ティドワースで、戦没者記念碑に設置されていた兵士のブロンズ像が盗まれる
2011年10月 イングランド北東部ニューカッスル市で、市中心部のレイン・アート・ギャラリーの外に設置されていたトーマス・ヘザーウィック氏製作のインスタレーションのブロンズ部分が盗まれる。
2011年12月 イングランド南東部ケント州の教会で、真ちゅう製の祭壇用十字架、花瓶、聖書台などが盗まれる。
2011年12月 ウェールズ・カーディフ市近郊のNHS(国民医療制度)の病院で、バックアップ用発電機に使われていた銅ケーブルが盗まれ、手術 がキャンセルされる騒ぎとなる。
2011年12月 ロンドン南部ダリッジ地区の公園で、世界的に有名な彫刻家バーバラ・ヘップワース氏のブロンズ製の作品が盗まれる。
2011年12月 イングランド北西部マンチェスター市のマンチェスター大聖堂で、 祭壇用の銀製十字架が盗まれる。
ビショップス・パレス
ビショップス・パレス
マンチェスター大聖堂
マンチェスター大聖堂

数字で見る英国の金属盗難の現状

年間7億7000万ポンド
(約927億円)
金属盗難事件による英国の経済的損失(i)
2000件 2010年度の英国における金属盗難事件の発生件数
(ただし北アイルランドを除く)(ii)
1万5000トン 英国内で1年間に盗まれる金属の総重量(iii)
995件 2010年4月1日〜2011年3月末に発生した鉄道の送電線盗難事件の件数 (iv)
1日あたり平均10件 教会での金属盗難事件発生件数(v)
10人 過去1年間に金属盗難を試みて死亡した人の数(vi)

(i) 警察幹部協会(ACPO) (ii) 英国交通警察(BTP) (iii) BBC (iv) Network Rail
(v) 保守党のトニー・ボールドリー議員による2011年11月の国会での発言
(vi) House of Commons Library

背景に金属の価格高騰

現在、英国では、金属の盗難が大きな問題になっている。国内各地で、鉄道の送電線、電話やインターネットのサービス提供に使われる通信ケーブル、マンホールの蓋、排水路の蓋などが盗ま れる事件が多発。英国交通警察(BTP)によると、英国における属盗難事件の発生件数は、2009年度の1500件から、2010年度には2000件(*)にまで増加した。背景には、海外での需要増による金属の価格高騰がある。例えば銅の価格は、2009年以降、約2倍に跳ね上がっており、現在は1トンで5000ポンド(約60万円)以上に上る。犯罪者たちは、こうした状況を利用して、盗んだ金属を金属回収業者に売り、利益を得ている。冒頭に挙げた以外にも様々なものが標的になっており、墓石や戦没者記念碑に貼り付けられた死者の名前を記した金属板、教会の屋根の鉛で造られた部分、街に設置された歴史的人物の銅像などが盗まれている。警察幹部協会(ACPO)によると、金属盗難事件による英国の経済的損失は、年間7億7000万ポンド(約927億円)にも達する。

盗難対策でプラスチックの道路標識も

こうした状況を受け、企業や自治体などは、様々な方法で金属盗難対策を実行している。「スマートウォーター」と呼ばれる盗難対策商品(関連キーワード参照)は、通信大手BTなど多くの企業や団体が利用。また、従来は金属を使っていた物に、盗難防止のためほかの素材を利用している例もあり、例えばオックスフォードシャー州では現在、ファイバーグラス製のマンホールの蓋を試験的に使用している。また、道路標識を、従来の金属性からプラスチック製のものに交換している自治体も多い。

現金払いの金属買い取りが違法化へ

一方、法律面では、金属回収業者の規制を強化する動きが出ている。金属回収業者規制の現行法は、「1964年金属回収業法」であり、業者に対し、自治体への登録などを義務付けている。しかし、盗難事件の増加を受け、メイ内相は1月下旬、現在国会で審議中の法案(**)を修正し、①金属回収業者による現金払いでの金属買い取りを違法化 ②1964年法の規定に違反した場合の罰金を大幅増額——という2つの措置を実行することを明らかにした。①は、金属回収業者が現金払いで金属を買い取る場合、売主に、身分証明書や金属の合法な所有者であることを示す証明書などの提示を求めないことが多く、そのことによって、盗難された金属の処分がより容易になっている現状を受けた措置である。 これに対し、「英国金属リサイクル協会(BMRA)」は、現金払いの買い取りを禁じても、自治体に未登録の闇回収業者に金属を売る人が増えるだけであると主張している。また、労働党のクーパー影の内相は、盗難金属を買い取る回収業者を取り締まるための新たな権限を警察に与えるよう求めている。BTPによると、金属の価格高騰は少なくとも2015年まで続くと考えられており、更なる措置の実行も検討されるべきかもしれない。

これに対し、「英国金属リサイクル協会(BMRA)」は、現金払いの買い取りを禁じても、自治体に未登録の闇回収業者に金属を売る人が増えるだけであると主張している。また、労働党のクーパー影の内相は、盗難金属を買い取る回収業者を取り締まるための新たな権限を警察に与えるよう求めている。BTPによると、金属の価格高騰は少なくとも2015年まで続くと考えられており、更なる措置の実行も検討されるべきかもしれない。

(*) BTPの管轄外である北アイルランドを除く。
(**) 「リーガル・エイド、判決、犯罪者の懲罰法案」。

SmartWater

「スマートウォーター」とは、識別コードが組み込まれた無臭・透明な液体で、犯罪防止・解決 を目的とした商品。イングランド中西部シュロップシャー州に拠点を置くスマートウォーター・ テクノロジー社が販売。対象物に塗布しておくと、盗難された場合、液体に組み込まれたコードによって、持ち主を突き止めることができる。また、強盗犯などに対し、スプリンクラーのように付着させる使い方も可能。この液体は何カ月間も犯人の体や衣服に付着し、洗っても除去できないため、犯人の割り出しに有効である。 スマートウォーター・テクノロジー社のウェブサイトは www.smartwater.com

(猫山はるこ)

 
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