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Tue, 28 March 2017

「The Financial Times」紙って、
一体どんな新聞なの? - 小林恭子

【最終回】 第14回 日経とFTの将来は?

FT本社
ロンドンのサザック・ブリッジにあるFT本社の建物

日本経済新聞社が英「フィナンシャル・タイムズ」紙(FT)を含むFTグループを正式に傘下に入れてから9カ月が経ちました。買収話が報道された直後は、日経がFTの編集に介入するのではないかという懸念や「高すぎる買い物だったのでは」という見方が出ました。さて、今後はどんなことが期待されるのでしょうか。

改めて、2つの新聞を比べてみましょう。日経とFTは似た者同士の新聞です。どちらも経済紙として圧倒的な地位を持ち、報道では事実や数字の正確さを何よりも大事にするところも似ています。ただ、これまでのコラムで述べてきたように、購読料金や一部売りの価格そして読者層を見ると、FTはより高額所得者向けになっているのが分かるでしょう。日経は会社員を中心に幅広い層に読まれています。ジャーナリズムの面では、日経の喜多会長によれば日経の不偏不党の報道姿勢はFTの「誰にもこびない、恐れない」の編集方針と合致します。一方、宅配制度に支えられた紙の新聞の販売に力を入れるのが日本の新聞だとしたら、英国の新聞は電子版に主眼を置くように変化しており、FTはその先端を行っています。日本の新聞の中では電子版で成功している日経ですが、「デジタル・ファースト」を実践中のFTから電子版読者の増大へのヒントを得られるのは確実です。

FTが日経の傘下に入ったことで、FTは日本やほかのアジアについての報道をさらに充実化できるでしょう。日経側はFTが強みを持つ欧州や米国、世界のほかの地域の報道から利を得ることができ、互いに補完する関係になります。

そしてほかの新聞ではまねできないこと――それは今年から行われている、FTと日経間の人事交流です。記者や経営陣が日経あるいはFTに数カ月常駐し、互いの情報を交換しています。外国の新聞との提携や協力関係を結んだだけではここまではいきません。中に入って初めて、分かることがたくさんあるのではないでしょうか。

5月末に開催されたG20伊勢志摩サミットでは、日経のサミット取材班がFT記者と共同取材をして紙面を作りました。月刊誌「新聞研究」8月号に掲載された日経の経済部次長、奥村茂三郎氏のリポートによると、何を中心にして紙面を作るかでFT側と話し合いを重ねながらの作業となりました。特別のソーシャル・メディア部隊を立ち上げ、ツイッターに「日経LIVE」と言うアカウントを作って首脳らの一挙手一投足をリアルタイムで報じたということです。英国ではBBCや「ガーディアン」紙がやっている「ライブ・ブログ」のツイート版ですね。記者のツイッター使いやライブ・ブログなどといった、英国の主要メディアでは主流となったジャーナリズムの手法がさらに本格的に日本で実現するといいですね。

現在、FTはロンドンのサザック・ブリッジに位置していますが、その前は聖ポール大聖堂の斜め向かいにある「ブラッケン・ハウス」にありました。1945年、経済を専門とする2つの新聞が合併してできたのが現在のFTですが、このとき会長に就任したのが第二次大戦中に情報大臣だったブレンダン・ブラッケン氏でした。

2018年、FTは日経のロンドン・オフィスとともにブラッケン・ハウスに戻ってきます。由緒あるビルの中で、日経とFTの新たな歴史が始まります。

 
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小林恭子小林恭子 Ginko Kobayashi
フィナンシャル・タイムズの実力在英ジャーナリスト。読売新聞の英字日刊紙「デイリー・ヨミウリ(現ジャパン・ニュース)」の記者・編集者を経て、2002年に来英。英国を始めとした欧州のメディア事情、政治、経済、社会現象を複数の媒体に寄稿。著書に「英国メディア史」(中央公論新社)、共著に「日本人が知らないウィキリークス」(洋泉社) など。

「フィナンシャル・タイムズの実力」(洋泉社)
日本経済新聞社が1600億円で巨額買収した「フィナンシャル・タイムズ(FT)」とはどんな新聞なのか? いち早くデジタル版を成功させたFTの戦略とは? 目まぐるしい再編が進むメディアの新潮流を読み解く。本連載で触れた内容に加えて、FTに関するあらゆることが分かりやすく解説されている一冊。

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