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Thu, 19 July 2018

腐敗の帝国「FIFA」を突き崩した英国の記者魂

米・スイス司法当局の捜査が入った国際サッカー連盟(FIFA)の汚職事件。加盟209カ国・地域のうちアジア、アフリカ、中米・カリブ海を中心に133カ国・地域の支持を集め、5選を果たしたブラッター会長が選挙からわずか4日後に辞任を表明した。1998年のワールド・カップ(W杯)フランス大会、2010年南アフリカ大会の招致をめぐって賄賂(わいろ)が飛び交い、18年ロシア大会、22年カタール大会の捜査も進められている。

南ア大会の賄賂1000万ドル(約12億円)がFIFA口座を経由して送金されていたことも明るみになり、「悪いことをしていないのに、どうして辞める必要があるんだ」と息巻いていたブラッター会長が失脚。次の会長選が早ければ12月に行われる見通しになり、ロシア大会とカタール大会の開催に疑問符がついている。がぜん元気になってきたのが、18年W杯招致で最低の2票しか集められず落選したイングランドだ。両大会の再投票が行われることになれば、イングランドほどふさわしい場所はないと真っ先に名乗りでるのは確実だ。

 

選考時の10年12月、ウィリアム王子、元イングランド代表主将のベッカム氏とともにチューリヒでロビー活動を行ったキャメロン首相が吠えた。今月7、8の両日、ドイツ南部エルマウで開かれた先進7カ国(G7)首脳会議でFIFAの腐敗一掃を求めた。「FIFAに関して言えば、『スポーツ・ビジネスはそんなもんさ』という見方をする人がたくさんいるが、腐敗に目をつぶるべきではない。もっと精力的にこうした問題と闘うべきだ」。世界銀行の試算では世界中で毎年1兆ドルの賄賂が飛び交い、ビジネス・コストを10%押し上げる。FIFAに限らず、「ミスター・テン・パーセント」はあちこちで跋扈(ばっこ)している。

温厚なウィリアム王子もFA(イングランド・サッカー協会)杯決勝で、FIFAの汚職体質を厳しく非難した。「摘発されたFIFA は、ソルトレークシティ冬季五輪招致をめぐる買収疑惑をきっかけに改革を進めた国際オリンピック委員会(IOC)と同じ大事なときを迎えている」。FAはダイク会長以下、協会を挙げてFIFAに改革を求める方針だ。

腐敗の元をたどればサッカーの二大勢力、南米と欧州の権力闘争がある。ブラッター会長の師、アベランジェ第7代会長はブラジル出身。サッカーの商業化を進めるとともに、アジア、アフリカのサッカーを振興して支持基盤を広げ、欧州を封じ込めた。しかし、「サッカー後進国の支援」という錦の御旗の下、半ば公然とカネがやり取りされるようになった。こうしたシステムを熟知するブラッター会長は「腐敗の帝国」の管理人として打ってつけだったのだ。

 

英国や欧州サッカー連盟(UEFA)のFIFA批判には怨念がこもっている。18年、22年W杯招致の投票が行われる2カ月前、「サンデー・タイムズ」紙の記者が米国のロビイストを装ったおとり取材を敢行。投票権を持つ理事2人が米国への投票の見返りとしてそれぞれ80万ドルと230万ドルを要求。職務停止と罰金処分を受けた2人は結局、投票できなかった。同紙は「イングランドの招致活動を妨害した。愛国的でない」と英国内でも批判を浴びたが、記者は屈しなかった。調査報道を続けるうちに、信じられないタレ込み(内部告発)があった。カタール大会を実現させた影の功労者、モハメド・ビン・ハマム理事の資金の流れを示す銀行口座、電子メールが提供されたのだ。

チームを組む記者2人は3カ月間、一室にこもってコンピューターのモニターをにらみ続ける。連絡も絶ったため、周囲が安否を気遣ったほどだ。資料があまりに膨大なので2人はデジタル・フォレンジックの専門家を雇い、送信者・受信者・日時などのメタデータやキーワードをつなげていくシステムを作り、人脈と資金の流れを浮き彫りにしていく。電子メールの内容から、動いた資金の趣旨をつかむことができた。

14年ブラジル大会の開幕直前、同紙は渾身のスクープを放つ。「W杯カタール大会の招致活動で総額500万ドル超の買収工作」。11ページぶち抜きだった。カタール招致委員会は疑惑を否定し、同紙は「アラブへの人種差別」と批判された。しかし、不屈の調査報道は腐敗の帝国を決壊させる引き金になった。

 
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木村正人氏木村正人(きむら・まさと)
在英国際ジャーナリスト。大阪府警キャップなど産経新聞で16年間、事件記者。元ロンドン支局長。元慶応大法科大学院非常勤講師(憲法)。2002~03年米コロンビア大東アジア研究所客員研究員。著書に「EU崩壊」「見えない世界戦争」。
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